養殖施設、加工施設の復旧を進め、漁業関係者の誇りを取り戻したい(2)
2012年5月 2日
◆「CO・OP岩手県産生わかめ」を生産しているJFおもえ重茂漁業協同組合の復興レポートです。今回は第二回、定置網漁の立て直しは時間との勝負、養殖場の復旧に奔走しました。
◆街中に乗り上げた定置網船の回収から開始
重茂漁協でまずとりかかったのが、定置網漁の立て直しだった。
重茂漁協にとって定置網漁から得られる利益は全体の7割を占める。また、漁協が乗組員を100人ほど雇って操業しており、漁協の経営にとっても、従業員の雇用と生活にとっても、その立て直しは最優先事項だった。
漁協が所有する定置網船は20隻あったが、残ったのは11隻。前述の800隻は組合員個人が所有する船で、せいぜい1トンから養殖用でも3トンほどだが、定置網船は約20トンクラスの大きな船だ。
失われた9隻は、宮古市の南、山田町や釜石市に流されたり、海上を漂流し宮城県の石巻まで流されたものもあった。真っ先にする作業は陸地に乗り上げられた船を回収することであった。
「早く移動させなければ、(海まで至る陸地に)電話回線や光ファイバーなどを敷かれてしまいます。そうなるともう戻せなくなり、船は解体しかありません。東北新幹線の保線に使われている500トンの吊り上げクレーンと、車と船を積み込むトレーラーを借用して、何とか海まで引っ張ってきました」(後川さん)
時間との勝負だったという。
どの街でも津波で数百人規模の人が死亡・行方不明となっていた。人の捜査が進むところで、船を運び出すにはかなり神経を使ったという。作業は早朝や深夜に行い、それがただでさえ難しい作業をよけいに難しくした。
◆養殖場と加工施設の復旧に奔走
高台にあって難を逃れた重茂漁協第3冷蔵庫
定置網漁に並んで重茂漁協にとって重要な事業が、ワカメ、コンブの養殖だ。
種から育てたワカメは、小さな芽の段階で海面に200mほど伸ばしたロープに巻きつけ、生育させる。重茂半島周辺には、ロープが何本も並んだ施設が30箇所ほどあり、震災前のロープの長さは延べ43万mにも及んだ。組合員は1人でそのロープを10本、20本単位で所有して養殖を行っていた。
だが、それがすべて津波によって海中で揉まれ、よじれて、使い物にならなくなってしまったのだ。それを作り直さなければならなかった。
後川さんは、4月中旬から漁協の購買店舗で特製のロープをはじめ、それを海面で固定するための組ロープ、浮玉などの資材の発注を始めた。
「(養殖施設は)沖合にあるので、湾内の養殖に比べて10倍もの強度のロープが必要になります。通常、ロープの太さは直径10〜15mmですが、こちらでは最低でも28mm〜36mmのものが要る。また、そのロープを支えるアンカーブロックも、一般では3トン〜5トンほどのものを使いますが、ここではやはり10トン、20トンのものが必要になります」(後川さん)
資材が揃うと、今度は台船で沖合まで運び施設を作り直した。台船とはその名の通り四角い形をした運搬専用の船で、クレーンを備える。こうして2011年夏までに22施設、ロープの長さは延べ20万mまで作り終えることができた。従来の半分以下の規模だ。
育てたワカメは収穫後、製品にまで加工するが、沿岸に2ヶ所に分かれてあったワカメのボイル工場、塩蔵加工処理施設、さらに2つの保管冷蔵庫も全壊し、その建造も行う必要があった。
これらの施設は、ワカメの収穫が始まる直前の2012年春までに、何とか完成にこぎつけることができる見込みである。しかも、主要電源を自力でほぼまかなうことの出来る、最新鋭のソーラーシステム式の冷蔵庫を導入する。