2024年10月15日
全国生協D&I・ジェンダー平等トップセミナーを開催しました 矢口祐人教授による特別講演およびD&Iに配慮した媒体作成の取り組み紹介
2024年9月27日、日本生協連は全国生協D&I・ジェンダー平等トップセミナーをオンラインで開催しました。本セミナーは全国の生協のD&I・ジェンダー平等の推進を目的として、2023年より主に生協の経営層向けに実施しています。全国から生協の役職員・組合員ら約220人が参加しました。
開会にあたって日本生協連常務理事の二村睦子が「世界経済フォーラムが公表している2024年のジェンダーギャップ指数で、日本は世界146カ国中118位だった。くらしや社会の様々な場面で男女の格差が残っているということが背景にある。今日のセミナーで得た学びはこれからの皆さんの仕事の現場で生かしてほしい」とあいさつしました。
実践報告では日本生協連キャロット事業本部から、同事業本部が作成したD&I表現ガイドブックの紹介を行いました。
キャロット事業は、日本生協連が行うチラシやWebカタログを用いた生活雑貨供給事業です。同ガイドブックはD&Iの視点で誰にとっても読みやすい表現を実現するために、さまざまな表現について学び、理解を深めていくことを目的として作成したものです。ジェンダー、障害、国籍などの視点で構成されており、言い換え事例集なども収録しています。
報告では、キャロット運営部 橘雅史が、「商品特長を伝えるイラストやキャッチコピーを考える際、注文が増えることを優先して考えてしまいがちだが、それだけでは不十分。例えば、1週当たりの総配布部数は約400万部だが、LGBTQ当事者の割合は3~10%とされているので、毎週数十万人の当事者に配布していることになる。改めて表現についてしっかり考える必要があると思い、D&Iガイドブックを制作することにした」とガイドブック作成の経緯を説明。「チラシを見たときに「自分は(おすすめの)対象になっていない」と組合員が感じてしまう書き方・描き方はしないようにしたい」と想いを語りました。
作成にあたっては、認定NPO法人虹色ダイバーシティなどの外部監修を入れるとともに、媒体制作関係者への勉強会やワークショップなど意識浸透プログラムも実施しています。今後は勉強会などを行い、取引先とも協力した体制づくりを進める予定です。
特別講演は東京大学副学長 矢口祐人氏をお招きし「東大の事例から考える「なぜ意思決定層は男性だらけなのか」―社会のブレイクスルーをめざして生協に期待すること」と題して講演いただきました。
矢口氏は、東京大学のグローバル教育担当副学長で、近著として『なぜ東大は男だらけなのか』(集英社新書)があります。 はじめに、「多様性は正義という意味で必要であるという前提のもと、優れた学びの環境を作っていくためにも多様性が不可欠であるということは世界の大学の常識になっている」と述べました。続いて、東京大学の女性学生比率が2割にとどまっている現状について歴史を紐解きながら解説。意思決定の場に女性を増やす努力をしているものの、現在でも男性偏重の構造は変わっておらず「活躍できるかどうかは女性次第とされるが、男性中心になっている空間の構造を内在化させないと女性は活躍できない状態になっている」と課題を指摘しました。
また、クオータ制の議論に触れ、「女性枠というとすぐに「不公平だ」「女性に下駄を履かせるのか」と言われるが、現状は男性が下駄を履いている状態。誰にこれまで特権が与えられてきたかを考えなくてはならない」と述べました。そのうえで、男性ができることとして「女性は孤独な闘いを強いられることが多いので、Ally(アライ)になることが重要だ」と呼びかけました。
最後に「(生協の利用者は女性が多いので)女性の生活に非常に密接に関わっている組織がこういう勉強会を開き、ダイバーシティの意義を考えている事は励みになる。大学は変化が遅い組織なので、大学だけでは絶対に変われない。生協のような組織からどんどん変わっていってほしい」と生協への期待を語りました。
日本生協連は、今後も全国の生協とともにD&Iの取り組みを推進し、多様性を尊重した事業と組織づくりを進めてまいります。