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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2005年06月17日

動物用医薬品(ジフロキサシン)の 食品健康影響評価に意見提出しました

内閣府食品安全委員会(本部:千代田区、寺田雅昭委員長)では、動物用医薬品ジフロキサシンについて、再審査に係る食品健康影響評価を行い、2005年6月15日を締め切りとする意見を募集しました。この動物用医薬品「ジフロキサシン」は、豚の肺炎に使用される抗菌剤として平成8年林水産大承認を受けてから、所定の期間(6年間)が経過したため、農水省より食品安全委員会に再審査申請されていたものです。

日本生協連(本部:渋谷区、小倉修悟会長)では、これに対して、「(1)耐性菌問題、(2)微生物学的ADI設定の明確な根拠、指針を示すこと、(3)光毒性、(4)視聴器毒性 などの点について慎重に調査、審議するべきであること」、「本剤は、ヒト臨床上最も重要な薬剤に分類されるフルオロキノロン剤と交差耐性を示すことから、リスク管理機関である農水省に、『その使用に当たっては慎重且つ適正に行われるようにすること』の勧告を求めること」などを内容とする意見を提出しました。

<提出した日本生協連の意見書>

2005年6月15日

内閣府食品安全委員会事務局 御中
 

動物用医薬品(ジフロキサシン)に係る
食品健康影響評価に関する審議結果についての意見
 

日本生活協同組合連合会
 

動物用医薬品(ジフロキサシン)について、貴委員会でリスク評価を行い、ADIの設定に至った。弊会では下記の観点から本剤の食品健康影響について、更なる調査、議論を行う必要があると考える。

1.耐性菌問題について

ジフロキサシンはヒトの臨床では使用されていないが、同系統のキノロン剤あるいはフルオロキノロン剤と明らかに交差耐性を示す。フルオロキノロン剤はサルモネラ症、カンピロバクター症などの食品媒介腸管感染症や多剤耐性グラム陰性桿菌感染症など生命を脅かす重篤感染症の治療薬として必須である。且つ、薬剤に耐性が出現した場合、代替薬剤が皆無あるいは極めて限定的であるため、ヨーロッパをはじめ諸外国でヒト臨床上「最も重要な薬剤」に分類されている。

またWHOは1998年に、食用動物におけるキノロン剤使用とヒト健康への影響の可能性として、耐性菌問題等について更なる調査が必要であること、家畜への抗菌剤使用には慎重を期すことなどが記されている。

以上のことから、ジフロキサシンについては食用動物への使用を控えるなどの提言を行うべきであると考える。

また、薬剤の再審査を行うに当たって耐性菌に関する評価を実施することは重要な事項のひとつであるが、貴委員会資料(別添1)の「塩酸ジフロキサシンを有効成分とする・・・食品健康影響評価について(案)」には耐性菌対策に関する言及がされておらず不十分である。本剤を使用することにより生じる耐性菌のリスクをどのように判断したのか、またOIEやWHOで示された抗菌剤耐性に関する勧告について、見解を示されたい。

2.微生物学的影響からADIを求める際の根拠について

今回ADIの設定に際してPeptostreptococcusのMICを選択、安全係数に2を設定しているが、その根拠を明らかにされたい。

評価文書中で、E. coliについてはヒト腸内細菌に占める割合はごくわずか(1%程度)で、ADIの評価に用いるMICとして採用するべきでないとある。しかし、過去にはネオマイシンの評価の際にLactobacillus spp.と並び、E. coliをその指標として用いている。ネオマイシンでは最終的に毒性学的データを採用してADIを求めているが、微生物学的評価指標としてE. coliが対象となった一例である。

ジフロキサシンについては、通例腸内細菌叢への影響を検討する際に考慮することが推奨される菌種のうち、Bifidobacterium、Lactobacillusの知見が得られていない。この場合、最も感受性の高い菌のMICを採用するのが妥当であると考える。

議論になったKlebsiellaのMICを採用しない理由についても詳細を明らかにされたい。

また、安全係数については、MICが8菌株の知見であることと、代謝物であるサラフロキサシンの影響を考慮し2を設定しているが、2とした理由が明確ではない。安全係数の設定には一貫性が求められるため、数値の取りうる範囲や線引きの基準についての見解を示されたい。

以上のように微生物学的影響の評価については現状明確な指針が示されておらず、菌種の選択及び安全係数の設定過程が不明確である。食品安全委員会として明確な指針を表すことを望むとともに、設定根拠の説明は詳細に行うべきであると考える。

また、JECFAやVICH(GL36)が策定した微生物学的ADIを定めるためのガイドラインについてもコメントされたい。

3.光毒性について

フルオロキノロン剤が持つ光毒性/光遺伝毒性について、いくつかの構造活性相関の知見が示されているが、ジフロキサシンについての直接のデータが示されていない。本剤のUV照射時における遺伝毒性および発がん性の発現については不明であり、更なる調査が必要と考える。

4.視聴器毒性について

ジフロキサシンは有色ラットではアルビノラットよりも眼組織に30倍高く貯留し、そのβ相のT1/2が19日であることから、メラニン色素に親和性が高いと考えられている。また、メラニンに親和性の高いクロロキンなどは網膜の色素上皮や脈絡膜で細胞内沈着し、網膜症を発現することがよく知られている。

フルオロキノロン剤のヒト臨床使用で大きな視覚毒性事故がないものの、比較的短期の投薬であること、またジフロキサシンが若齢イヌで長期の潜伏期後に網膜電図に異常を発現し、培養細胞に光照射すると活性化によって細胞毒性や遺伝毒性を強く惹起すること考慮すると、食物残留の極微量の摂取とはいえ、長期摂取した場合その網膜への蓄積性に対して有色人種で安全であると結論できる根拠が不足していると考える。

5.リスク管理機関への勧告について

ジフロキサシンは第一選択薬が無効の症例にのみ使用する薬剤である。また上記のように耐性菌についての悪影響が懸念されることから、その使用は慎重に行われるべきである。

よって、本剤が適正に使用されるよう、リスク管理機関である農水省への勧告を行っていただきたい。

<問合せ先>

日本生協連 安全政策推進室 電話:03-5778-8109