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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2004年12月02日

「ブロノポールを有効成分とする
魚卵用消毒剤の食品健康影響評価」に意見を提出
~ニシン類魚卵のミズカビ抑制目的の消毒剤~

農林水産省と厚生労働省は、2004年9月に「動物用医薬品・ブロノポール(※)を有効成分とする魚卵用消毒剤の食品健康影響評価」を、内閣府食品安全委員会(本部:中央区、寺田雅昭委員長)に求めました。10月20日の第19回動物用医薬品専門調査会(座長:三森国敏・東京農工大学大学院教授)において、標記に係る食品健康影響評価が審議されました。同調査会では、この評価(案)について、広く意見を求めた上で食品安全委員会に報告することになりました。日本生協連(本部:東京都渋谷区、小倉修悟会長)では、この動物用医薬品「ブロノポール(魚卵用消毒剤)」の健康評価(案)について、今回「本剤の周辺情報は紹介されているが食品安全委員会(調査委員会)としての毒性評価を中心にした安全性についての基本的考えを述べるべきである」などの以下の意見を提出しましたので紹介します。

 (※) ニシン目魚類の養殖においては卵の採取、授精、孵化、育成を養殖場の管理下で行っている。このうち授精から孵化までの過程では通常少なからぬ死卵が発生する。死卵が発生すると、これにミズカビが寄生繁茂し、周囲の生卵に蔓延して発眼率・孵化率に大きな影響を及ぼす。このため、定期的に魚卵を消毒し、ミズカビの発生を抑制する操作が行われている。

<提出した意見>

2004年11月30日

内閣府食品安全委員会御中

孵化を目的としたニシン目魚類のブロノポールを有効成分とする魚卵用消毒剤に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見・情報の募集についての意見

日本生活協同組合連合会

ブロノポールを有効成分とする魚卵用消毒剤の食品健康影響評価に関する審議結果について、意見・質問を述べさせていただきます。

1.魚卵用消毒剤の食品健康影響評価について

食品安全委員会として毒性評価を中心とした本剤の安全性に関する基本的考え方を示すべきである。

本報告書案にはNovartis Animal Vaccinesの製剤であるパイセス(Pyceze)及びその有効成分ブロノポールについて一般情報、物理化学的性質、米国EPA(環境保護庁)、EU EMEA (ヨーロッパ医薬品評価機関)の安全性に関する知見等が一部紹介されているが、これらの知見に基づいて、貴委員会が本製品の安全性をどのように評価したが記述されていない。他の動物用医薬品と同様に、有効成分および助剤についての安全性を、一般毒性、体内動態試験、変異原生試験、急性毒性試験、短期毒性試験、長期毒性・発がん性試験、発達毒性試験、繁殖毒性試験およびその他の関連情報に基づいて評価した上で、貴委員会としての本剤の食品健康影響評価がなされるべきである。後述するように、ブロノポールのADIについては米国とEUで異なっているが、このような評価の相違も含め、貴委員会としての評価結果が明示されるべきである。

2.発がん性について

本報告書案には「ラットを用いた2年間の飲水投与試験でブロノポールに発がん性は認められていない」と記述されているが、EMEAは本試験が発がん性を評価するための試験として不適切であるとしている。この点について貴委員会の考え方を示されたい。

3.ブロノポ-ルの一日許容摂取量(ADI)設定について

「孵化を目的としたニシン目魚類の魚卵用消毒剤として使用されたブロノポールが、ヒトの健康に影響を与える可能性は無視できると考えられる」とする貴委員会の結論の根拠になるのはブロノポールのADIである。したがって、様々な毒性関連データに基づいてブロノポールのADIを具体的に定めることが、本製剤の安全性評価を担当する貴委員会の重要な任務と考えられる。EMEAもEPAもこの作業を行っている。

米国EPAはラットにおける長期毒性・発がん性におけるNOEL(最大無作用量)である10mg/kg/dayに安全係数100を採用し、0.1mg/kg/dayを設定している。一方、EU EMEAはビーグル犬における13週間強制投与結果におけるNOELである4mg/kg/dayに安全係数200を採用し、20mg/kg/dayを設定している。ただし、EU EMEAはビーグル犬における白血球減少をブロノポ-ルの影響と判断しているが、EPAはこれを影響と判断していない。このような評価の相違にも注目し、貴委員会としてブロノポールのADIを設定するとともに、その考え方を明確に示すべきである。

4.溶解補助剤の安全性

製剤の安全性を評価するには、活性成分であるブロノポールのみならず、溶解補助剤として含有されているジプロピレングリコールモノメチルエーテルの安全性評価も必要である。しかし貴委員会は、「遺伝毒性等がない」とする初期評価プロファイル(SIDS Initial Assessment Profile)の評価概要を紹介しているだけである。このような助剤についても貴委員会としての安全性評価結果を明示すべきである。

5.使用範囲の明確化

ニシン目魚類について

本食品健康影響評価の動機は、EMEA Summary Report (1)に基づくものと考えられるが、Summary Report (1)においては、対象とする動物種はSalmonidae(サケ目サケ科)となっているのに、本評価では、対象動物がさけ・ます・あゆ等のニシン目魚類の魚卵となっている。ニシン目魚類の魚種(生物学的分類を含めて)を特定すべきである。

6.その他

成魚における薬浴試験について

この試験の概要は、EMEAがSummary Report (2)において、Summary Report (1)の結論を変更し、ブロノポールを魚(fin fish)のすべてのライフステージに用いることを認める上で用いたものであり、魚卵の残留試験に言及したものではない。したがって、本評価(魚卵における残留の項目)には参考にならないであろう。

ヒトへの健康影響について

ブロノポ-ルには腐食性があり皮膚刺激性が強いことから、養殖関係者でブロノポール製剤に直接曝露するヒトに対する健康影響評価も併せて実施するように要望する。

この件はリスクマネジメント機関である厚生労働省や農林水産省の範疇であるかもしれないが、食品安全委員会自体が考慮すべき事項である。

<内容についての問合せ先>

日本生協連 安全政策推進室 (担当:鬼武)

電話:03-5778-8109