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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2004年07月15日

「食料・農業・農村基本計画」見直しに意見を提出

日本生協連(本部渋谷区、小倉修悟会長)では、理事会のもとに農業問題を議論する「農業・食生活への提言」検討委員会(委員長:山下俊史副会長)を設置しました。そして、この検討委員会での検討にもとづく意見書を、農林水産省「食料・農業・農村政策審議会」会長あてに、2004年7月15日に提出しましたのでご案内します。

日本生協連では、今回の意見表明をベースに、今後海外や国内の事例調査や食生活に関する調査を実施し、食料自給率や食生活への施策などの議論を深め、2005年3月をめどに「農業・食生活への提言」をまとめることにしています。

<この件についての取材・問合せ先>
日本生協連 広報 (木戸・木船)   政策企画部 (藤井)
電話:03-5778-8106   電話:03-5778-8119

<以下提出した意見書です>

食料・農業・農村政策審議会
会 長  八 木  宏 典 殿

             日本生活協同組合連合会
「農業・食生活への提言」検討委員会
委 員 長  山 下 俊 史

「食料・農業・農村基本計画」見直しにあたって生協からの意見

1998年7月に私たちは「食料・農業・農村政策に関する生協の提言」を発表しました。この提言の中で私たちは消費者の食に対する要求として、食品の安全、品質向上、納得できる価格、選択制の保障、安定供給、食料供給のトータルシステムを掲げました。この要求は現在も変わりません。
特に、食品の安全は私たちの切実な願いです。私たちの働きかけに応えて2003年に食品安全基本法が制定、食品衛生法が改正され、新たに食品安全委員会が設置されたことによって日本の食品安全行政は大きく前進しました。

一方、耕作放棄地の増加や高齢化など農業をとりまく状況は大きく変化しています。また、WTOやFTAなど自由貿易体制の進む中、日本農業のおかれている立場はより厳しい状況になっています。国内農業は消費者の食の願いを実現する最も身近な存在です。適切な支援システムと農業者自身の英知と努力によって、国内農業が産業として力強く再生することを私たち消費者は心より願っています。私たち生協は、生産者とともに産直事業やさまざまな活動を展開してきました。これからも、日本の農業再生に向けて取り組む意欲のある農業者を私たちは積極的に応援していきます。

日本生協連は農業や食生活をめぐる環境の大きな変化に対応して、理事会のもとに「農業・食生活への提言」検討委員会をつくり、この5月から1年間かけて新たに「農業と食生活への提言」をまとめることとしました。検討委員会の提言検討期間は1年間ですが、農林水産省の食料・農業・農村政策審議会企画部会の論点整理に沿って、申しのべる点に絞り今回中間的に意見をまとめました。食料・農業・農村基本計画の策定に当たってご配慮いただければ幸いです。

1.食品の安全性を守る施策の充実強化を

食品の安全・安心は私たち消費者の大きな願いです。しかし、BSEや鳥インフルエンザの発生、カドミウムやダイオキシンの食品への混入など、食品をめぐり新たな問題が発生しています。こうした食品をめぐる問題には、食品安全基本法が明記した「国民の健康保護」を一番において対応することを求めます。

安全性の問題に対してはリスクアナリシス手法全体がより充実し、施策についての積極的な情報開示とコミュニケーションが図られるとともに、リスク管理において国民・消費者の意見が施策に反映されることを求めます。生協としても食品を取り扱う事業者として、積極的な情報の開示とコミュニケーションを深めていきます。

食料輸入国として十分な輸入検査体制の確立を図るとともに、日本政府が食品の安全性をめぐる新たな問題の発生に関する国際的な議論に関して「国民の健康保護」を第一に考え、消費者の立場にたった発言をするよう求めます。国産農産物に対して農薬使用基準を始めとする適正農業規範の取組みを早期に確立するとともに、輸入商品に対しても国内の規範と同等のレベルを浸透させることが必要です。

2.環境重視型農業支援策の充実を

安全な食料品の生産には、健全な土壌や水などの環境の保全が前提です。化学肥料や農薬を使った農業は、環境に大きな負荷を与えます。日本においても、肥料による地下水の汚染や国際的にみても高い家畜排せつ物の窒素量の蓄積など課題が多いといえます。農業は土や水という自然の恵みを利用した産業であると同時に、環境に負荷を与える産業であるという認識が必要です。

生協は生産者とともに、環境負荷を低減した農産物作りに力を入れてきました。こうした環境に配慮した生産者を評価し、EUで行なわれている環境保全型農業に対する直接支払制度のような、支援するしくみ作りが必要です。持続的で継続的な農業生産を促進する施策を求めます。

稲作における用水路や農道などの地域資源の維持や管理に集落は大きな役割を発揮してきました。集落の持つ機能を評価するとともに、中山間地直接支払いの先進事例などを参考にして地域資源保全の取り組みを支援する施策を求めます。地域資源の保全は農地保全に寄与し、地域環境を守る役割を果たすと考えます。

