養殖施設、加工施設の復旧を進め、漁業関係者の誇りを取り戻したい(3)

2012年5月 8日

◆「CO・OP岩手県産生わかめ」を生産しているJFおもえ重茂漁業協同組合の復興レポートです。今回は第三回、養殖場や加工施設の復旧を急いだのは2012年春のワカメ収穫に間に合わせるためだけでなく、漁協組合員の気持ちに応えるためでした。

 

◆大事なのは漁業を続けられる“気持ち”

養殖施設や加工施設の回復を急いだのは、2012年春のワカメの収穫に間に合わせるためだ。それを逃せば収穫はまる1年遅れてしまう。だが、後川さんはもうひとつ、組合員である漁業関係者の“気持ち”に訴えるためもあったという。

「みんな、生活も人生も180度、変わってしまいました。以前と同じようにはいかないのはわかっている。そんな中で、いったいいつになったらもとのように漁ができるのか、みんなそれを知りたがっていました」

半島に住む人たちにとって、気持ちの整理がついたのは、夏の合同慰霊祭を終えた後のことだった。それでも漁業を諦めようかと迷っていた組合員は少なくなかった。

そのため漁協の施設の復旧とともに、ひとりひとりの漁業関係者にとって最も大事な船の確保も急いだ。

たとえばアワビの収穫は獲る人の技術や経験によって収穫に大きな差が生じる。養殖も同様だ。毎日、沖合に出て間引きに取り組む人と、たまにしか顔を出さない人とでは、ワカメの生育に大きな差が出る。

いずれも自分の船を操って自在に取り組むからできることで、個人所有の船のほとんどが流されてしまい、組合員のやる気も大きくそがれていた。

そこで重茂漁協は、組合員へは一切負担をさせずに船や漁具を用意することにした。だが、発注したものの、東北中の漁協が限られた造船所にいっせいに建造を依頼したことから、新しい船はなかなか手に入らなかった。

それでも何とか2011年中に、新品、中古合わせて300隻の船を手に入れることができた。組合員1人に1隻とはいかず、船を持つものと持たないものとの差が生まれてはいけないと、全員の船が揃うまで船を数人で共同で使う。収入も水揚げを平等に分け合う。

自分の船さえあればもっと稼げるのに。そんな腕の良い組合員の気持ちは理解できたが、後川さんはじめ重茂漁協関係者は「こんな時だからこそ協同の精神を」と言い続けたという。

omoe_03a.jpg

 

 

 

「こんな時だからこそ協同の精神を」

と後川さんはじめ漁協関係者は言い続けたそうです。