ハーツ便は、高齢化が進む集落や中山間地域などで、なかなか買い物に行くことができない方を
サポートする移動店舗として、2009年からスタート。
県内約800カ所を12台のトラックが、約3,000人の皆さんのもとへ、
安全・安心なコープ商品をお届けしています。
(2016年3月末時点)
「これ好きじゃないかな?」「今日は暑いので、アイスが喜んでもらえそう」
買い物を楽しんでもらいたいから、担当の五十嵐さんは、一人ひとりの顔を思い浮かべながら、作りたてのお惣菜や、地元で採れた野菜、新鮮なお刺身、季節の品物などを、トラックいっぱいに積み込んでいきます。
のどかな田園風景が広がる、小さな集落。近くにスーパーなどはなく、公共交通機関のバスは1日に数本だけ。
ハーツ便からにぎやかなテーマソングが鳴り響くと、ゆっくり、ゆっくり、お客さんたちが集まってきます。
「今日はそんなに買い物はないんだけどね。ちょっと顔を見に来たの」
「ここに来ると、みんなに会えるからね」
買い物が終わると、おしゃべりに花が咲きます。
「いつも来る人が来ないと、どうしたんだろうと心配になるので、顔を見せてくれるだけでもうれしいですね」と五十嵐さん。
こんなことがありました。
「あんちゃん。畑で採れた大根持っていき」
いつも五十嵐さんのことを気遣ってくれていた、世話好きで、みんなの人気者だった一人暮らしの女性。
「なんだか最近は様子が違う」と、彼女の認知症に気付いたのは、ハーツ便の買い物仲間たちでした。
足元が心配な91歳の女性の声です。
「買い物だけなら、近くに住むお嫁さんに頼むこともできるけど、やっぱり、自分の欲しい物は自分で見て、選んで買いたいの」
大好きなアイスキャンデーをたくさん買って、五十嵐さんに家まで運んでもらいます。
「喜んでもらえて自分も楽しいので、この仕事が大好き」と五十嵐さん。
「仏壇の電気がつかないとか、この野菜の苗が欲しいとか、いろんなリクエストに応えて、商品をそろえています」と、にこにこ。
移動販売を通じた交流や触れ合い。人と人がそっと支え合う、どこか懐かしく優しい風景がそこにはありました。