2016年03月08日
2015年度 家庭の食事からの放射性物質摂取量調査 結果について ~19都県263サンプルすべて不検出~
日本生協連は、2011年度から「家庭の食事からの放射性物質摂取量調査」を5年間継続してまいりました。このたび2015年度の結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
1.調査の目的
- 一般家庭の日々の食事に含まれる放射性物質の量について、生協組合員の関心が高く、その実態を科学的に調査すること。
- 被災地を中心に広く生協組合員の協力を得て、実際の食事と使用した食材に関する情報や食事に対する意識を調査することで、実情を把握すること。
- 調査結果や関連情報を広く消費者の皆さまへ分かりやすく提供していくことで、現状を正しく理解するための一助とすること。
2.調査の概要
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調査期間
2015年7月14日~2016年2月22日
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実施数
263世帯263サンプル(内、福島県100世帯100サンプル)
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対象地域
岩手、山形、宮城、福島、群馬、栃木、茨城、埼玉、東京、千葉、神奈川、新潟、長野、山梨、静岡、愛知、岐阜、三重、福岡の19都県
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方法
各家庭の2日分の食事(6食分と間食)を1サンプルとして、すべて混合し測定
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測定器
ゲルマニウム半導体検出器
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検出限界
1Bq/kg
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測定物質
セシウム134、セシウム137、カリウム40
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検査機関
日本生協連、コープ東北サンネット事業連合(本部:仙台市)、コープネット事業連合(本部:さいたま市)、ユーコープ(本部:横浜市)、東海コープ事業連合(本部:名古屋市)、コープこうべ、コープ九州事業連合(本部:福岡市)(エフコープ(本部:福岡市))の商品検査センター
- 組合員からの要望により、2015年度は対象地域に山形県を追加しました。東北、北関東を中心に実施数を2011年度250サンプル、2012年度671サンプル、2013年度435サンプル、2014年度256サンプル、2015年度263サンプルとしています。
- 参考値としてヨウ素131も測定しましたが、すべて不検出でした。2011年度~2014年度もすべて不検出でした。
3.2015年度の調査結果の概要と、過去4年間の調査との比較
(1) 食事1kg当たりの放射性セシウムの量について
- 2015年度に調査を行ったすべてのサンプルで、検出限界以上の放射性セシウムは検出されませんでした(表1)。
- 2013年度までの各年度はいずれも放射性セシウムを検出したサンプルがありましたが、検出割合、放射性セシウムの最大値は、年度を追うごとに減少しており、2014年度以降は不検出となっています。(図1)。
- 5年間で1,875サンプルを調査した結果は、上記傾向となっており、放射性セシウムを1Bq/kg以上含む食事を継続して食べ続けている可能性は極めて低いと推察されます。
(2) 1年間当たりの食事からの内部被ばく線量について(放射性セシウム)
- 2011年度~2015年度の調査で、放射性セシウムを検出した食事を1年間継続して食べ続けた場合の内部被ばく線量をサンプルごとに推定し、年度ごとに比較しました※(図2)。
- 内部被ばく線量の最大値は、2011年度~2013年度にかけて徐々に低くなっていました。
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2014年度および2015年度は放射性セシウムを検出しなかったため比較ができませんが、内部被ばく線量は2013年度当時よりもさらに低下していると考えられます。
- セシウム137が検出され、セシウム134が検出限界未満の場合は、セシウム134が検出限界と同じ1Bq/kg含まれていたと仮定して算出しました。
(3) 放射性カリウムについて
- 原発事故に関係なく食品中に含まれる放射性カリウム(カリウム40)の測定結果は15~60 Bq/kgとなり、2011年度~2014年度の調査結果と同様にすべてのサンプルから検出されました。1年間の内部被ばく線量は0.012~0.29mSvとなり、過去4年間と同等のレベルでした。
4.参加された組合員の声
アンケートに記入いただいた組合員の声を一部ご紹介します。
- 食事を写真に撮ることで、放射性物質も少し気になりますが、子供、家族の食事バランスを考える良い機会となりました。
- 今回の調査で改めて、産地を気にしなくなっていた事に気付きました。普段の買い物が値段によって左右されている事だと思い、不安は不安ですが、原発事故後の意識が食卓に影響しなくなっていた事を考えさせられた今回の調査でした。
- 多分大丈夫と思いながら食事をしているので調査をしていただけると(数字が出なければ)安心できると思います。もし数字が出てしまったらまた対策が考えられるのでよく分からないままの状態よりよいです。
- 今まで何かを購入する際、これは大丈夫かな・・・?という迷いがありました。検査の結果によって目安ができます。ありがとうございました。
- 調査の内容や結果はもっと大々的に理解して頂いた方が良いのでは。情報だけで(放射性物質はキケン!という)大騒ぎして、特定の地域の食品を避けてしまう人はまだまだ多いので、「正しく理解して正しくこわがる」ことが必要だと思うので。
- 調査そのものが大変であることがよくわかりました。1つ1つの品を調べることも大切ですが、今回のように毎日食べる献立を直接調査することが実生活に役に立ち、みなさんの関心を引くと考えます。
- 毎回いつもより1食分多く用意するのは分量などわからず難しかったですが、いつも食べているものを調べていただけるので、これから安心して子供達にも食事を出せそうです。息子を妊娠中に「3.11」が起きたので、あの頃とても心配して眠れなかったのを覚えています。子供の将来のために食の安全を確認したいです。
5.今後の予定
- 2016年度も調査を継続し、全国の生協・組合員と情報や課題を共有します。結果の発表は2017年3月ごろの予定です。
- 引き続き、参加者に対する調査の意義や調査結果の見方の説明・質疑応答など、放射性物質に関するリスクコミュニケーションを行っていきます。