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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2005年04月18日

食品安全委員の「我が国における 牛海綿状脳症(BSE)対策に係る 食品健康影響評価(案)」に関する審議結果(案)」へ 意見を提出しました ~SRM除去の徹底・ピッシングの 廃止要請・リスクコミュニケーション強化など~

日本生協連(本部:渋谷区、小倉修悟会長)では、内閣府食品安全委員会(千代田区、寺田雅昭委員長)が、2005年4月27日を締切日として募集している「我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価」(案)」に対するパブリックコメントの募集に対して、「BSEに関する安全性確保対策は、BSE検査、SRM除去の徹底、食肉の汚染防止対策(ピッシングの廃止要請)、飼料規制等が総合的かつ確実に行われること、リスクコミュニケーションの一層の強化」などを軸とする以下の意見を提出しましたのでご案内します。

☆2005年1月に提出した要望書はこちら

<提出した日本生協連の意見>

2005年4月18日

内閣府食品安全委員会御中

「我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価(案)」
に関する審議結果(案)についての意見

日本生活協同組合連合会

国内のBSE対策の見直しに係る食品健康影響評価では、貴委員会は科学的な視点からの評価作業と併せて、意見交換会の実施など国民各層とのリスクコミュニケーションに努めてこられたことについて、敬意を表する次第です。

今回、プリオン専門調査会で「我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価(案)」(以下、「評価(案)」)が取りまとめられ、パブリックコメントが募集されております。当会では、BSEに関する安全性確保対策は、BSE検査、SRM除去、食肉の汚染防止対策、飼料規制等が総合的かつ確実に行われることが基本であると考えており、この点から以下の意見並びに要望を提出いたします。

記 

1.と畜場におけるBSE検査対象月齢の見直し等について

(1) 対象月齢の見直しについては、2001年10月の飼料規制から1年半以上経過した、2003年7月以降に生まれた牛が対象です。これらの牛の食肉の汚染度に関するリスクは、定性的・定量的評価において、BSE検査の有無に関わらず、「無視できる」~「非常に低い」と推定されています。また、対象とする牛からBSE検査陽性牛が検出されたとしても、異常プリオンの蓄積量は少量であり、検査の検出限界に近いと推定しています。さらに、これまで実施されたBSE検査からは、20ヵ月齢以下のBSE感染牛は確認されておりません。これらのことを勘案すると、「評価(案)」の「検査月齢の線引きがもたらすヒトに対する食品健康影響評価(リスク)は非常に低いレベルの増加にとどまる」とする結論は、現時点での科学的な知見に基づく検討結果として理解できるものです。
(2) 「評価(案)」の「おわりに」に述べられている通り、SRM除去や汚染防止対策がと畜場によってばらつきがあり、具体的な改善の目途が示されていません。飼料規制なども改善すべき課題が残っている現状にあります。併せてBSE問題は科学的に不明確な点が多く、利用できるデータも少ないことなどを踏まえ、リスク管理措置の変更については慎重に行う必要がある旨をリスク管理機関に意見として述べる事を要望します。

2.SRM除去の徹底について

(1)

ピッシングの廃止について

「評価(案)」では、ピッシング廃止について、「具体的な目標を設定した実施計画を作成し、できる限り速やかに進める必要がある」と指摘しています。この指摘を実現するため、現時点でピッシング廃止の障害となっている問題の解決策を厚生労働省に求めると共に、廃止の早急な実現を図るために、食品安全基本法に基づく勧告を行うなど、食品安全委員会としての強い意思を示すことを要望します。

(2)

せき髄組織の飛散防止対策について

「評価(案)」では、せき髄組織の飛散防止対策について、「引き続き徹底することとし、SRM管理措置の有効性について検証していく事が重要」と指摘しています。せき髄除去を徹底し、汚染防止をはかるために、背割り前のせき髄除去の徹底をはかるための具体的な対策、除去方法の統一化など衛生標準作業手順の標準化を行うことについて、食品安全基本法に基づく勧告を行うなど、食品安全委員会としての強い意思を示すことを要望します。

3.飼料規制の実効性確保について

(1) 「評価(案)」では、飼料規制の実効性確保について、「具体的な目標を設定し、できる限り早く達成する必要がある」と指摘しています。輸入飼料の交差汚染防止など飼料規制の実効性を確保するために、食品安全基本法に基づく勧告を行うなど、食品安全委員会としての強い意思を示すことを要望します。
(2) 牛飼育農家段階については、「評価(案)」の指摘に沿って検査・指導体制を強化し、飼料規制の管理が徹底されることが必要と考えます。

4.今後のリスク評価に関する検討課題について

(1) 扁桃はSRMの一つとして含まれていますが、現在のところ、舌扁桃は除去されず、食用の牛舌として流通されています。舌扁桃のリスクについての評価が必要ですが、今回の諮問に関する審議では、検討課題としては取り上げられませんでした。舌扁桃のリスク評価を実施していただくことを要望します。
(2) 腸については、昨年、国際獣疫機関(OIE)が策定する規範(コード)が改訂された際にSRMとして新たに加えられましたが、日本では取り入れられていません。腸に関するリスク評価に必要なデータが現在はない状態と考えますが、研究課題と位置付け、リスク評価に必要なデータを収集することを要望します。
(3) 飼料規制後に産まれた牛についても、国内においてBSE発生が確認されています。BSE根絶のため、今後の検討課題として、調査することが必要と考えます。

5.BSEに関する調査研究の一層の推進について

BSE及びプリオン病に関しては、科学的に不明確な点が多く、利用できるデータも少ない現状です。「評価(案)」では、「基礎研究のみならずリスク評価に必要なデータを作成するための研究が推進されるべき」と記述されています。この指摘に基づいて、科学的な判断を行うために必要な、現時点でのデータの収集・蓄積やより高感度なBSE検査方法の開発等を一層推進するため、リスク評価機関とリスク管理機関の双方で、目標を定めて積極的に取り組まれることを要望します。

また科学的知見に関して、今後新しいデータや技術革新等が得られた場合には、評価の見直しを行う必要があると考えます。

6.リスクコミュニケーションの一層の推進について

(1) BSEのリスクやその対策の見直しについては、一部のマスコミ等に見られるように、全頭検査緩和の問題や米国産牛肉の輸入再開に関する報道のみが突出している状況にあります。そのため、国民の間に情報が総合的に伝わっておらず、リスクへの不安や行政への不信につながっている面があります。

貴委員会におかれましては、BSEのリスクやその対策に関する情報が国民の間に総合的に伝わり、理解が深まるよう、リスクコミュニケーションを通じてなお一層の努力を行っていただく必要があると考えます。

(2) 「評価(案)」では、審議の基本方針として、「消費者の信頼を確保するために、リスクコミュニケーションで提起された問題点を検討し、リスク評価にもとづく見解に反映させる努力が必要」と掲げています。これまで意見交換会等で出されてきた意見について、貴委員会として十分な検討を行い、その結果を回答・説明することや、今回の審議内容に関する国民への判りやすい説明等を行うなど、説明責任をきちんと果たす事を要望します。

7.米国産牛肉の輸入再開問題等について

「評価(案)」の「おわりに」では、「今後諸外国におけるBSE感染リスクの評価を行う際には、総合的な評価を行うための多様なデータの存在が必要になる」と記載されています。米国産牛肉の輸入再開問題の検討にあたっては、「評価(案)」にある様に、米国にデータを求めるとともに現地の実態調査なども行い、評価に必要な多様なデータに基づく総合的なリスク評価を行う旨を明示することを要望します。

<問合せ先>

日本生協連 広報 電話:03-5778-8106