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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2005年01月21日

「カドミウム及び水銀(メチル水銀)に関するリスク評価について」 要請書を提出しました

 内閣府食品安全委員会の汚染物質専門調査会(座長:佐藤 洋 東北大学大学院教授)では、米や魚介類、清涼飲料などに含まれるカドミウム及び水銀(メチル水銀)の健康影響評価についての検討を行ってきています。日本生協連(本部:渋谷区、小倉修悟会長)では、こたび食品安全委員会に「米などのカドミウムの健康影響については中立的な立場から慎重に評価してください」「データ・情報開示の透明性の高い運営を」などを中心にした要請書を提出しましたのでご紹介します。

☆カドミウム・水銀の健康評価をする専門部会の会議資料はこちら

<提出したカドミウム・とメチル水銀のリスク評価に対する要請書>

2005年1月20日

食品安全委員会委員長 寺田雅昭殿

日本生活協同組合連合会
専務理事 伊藤敏雄
 

カドミウム及び水銀(メチル水銀)に関するリスク評価についての要請書
 

 日頃食品安全行政にご尽力いただき篤く御礼申し上げます。貴委員会汚染物質専門調査会では現在、米などの食品に含まれるカドミウム及び魚介類に含まれる水銀(メチル水銀)の健康影響に関してリスク評価を進めていらっしゃいます。これらの評価につきまして、弊会では消費者の立場から以下の点を要請いたします。
 


 

【1】米などのカドミウムに関するリスク評価について

1.カドミウムの健康影響については中立的な立場から慎重に評価してください

 カドミウム汚染度の高い地域で障害が発生しているかどうかは、学会でも議論があるところで、イタイイタイ病の研究者などから、神通川流域以外でも腎臓障害が起きているとの報告もなされています。これまでカドミウムの健康影響に関してなされている報告をレビューするとともに、障害が発生しているとする専門家の意見も聞いて、慎重に検討していただくことを要望します。評価の進め方に関しては、「食品安全委員会における調査審議方法等について(平成15年10月2日内閣府食品安全委員会決定)」に従い、審議の公平・中立を保たれるよう十分に留意されるよう要望いたします。

 なお、2003年に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会に報告された厚生労働科学研究報告に関しては、米中カドミウムが尿中カドミウム、骨密度等に影響を与えていない旨の結論となっていますが、対照群(地域A)と比較して汚染群(地域E等)の尿中カドミウム、骨密度は有意の影響が出ており、解析のやり直しもしくは調査のやり直しを求められるよう要望します。
 

2.曝露推計は正確に行なってください

 厚生労働省では、モンテカルロ法によるカドミウムの曝露推計を行なっていますが、米は生産者による自家産米消費はもとより、都市部でも縁故米を消費するケースが少なくないとされています。特定水田の産米を毎年消費する自家産米・縁故米消費者が一定存在する状況下では、モンテカルロ法による曝露推計は不適切と考えます。自家産米・縁故米消費を考慮した曝露評価を行なってください。
 

3.データ・情報の開示など、透明性の高い運営を要望します

 2005年2月に予定されているJECFAの第64回会議に先立ち、FAOとWHOは各国に食品群別カドミウム摂取量推計データ等の情報の提出を2004年9月15日の期限をもって要請していますが、日本政府も既にデータを提出されているものと考えます。これらのデータはJECFAにおける評価だけではなく、日本における評価にも重要な役割を演じると考えられますので、今後JECFA等の国際機関に情報を提出する際は国内で開示して意見を求めるようにさせてください。

 また評価にあたっては、評価に用いられたデータや評価の過程等を公開し、広く意見を求めるようにしてください。

 なお、4月のCCFACに向けた各国コメントを見ると、「地理学的要因で土壌中のカドミウム濃度が高い」との日本の説明を受けたコメントが見られますが、旧鉱山などによる汚染によるものであることを誤解なきよう説明することが必要と考えます。
 

4.ALARA原則による低減を要請してください

 汚染物質について取られているALARA原則によって、カドミウムの摂取はできるだけ低く抑えるべきと考えます。現状のカドミウムレベルと低減対策研究の進捗状況等を勘案して、できるだけ低い基準を設定するよう厚生労働省に要請してください。
 

【2】魚介類の水銀に関するリスク評価について

1.十分に安全を見込んだ評価を行なってください

 水銀の健康影響評価に用いているフェロー諸島とセイシェル諸島における研究結果では、片や水銀摂取の影響を認め、他方は影響を認めないという結果になっていますが、影響を認めなかった研究を根拠として甘い評価をすることなく、十分な安全を見込んで評価を行ない、未然に危害を防止するようにしてください。
 

2.水俣病発生地域などの調査を促進してください

 わが国は水俣病、第二水俣病という悲惨な被害を経験していますが、該当地域では公害病として認定された患者のほかにも中程度から低レベルの水銀曝露により被害が出ていると考えられます。しかし、水銀の健康影響評価には、フェロー諸島とセイシェル諸島における研究結果などが利用されています。被害発生から長い期間を経てしまっているため、曝露量の推定は容易ではありませんが、これからでも実施可能な調査研究を進め、中程度から低レベルの水銀曝露の被害について究明してください。
 

3.水銀の多い魚種に関する評価を行なってください

 昨年の厚労省勧告ではマグロ類を注意喚起する魚種から外されていますが、実際の摂食量では水銀の濃度が高い魚種のうちマグロ類が最も多いと考えられ、注意喚起の意味が問われます。一回摂食量に摂食頻度を掛ける厚労省方式は不正確であると考えますので、実際の消費量を調査して評価してください。

 厚労省勧告では個別魚種について摂食頻度を制限しているため、複数の魚種を限度近く摂食すると、合計では摂取限度を超えます。水銀の濃度が高い魚種全体の摂食について注意を喚起するよう、厚労省に要請してください。

 魚介類は重要な蛋白源でもあり、不飽和脂肪酸やビタミン、ミネラル類など、栄養豊富な食品ですので、水銀の濃度が低い魚種を中心に食生活に取り入れるよう食生活指導を行なうよう関係省庁に要請してください。
 

4.妊婦等以外についても注意喚起してください

 厚労省勧告では妊婦等について注意喚起する一方で、妊婦等以外では注意喚起が必要ない旨を書き添えています。PTWIは胎児への毒性に着目して設定されたものではありますが、一生涯の摂取について設定しているものです。幼児については感受性の高いグループとして諸外国でも注意喚起の対象とされています。

 他のグループに属する人を含めて、水銀の濃度が高い水産物を過食することは好ましいものではなく、注意喚起されるべきと考えます。
 

5.過去の対策を検証して実効あるものとしてください

 1973年に暫定的規制値が設定された際、厚生省環境衛生局長通知に付記された食生活の適正指導が、実際にはほとんど実施されておりません。この事実を検証して、実効ある施策となるよう、業界への指導、関連団体等を通じた食事指導、教育現場での対策を関係省庁に要請してください。


(資料)

厚生省環境衛生局長通知(1973.7.23)の食生活の適正指導要請に関する記述

 この暫定的規制値の正しい運用によって一般的には十分な安全が確保されるものであるが、妊婦および乳幼児に対しては、各方面の魚介類の調査結果と食生活の実態を考慮のうえ適切な食事指導にあたられたい。また、マグロ類その他の魚介類を多食する者についても食生活の適正な指導を行なわれたい。