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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2005年07月20日

「魚介類等に含まれるメチル水銀について」の 食品健康影響評価に関する意見を提出しました

 内閣府食品安全委員会汚染物質専門調査会(座長:佐藤 洋 東北大大学院教授)は、魚介類等に含まれるメチル水銀について食品健康影響評価を行い、その審議結果について2005年7月22日を期限としてパブリックコメントを募集しました。

 日本生協連(本部:渋谷区、小倉修悟会長)では以下のパブリックコメントを提出いたしました。

☆魚介類等に含まれるメチル水銀の健康影響評価資料こちら(PDF726KB)

<提出した日本生協連の意見>

2005年7月15日

内閣府食品安全委員会汚染物質専門調査会御中
 

「魚介類等に含まれるメチル水銀について」の食品健康影響評価に関する意見
 

日本生活協同組合連合会
 

 「魚介類等に含まれるメチル水銀について」の食品健康影響評価に関する審議結果(案)について、以下の通り意見を申し上げます。
 

記 

●ハイリスクグループのPTWIについて

 貴委員会では、JECFA(※1)と同様に、フェロー研究とセイシェル研究を基に評価していますが、NOAEL(※2)と判断した数値および不確実係数の取り方の違いによって、JECFAとは異なるPTWI(※3)を設定しています。不確実係数として毛髪濃度-血液濃度換算の変動幅を2とするのは同じですが、JECFAではトキシコキネティクス(※4)の不確実係数として3.2を採用しているのに対し、貴委員会では生物学的半減期(排泄係数)の変動幅としての2を採用しています。その結果、JECFAのPTWI(1.6μg/kg/week)とは異なる値として2μg/kg/weekをPTWIとしています。英国/COT(※5)やオーストラリア・ニュージーランド/FSANZ(※6)もJECFAのPTWIを採用しています。貴委員会が、トキシコキネティクスの不確実係数ではなく、排泄係数の変動幅を不確実係数として採用したことの合理的な説明が必要と考えます。例えば民族的な遺伝的素質による感受性の違いなどの変動要素を考慮すると、不確実係数はある程度の余裕を持たせるべきであると考えます。

 また、米国EPA(※7)のRfD(※8)やATSDR(※7)のPTWIについても、数値の紹介だけにとどまらず、貴委員会がこれらの機関の評価内容をどのように考えるかを明示すべきであると考えます。
 

●小児および成人のPTWIについて

 評価案では、ハイリスクグループのPTWI設定についてのみ記述され、一般集団のPTWIについては現行の値を維持する旨書かれているにすぎません。一般集団についても、貴委員会として改めて評価した上で、PTWIを確認すべきです。「(1)有害性の確認」の項では触れていませんが、メチル水銀はIARC(※9)においてグループ2Bに分類されていますし、水銀の摂取と痴呆症との関係を示唆する報告(中川:安全工学,32,242,1993)もあります。貴委員会も注目しているように、心血管系への影響も明確にはなっていません。これらの点も踏まえて、一般集団に対するPTWIを再評価すべきです。また、日本人の毛髪中水銀濃度は大部分が10ppm以下であるものの、少数ながら20ppmを超える人もいたという報告(Yasutakeら:Tohoku J.Exp.Med,199,161,2003など)もあり、一般集団に対してもメチル水銀濃度の高い魚種の摂取に関する注意喚起が行なわれるよう、厚生労働省に要請して下さい。

 また、脳の機能は出生後も発達段階にあり、小児が成人に比較して感受性が高いことは明らかです。現時点でデータが少なく、評価が困難であれば、感受性が高いものとして対応すべきと考えます。小児の体重あたりエネルギー摂取量は成人の2倍以上であるため、体重あたりメチル水銀の摂取量も成人の2倍以上と予想されます。したがって、小児もハイリスクグループに分類するか、あるいは、少なくとも、小児に対するPTWIを別に設定すべきです。
 

●魚介類摂取の有用性と摂取制限はわかりやすく書いてください

 魚類は栄養学的に有用ですが、特定の種類の食品を偏って過剰に摂取することは魚類に限らず望ましくないので、「推奨されても、制限される必要はないと考える」という表現は誤解を招かないよう修正すべきであると考えます。できるだけ多種類の食品をバランスよく摂取することを推奨してください。

 摂取が推奨される魚種について「生物濃縮が起こりにくい小型の魚類(イワシ、アジ等)」とされていることは適切と考えます。メチル水銀に関して注意喚起される魚種は限られた一部の魚種であることを、消費者にも誤解のないように伝えることが必要と考えます。
 

●魚の消費実態に合った注意喚起をするよう勧告してください

 評価案では触れられていませんが、昨年厚生労働省から出された勧告ではメチル水銀摂取限度を一回摂食量で割って摂食頻度を出す計算によって、特定の魚種に摂取の注意喚起をしていますが、以下の問題点があります。魚種別の消費量データを報告させて貴委員会で評価するか、消費実態に合った注意喚起をするよう厚生労働省に要請してください。

(1)水銀の濃度が高い魚種のうち摂食量が多いマグロ類が対象から外れている。

(2)個別魚種について摂食頻度を制限しているため、複数の魚種を限度近く摂食すると、合計では摂取限度を超えるおそれがある。
 

●過去の対策を検証してください

 1973年に暫定的規制値が設定された際、厚生省環境衛生局長通知(1973.7.23)には、妊婦及び乳幼児に対する指導とマグロ類等の多食者に対する指導が付帯事項として求められていますが、実際にはほとんど実行されなかったと聞いています。これを検証して、今後の注意喚起が実効あるものとなるように厚生労働省に要請してください。
 

●調査研究を進めてください

 評価案は、主としてフェロー研究とセイシェル研究を基に評価を行なっていますが、わが国では水俣病及び第二水俣病が発生しています。症状の著しい患者の影には症状の軽い中毒者、無症状の潜在的中毒者がいると考えられるので、当該地域でのメチル水銀曝露による影響について、過去のデータを改めて解析すると共に、現時点でバックグランド地域との比較研究を含めた詳細な調査研究を行ない、健康影響を調査することを要望します。

※1 「JECFA」とはFAO/WHO合同食品添加物専門家会議の略

※2 「NOEL」とは無毒性量 (無影響量)は有害/無害を含めた影響が認められない最高の暴露量

※3 「PTWI」とは蓄積性のある水銀やカドミウムなど重金属の一週間の許容摂取量

※4 「トキシコキネティクス」とは薬物の毒性試験において全身に暴露した結果を評価したもの

※5 「英国/COT」とは英国の食品・消費者製品・環境中の毒性と化学品に関する委員会の略

※6 「FSANZ」とはオーストラリア・ニュージーランド食品基準局の略

※7 「EPA」は環境保護庁の略、「ATSDR」とは米国有害物質・疾病登録局の略

※8 「RfD」は参照用量、耐用量の目安の略(Reference Dose)

※9 「IARC」とは国際がん研究機関の略
 

<問合せ先>

 日本生協連 安全政策推進室 電話:03-5778-8109