環境省廃棄物・リサイクル対策部御中
「循環型社会の形成に向けた市町村の一般廃棄物処理のあり方について」
中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 意見具申案に関する意見
日本生活協同組合連合会は、消費者の最も身近な環境問題の1つとして、家庭からのゴミ(一般廃棄物)問題を一貫して重視してきました。今後の一般廃棄物処理のあり方について、(1)徹底した情報提供、情報開示が行われ、住民の参加と自治が貫かれること、(2)事業の効率化を追求すること、の視点を堅持することが必要であり、この視点に基づき、「循環型社会の形成に向けた市町村の一般廃棄物処理のあり方について」に関して、以下の通り意見を申し述べます。
1.ライフスタイル見直しは、住民の知恵と力を引き出すことが大切です。
普及啓発、情報提供、環境教育などは、その効果が短期的には見えにくい面はありますが、粘り強く長期的にすすめることが必要です。また、国や市町村が住民を啓発するという視点だけではなく、住民が実際に取り組んでいるさまざまなゴミ減量の知恵を集め、住民に紹介し広げるという視点が有効です。更に、住民の自主的な取り組みの支援をすすめるとともに、自治体の各種イベント等もゴミ削減の視点を重視して住民参加で作り上げる中で、ゴミ減量に参加する住民の輪を広げていくことが大切です。
2.住民に対する徹底した情報提供、情報開示が必要です。
一般廃棄物処理事業の信頼性・透明性の確保のためには、自治体ごとに現状の一般廃棄物処理の仕組み、直営や委託の作業や内容、コストの状況を包み隠さず住民に明らかにすることが必要です。このことは、一般廃棄物処理の今後のあり方を検討する上で共通するものです。
3.一般廃棄物処理のコスト分析と効率化をすすめることは必要です。
標準的な分析手法を確立し、自治体で一般廃棄物のコスト分析と効率化をすすめることは、今後のゴミ処理をすすめる上で必須です。2004年夏に環境省が発表した容器包装リサイクル法に関わる市町村の費用のようなモデル自治体としての公表ではなく、全て実際の市町村のデータを明らかにすることが必要です。また自治体におけるコスト分析には住民の代表を加えた検討機関を設置し、検討状況のすべてを公開することが必要です。
更に、優良な民間の廃棄物処理事業者については、一般廃棄物処理に参入を促し、こうした民間との処理内容とコスト比較をすることも有効です。
4.一般廃棄物処理の有料化は、住民がゴミの排出抑制・資源化に参加できる条件整備と、住民の納得が必要です。
一般廃棄物処理の有料化が、一般廃棄物の減量効果を一定程度上げている自治体があることは承知しています。家庭ゴミ削減の経済的インセンティブ効果を上げるためには、例えば容器包装や紙類・繊維等の資源ゴミの無料回収の仕組みが身近にあり、また生ゴミの資源化などへも参加しやすくなっているなど、家庭ゴミの排出抑制・資源化に参加できることで、住民がゴミ処理費用の負担の回避・軽減を選択できる条件整備が必要です。こうした条件整備なしに実施する有料化は、一時のショック療法に終わるため、不法投棄や後の「リバウンド」となって現れます。
また、一般廃棄物処理の有料化を実施する場合には、前項で述べた自治体の一般廃棄物処理の情報提供・情報開示の徹底が必要であり、正確なコスト開示ができない自治体は一般廃棄物処理の有料化を語る資格がないと考えるべきです。その上で、住民がゴミ処理費用のどれだけを負担するのか、本当に減量効果があるのか、有料化による収入または自治体経費の削減分は住民にとってどのように活用されるかなどが住民の中で徹底して議論され、住民がしっかりと納得することが必要です。
国による自治体の有料化支援は、こうした条件整備や住民参加を促進することに重点を置くべきであり、一律に自治体に有料化を強制することがあってはならないと考えます。
なお、事業系の一般廃棄物については、家庭ゴミの有料化の議論とは切り離して、適正な費用を徴収することが必要だと考えます。
5.一般廃棄物処理の効率化のためには一定の広域化が必要ですが、広域化の事業主体のあり方について検討が必要です。
一般廃棄物の処理施設やリサイクル施設の安定的で効率的な運用のためには、一定の規模が必要であり、そのために必要な広域化については理解します。ただし、広域化による大型施設の建設で、逆に廃棄物が不足してゴミ集めに腐心する事がないように、一般廃棄物減量化の徹底による適切な将来予測に基づいた広域化の取り組みが必要です。もちろん、住民に対しては十分な説明を行い、理解を得ることが必要です。
また、現在でも一部事務組合として自治体の枠を超えて一般廃棄物処理が実施されていますが、一部事務組合は住民から見た場合には間接的なものになります。そうした点からも広域化をする場合には、その事業主体や運営のあり方について常に透明性が確保できるよう十分な検討が必要です。
6.資源化できない廃プラスチックを熱回収することについては理解します。
容器包装リサイクル法に基づく再商品化費用の中で、プラスチックが大部分を占めていることからも明らかなように、廃プラスチックの資源化と処理については大きな問題があると考えています。
意見具申案の、「今後の廃プラスチックの取扱いについては、まず発生抑制を、次に容器包装リサイクル法等により拡がりつつある再生利用を推進し、それでもなお残った廃プラスチックについては、最近の熱回収技術や排ガス処理技術の進展や、最終処分場のひっ迫状況等を踏まえ、直接埋立は行わず、一定以上の熱回収率を確保しつつ熱回収を行う方向」については理解します。その場合に、燃料の原料としての廃プラスチックの適切性の確保、燃焼施設での徹底した環境対策、火力発電所並の発電効率と廃熱の有効活用の実現が求められます。
なお、資源の有効活用とコスト低減の両面から将来に向けた新たな処理と資源化の研究を推進することも必要と考えます。
7.一般廃棄物処理やリサイクルの一定部分の標準化は必要です。
一般廃棄物処理やリサイクルの分別収集区分が自治体によって違っていることは、住民の混乱や、一般廃棄物処理の適正化と効率化をしにくくする要因につながることは理解します。そのために一般廃棄物処理やリサイクルの方法の標準化をすすめることは必要です。なお、そうした標準化をすすめた上で、自治体や住民の創意工夫によるプラスαの取り組みについても認めることは必要と考えます。
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