「三陸産生わかめの復興に向けて(3)」
2012年2月22日
◆「CO・OP三陸産生わかめ」の製造工場かわむらの復興レポートです。今回は第三回、停電が続く中わかめ原料を保管するには周りのみなさんのご協力がありました。
(岩手県陸前高田市の岩手工場)
●停電が続く中、周りの支援で発電機を動かし原料を保管
本社のある唐桑半島を含め、気仙沼市内は約ひと月間、停電が続いた。だが、付き合いのあった建設会社や機材メーカーを通じて早くから発電機を手に入れることができた。その後、深刻な燃料不足の時も、懇意にしていたガソリンスタンドが力になってくれたという。毎日、発電機をチェックして、不足がないよう軽油を継ぎ足してくれた。
生命線である冷蔵・冷凍施設は守られた。震災でかわむらが深刻な被害を受けたと情報が飛び交い、一時、わかめが高騰したことがあったという。同業者が高く釣り上げて売ったようだが、すぐにかわむらは通常価格でわかめを出荷し始め、業界での信用を上げたという。
●包材の不足で6月下旬から出荷スタート
袋詰めのためのラインも、無事だった本社の第二加工場にあった。ただし、機械の点検にひと月以上かかり、生産の見通しが立てられるようになったのは5月上旬のことだ。だが、生産にこぎ着けるまでにはさらにハードルが立ちはだかった。包材の不足だ。その解決にさらにひと月間を要し、日本生協連向けにNBの「三陸産わかめ80g」の生産が始まったのが6月下旬のことだ。
「例年の2倍から3倍の売れ行きでした。袋詰めは昨年までは週に1度のペースでしたが、毎日加工して対応しました。うれしかったです。もちろん日本生協連さんにも喜んでいただきましたが、『やっぱり三陸わかめがいい』。そう消費者の方に言っていただいたのが本当にうれしかったです」(川村さん)
以前から品質には自信を持っていた。だが、震災から4ヶ月近くを経て、消費者は三陸わかめを待っていたと確信することができた。
●品質にこだわったわかめを組合員へ
コープ商品の製造は2009年からで、まだ3年弱に過ぎない。だが、現実にはそのずっと以前から、かわむらで製造した塩蔵わかめが全国の生協ブランドとして売られていた時期は長かったはずという。コープ商品の製造が始まり、大きく変わったのが商品の品質へのこだわりだった。
「確かにウチでは以前から質にはこだわりがありました。冷蔵・冷凍施設は”自社蔵”――自分たちが所有して運営する施設なので、水揚げされた生のわかめの品質を、仕入れる段階でまず見ることができます。ボイルする前の茶色のわかめですね」(川村さん)
一般にはまだまだ生産者がボイルしたわかめを仕入れて袋詰めする業者は多い。生の段階からわかめの品質をチェックする企業は少ないという。”自社蔵”にはトレース上の利点もある。三陸のわかめは全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)が一括して取り扱っており、全て産地がはっきりしたものだ。それをかわむらが仕入れ、自社の冷蔵・冷凍庫内に入れる際も各製品に番号をふる。その後、ボイルして、加工、最後に袋詰めするまで、その情報は製品にひもづけされ、産地を追うことができる。小袋の包装ラインについては、コープ商品として丁寧な管理を行っている。
「一般消費者向けの商品はこう作るんだという“価値観”を教えていただきました。従業員の意識が大きく変わりました」(川村さん)という。かわむらではイクラの加工工場ではすでにISOとHACCPを取得しており、入室管理をはじめ、製品管理、加工日報など管理手法が確立されている。それをわかめ加工にも応用している。