2005年2月9日
内閣府食品安全委員会御中
ヒドロキシプロピルセルロースの食品健康影響評価に関する審議結果についての意見
1. 貴委員会として、本物質については「ADIを設定する必要はない」と評価した判断理由を明確に示してください。
今回の資料1「添加物専門調査会における審議状況について」の「8 評価結果」の項においては、「提出された毒性試験成績等は必ずしも網羅的なものではない」と言及しつつも、「総合的な判断」、「わが国において医薬品分野で使用経験があり、これまでに安全性に関して特段問題となる報告もないこと」、および「JECFAでは、ADIを特定しないと評価していること」等にもとづき、「ADIを設定する必要はない」という結論を導いています。
一方、12月22日の第15回添加物専門調査会における参考資料1によれば、既にわが国で指定済みの類似化合物であるヒドロキシプロピルメチルセルロースについては、(JECFAではADIを特定しないと評価しているものの、)わが国ではADIを21mg/kg体重/日と算出しています。
類似の化合物であり、添加物としての用途や特性も比較的似ているものについて、一方はADIが数値化され、他方は「設定する必要はない」と評価されているのは整合性に欠けると思われます。なお、ヒドロキシプロピルメチルセルロースについては、一日摂取量を推定した上で、上記のADIに鑑みて「保健機能食品に係るカプセル基剤及び錠剤コーティング剤以外の用途に使用してはならない」という使用基準が定められています。
意見の2.とも関連しますが、ADIは使用基準の考え方と深く関わることなので、貴委員会として「ADIを設定する必要はない」と結論した根拠を明確に示して下さいますよう、お願いいたします。
2. 適切な使用基準を設定すべきであると考えます。
今回の資料1「添加物専門調査会における審議状況について」の「3 添加物指定の概要」の項には、「米国では特に使用制限が設けられていないこと、また、EUにおける使用制限は特定の食品の品質を規定するための添加物の使用制限であり、衛生規制としての安全性に基づく使用制限ではないと考えられること等から、使用基準は設定せず」との記述がありますが、本物質の特性(有用性)や諸外国における具体的な使用実態を踏まえた上で、わが国としての適切な使用基準を設定すべきであると考えます。
「7 国際機関等における評価」の項にも記述がある通り、JECFAにおける「ADIを特定しない」の定義の概略は、「適正に使用される範囲においては、健康に危害を示さないものであり、数値の形で表現されるADIの設定の必要はないと考えられる。この基準に適合する添加物は、技術的に有効なものでなければならず、かつ、この効果を達成するのに必要最小限の濃度で使用され、食品の劣悪な品質や粗悪品を隠したり、栄養上のアンバランスを生じるようなことがあってはならない。」というものです。したがって、「ADIを特定しないから使用基準は必要ない」という考え方にはならないと思われます。
また、「8 評価結果」の項に「本物質は、わが国において医薬品分野で使用経験があり、これまでに安全性に関して特段問題となる報告もない」という記述もありますが、「医薬品用途で認可されているから、食品に対しても使用基準を設けずに認める」ということには、なり得ないと考えます。
ヒドロキシプロピルセルロースは、現在わが国で医薬品に対して滑沢剤・コーティング剤等の用途で使用されていることからも推察しうる通り、一部の錠剤形態の食品等に対しては一定の有用性がある可能性も否定できませんが、加工食品全般に対して有用性があるとは思えません。したがって、適切な使用基準を検討されることを望みます。
「ADIを設定する必要が無い」という考え方の根拠自体が不明確でありながら(類似の化合物に対する考え方との整合性に欠けており)、かつ、「ADIを設定する必要が無いのだから使用基準も設定しない」という論拠で審議されています。消費者の理解と安心を得るため、
上記2点について、十分な説明と検討をお願いいたします。
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