年間で約2000万トンの食品が廃棄されています。生協も食品を扱う事業者として、食品の売れ残りなどの発生抑制、最終処分される量の減量化につとめるとともに、飼料や肥料等の原材料とするために食品循環資源の再生利用を促進していきます。バイオマス発電など新たな環境施策に着目するとともに、都市と農村をつなぐ循環システムの確立に向けた取り組みを支援する施策を求めます。

3.直接支払いによる農業経営支援施策への転換を

私たち消費者は、農産物においてもその品質に見合ったリーズナブルな価格を求めています。主食である米をはじめ、日本の農産物の内外価格差は依然としてあります。高関税を輸入農産物にかける国境措置により、消費者は国際的にみて高い価格で農産物を購入しています。そのことで結果として個々の消費者が農業保護のコストを目にみえない形で負担をしていることになります。

現行の高関税による国内農業保護施策から、内外価格差の是正を前提として、直接税金を農家経営に注入し、その経営安定化を促す直接支払い制度への政策転換が必要です。私たちは日本の農業を守る視点から、かけた費用に対する効果の検証をするシステム整備をした上で税金で農家経営を直接支援する直接支払い制度に移行することに賛成します。

高関税による農業保護の施策は、国際的にも支持されていません。農業貿易交渉において農業の特性と食料輸入国の事情をふまえた公正な貿易ルール作りに向けた努力を尽くす一方で、交渉結果にかかわらず日本の農業が国際競争の中でも生き残れるよう、後追いではなく積極的な手立てを打つ必要があります。日本の農業の現状を踏まえつつ、関税を逓減させながら直接支払い制度への早期移行が交渉戦略上でも重要な意味を持ちます。

4.透明性と効率性をもった農業予算を

およそ3兆円におよぶ農林水産関連予算は、構成比が減少しつつあるといってもいまだ4割を超える規模で公共事業(農業土木)に投資されており、その事業の中には農業者の要望とかけはなれた無駄な施設が作られてきた実態もあります。さらに補助金を中心とした予算配分や、国や地方のかかわりかたなど予算自身が複雑でわかりにくく、施策に対する効果の検証が十分ではありません。補助金の内容にしても、本当に日本の農業を産業として自立させるため、農業者のために利用されてきたのか、検証が必要です。

私たち消費者が食品を手にするまでには、生産者のみならず食品事業者や消費者組織などさまざまな組織がたずさわっています。国産農産物の利用促進に関しては、農業者だけではなくて、関係する事業者や組織を対象にした施策が必要です。

5.国民合意で多様な担い手にあった施策を

これまでの農業政策は、農業に従事している対象者を画一的にとらえ一律に支援する傾向がありました。農業を産業として発展させていくために生産性の向上につとめる担い手、環境保全に力点をおく担い手、厳しい生産条件の中山間地において高付加価値農業を実践している担い手、稲作農業のインフラを支えあう集落など様々なタイプの担い手がおり、多様化しています。

政策目的とそれぞれの担い手の特性にあった施策が提案されることが求められます。直接支払いによる農業経営支援策は、組織化された経営体としてマネジメントされ、さらなる生産性向上に取り組んでいる担い手を対象とするべきだと考えます。同時に、将来への可能性を十分に考慮し意欲ある担い手に配慮した対応も求められます。

都市で働く勤労者は、雇用不安や給与削減などの厳しい状況にあります。そうした社会の中で、農業者に対して直接経営支援するには、その基準設定にしても求める水準にしても、国民が納得できる内容でなくてはいけません。

現在の制度では農業者以外の人が農業に参入するにはさまざまな規制があります。生協などの消費者組織をはじめ都市住民など、意欲のある組織や個人に対しては、新たな担い手として農業者と同じ条件で農業へ参入できるように求めます。

6.食や農業に関する広範で自主的な活動を視野に枠組みつくりを

生協はこれまでも、食を中心に事業を展開し、生産者とともに環境負荷を低減した農産物や安心できる農産物の提供を行なってきました。公開確認会などの二者認証や適正農業規範つくりなどの取り組みを開始し、食品の安全の担保を事業者として産地とともに主体的に取り組んでいます。

さらに、地元特産物の消費拡大の活動や産地との交流、料理教室や食育を切口にした活動など、食と農業に関する実践的活動を積み上げてきました。また、里地里山の保存、農業とのふれあいを求め、多くの都市住民が農村との交流に参画し、生産者との相互理解を深めてきました。農作業の体験のみならず、生き物調査などの活動や用水路、農道などの農業インフラや農地の維持活動にまで積極的な役割を発揮しています。こうした私たちの経験は、地域に根ざし広範な消費者活動を展開する基礎になると考えます。

食や農業に関して、生産者組織だけでなく生協を始めとした消費者組織、食品事業者など、多様な組織が活動しています。このような広範で自主的な活動を国として支援することが、関わる全ての人々を元気づけ、結果的には農業の豊かな発展に繋がると考えます。