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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2005年02月22日

農水省「新たな食料・農業・農村基本計画骨子(案)」に 意見を提出しました

日本生協連(本部渋谷区、小倉修悟会長)では、理事会のもとに農業問題を議論する「農業・食生活への提言」検討委員会(委員長:山下俊史副会長)を設置しました。2004年7月には、食料・農業・農村政策審議会 八木 宏典会長あてに「基本計画の見直しについての意見」を提出しております。このたび、農林水産省から2005年2月20日を締切として募集された「骨子(案)」に対するパブリックコメントの募集に対し、下記の意見を提出しましたので報告します。

また、現在、この検討委員会において、「農業・食生活への提言」を検討しており、2005年3月をめどに提言をまとめることにしています。

☆2004年7月15日提出した意見はこちら

<提出した日本生協連の意見>

2005年2月18日

農林水産省大臣官房 御中
 

「新たな食料・農業・農村基本計画骨子(案)」に対する意見
 

日本生活協同組合連合会
「農業・食生活への提言」検討委員会
委員長 山下 俊史
 

2月10日付の意見募集に基づき、農業構造改革をすすめ日本の農業が産業として再生することを願う消費者の立場から、下記の意見を表明します。 

<意見>
 

1) 食料自給率の目標設定について

食料自給率の目標設定にあたって、従来から使っていた供給熱量(カロリー)ベース自給率とともに金額ベースの自給率を目標に加えることに賛成します。金額ベースの自給率は食料の消費総額に対する国内産の金額シェアを表わしており、カロリーが低い野菜や果実、輸入飼料を使った畜産に対しても正しく評価でき、産業としての農業の力量を評価する指標として適切なものと考えます。

国内農産物が消費者や実需者のニーズに応え、品質に見合ったリーズナブルな価格で提供されれば、必然的に自給率は向上していくと考えます。自給率から食生活を規定するような自給率の結果のみを追い求める施策ではなく、自給率を裏付ける自給力の向上を図る必要があります。自給力には、優良農地と耕作する担い手の確保、農業技術の向上の3点があると考えます。望ましい担い手や農地、農業技術のあり方を示し、自給力の向上を目指す施策の推進を求めます。

農業者と消費者の相互理解を深める交流は、食料自給率向上にも重要な役割を果たしており、その推進を求めます。生協は率先して役割を担い、年間10万人にのぼる組合員が生産者との交流を行い、信頼関係を深めています。

2) 食品の安全性の確保について

安全性の問題に対しては、リスク分析手法全体がより充実し、施策についての積極的な情報開示とコミュニケーションが図られるとともに、リスク管理において国民・消費者の意見が施策に反映されることが必要です。特にリスクコミュニケーションについては、運用の状況の分析・研究を行い、具体的なしくみづくりと運用強化を図ることが望まれます。縦割り行政の弊害に陥ることなく、リスク分析に基づいた食品の安全性の確保の施策に、従来に増して積極的に取り組むことを求めます。

食品表示偽装などの事件が後を絶ちません。食品の安全と安心の確保は食品に携わる全ての者の責務という認識を強く持ち、コンプライアンス経営の徹底を図るとともに、検査体制やトレーサビリティの確立、一元的食品表示制度の検討など具体的な取り組みをしていく必要があります。 

生産段階におけるGAP(適正農業規範)、製造段階でのHACCPやISOの取り組みに関しては、啓蒙・普及のレベルにとどまらず、日本の農業や食品製造業の標準的な実行レベルとして確立するよう、一層の取り組みの推進を求めます。施策は「生産から消費まで」のフードチェーン全体に効果が及ぶことが必要です。規範づくりに関しては、卸売市場に限定するのではなく広く流通段階、小売段階にも求められると考えます。生協では産直事業を中心に適正農業規範づくりをはじめ、適正流通規範、適正販売規範をあわせて作成し、その推進にあたっています。

3) 農地の有効利用の促進について

農地利用率の低下や耕作放棄地の拡大など農地の利用状況は悪化しています。農地を所有していながら耕作していない人から耕作する担い手に集約していく必要があります。その意味から、耕作放棄地への利用権設定や所有者不明の農地を市町村自ら管理できるしくみの導入に賛成します。さらに耕作放棄地に対しては、利用権の設定にとどまらず、農地集積の視点から、有効利用が図られるよう取り組みの強化を求めます。

農地の用途転用によるキャピタルゲインの発生などにより、農地が生産資源としての価値よりも資産としての価値が高くなっていることも、農地の集約がすすまない大きな側面であるといえます。農地を農地として利用していくためにも、農地の転用規制の厳格化を求めます。

農業者と同じ条件で、多様な人材が農業に参入できるよう求めます。耕作放棄地が相当程度存在する地域に限定することなく、全地域で、誰でも手軽に農業に取り組むことが出来るように、参入障壁の低減や新規就農を促進する施策の充実を求めます。多様な人材が農業に参入することで、日本農業が活性化していくと考えます。

参入を促進する際には、農地の用途転用について厳しい規制を行うことを前提に、農地の活用についても大幅な規制緩和が必要だと考えます。安定的に農業を営み、安心して農地に投資できる環境を整える視点から、農業法人以外で農業に参入する生協などの消費者組織や企業に、長期的なリースを保障することを求めます。さらに農地の所有についても今後の検討対象にするべきだと考えます。

4) 経営安定対策の確立について

WTOやFTAなど国際環境の変化に対して、交渉結果にかかわらず日本の農業が国際競争の中でも生き残れるよう、後追いではなく積極的な手立てを打つ必要があると考えます。農業経営に直接財政を投入する経営安定対策である「品目横断的直接支払制度」に賛成します。

財政の投入により農業者を保護するにあたっては、高関税の逓減による内外価格差の縮小を求めます。高関税を輸入農産物にかける国境措置により、消費者は国際的にみて高い価格で農産物を購入しており、結果として個々の消費者が農業保護のコストを目にみえない形で負担をしていることになります。財政の投入にあたっては、国民的合意形成を図る上でも内外価格差が縮小するという目に見える形での成果が求められます。

施策の導入にあたっては、かかる費用に対する効果が十分発揮できるよう、支給対象者は経営力量のある農業主体とし、集中した支援をする必要があります。支給対象となる担い手は、一定の規模にあり生産性の向上に取り組んでいる農業者や農業法人、および統一した意思をもちマネジメントされている集落営農とするべきだと考えます。