ページ内を移動するためのリンクです

日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2004年09月09日

日本生協連「牛海綿状脳症(BSE)対策 に関する要請書」を提出しました

日本生協連(本部:渋谷区、小倉修悟会長)では、今回、内閣府食品安全委員会(本部:中央区、寺田雅明委員長) プリオン専門調査会の取りまとめました「日本における牛海綿状脳症(BSE)対策について 中間取りまとめ(案)」に対して、この間の報道や論議のされ方などが「全頭検査」に焦点化しすぎていることから、「一連の対策についての再評価と合理的な対策の再確立が必要」との視点で、要請書をまとめ、食品安全委員会に提出いたしましたのでご報告いたします。なお、今後、同趣旨の要請を厚生労働省、農業水産省に対しても行っていきます。

<問合せ先>

日本生協連 安全政策推進室

電話:03-5778-8109 

<以下提出した要望書>

2004年9月8日
 

食品安全委員会
委員長 寺田雅昭 殿
 

日本生活協同組合連合会
専務理事 品川尚志
 

牛海綿状脳症(BSE)対策に関する要請書
 

9月6日の貴委員会プリオン専門調査会において、日本国内のBSE対策の安全性に関する再評価作業を取りまとめた「日本における牛海綿状脳症(BSE)対策について 中間取りまとめ」の内容が検討され、大筋でその内容が確認されています。

日本生協連としては、日本国内でのBSE発生後の消費者の不安が生じていた状況に比べて、ある程度は冷静にこの問題を捉えてきている現段階において、一連の対策について再評価を行うと共に、今日的に合理的な対策を再度確立することは必要なことと考えます。

BSE対策に対しては、何よりもこの間の経過と到達状況について国民の理解を深め、丁寧にリスクコミュニケーションを行っていくことが重要です。現在のBSE対策に関わる問題では、現行の制度運用について改善が必要と思われる点があるにも関わらず、全頭検査の問題だけが突出して議論される状況となっています。加えて、米国産牛肉の輸入再開に関わる様々な動きも関連し、国内対策の見直しが即米国産牛肉の輸入再開につながるような報道も一部にはされています。

日本生協連としては、BSE対策について、第一に、国産・輸入を問わず全ての牛肉に対して講ずるべきであること、第二に、プリオン病に関する研究は不明なことが今でも多く、これまでの研究で判ってきたこともまだ不確実性を抱えていること、第三に、科学的知見が十分に確立されていない中では、全ての関係者が認識を深めてリスクコミュニケーションを進めること、に留意して進める必要があると考えます。

以上の基本的な考え方に基づき、BSE対策について以下の事項を要望いたします。
 


 

1.国内のBSE対策について

 日本におけるBSE対策の決定にあたっては、リスク管理機関が十分にリスクコミュニケーションを徹底して行なう必要がある旨を、厚生労働省や農林水産省に要請してください。

貴委員会プリオン専門調査会で検討された「日本における牛海綿状脳症(BSE)対策について 中間とりまとめ(案)」では、一部の報道にあるような「20ヵ月齢以下は除外」とする具体的な結論を示しているものではなく、「これら具体的なリスク管理措置については、今回のリスク評価結果に基づいて、十分なリスクコミュニケーションを行った後、リスク管理機関によって決定されるべき」と記述をしております。

このことは、リスク分析手法の見地からすれば当然の事項であり、既に中間取りまとめ(案)にも指摘されていますが、施策の具体的な決定に至るまで、リスク管理機関によるリスクコミュニケーションを徹底して実施する必要性を、改めて厚生労働省や農林水産省に強く要請してください。

 日本におけるBSE対策の状況について、改めて詳細な報告を厚労省、農水省に求め、データに基づいた十分なリスク評価を行ない、必要な安全対策を要請してください。

貴委員会プリオン専門調査会で検討された「日本における牛海綿状脳症(BSE)対策について-中間とりまとめ(案)-」では、ピッシング廃止や脊髄除去の必要性などが一定にうたわれてはいます。しかし、これまでの専門調査会の審議では、これらの実施状況の報告に基づいたリスク評価作業が十分に行われていません。厚生労働省や農林水産省に追加データの報告を求め、十分なデータに基づいて審議され、改善点を要請してください。

また、背根神経節を含む脊柱の食用規制が、欧州での規制やOIEの評価より2年近く遅れたことについては経過を検証し、今後の教訓として生かすよう、関係省庁に要請してください。

2.米国産牛肉と輸入牛関連食品の安全性確保について

 米国のBSE対策に関わるリスク評価を行なってください

この間のプリオン専門調査会での日本のBSE対策に関わるリスク評価が、米国産牛肉の輸入再開問題と結び付けられて報道されています。貴委員会プリオン専門調査会では、米国のBSE対策についての質問状を送付し、1回目の回答が極めて不十分な内容のため、質問状を再送したにも関わらず、再回答は未だ専門調査会に報告されていない状況にあると認識しています。また8月4日に行われた意見交換会では、専門調査会座長が米国のBSEリスク評価はデータが不十分で評価不能と発言されております。米国のBSE対策に関わるリスク評価が貴委員会で行なわれなければ、米国産牛肉の輸入再開は検討できないと考えます。米国政府と関係各省に米国のBSE対策に関わる情報の報告を求め、リスク評価を行なってください。リスク評価が曖昧なまま輸入再開に至らぬよう、貴委員会からも関係各省に要請してください。

また、BSEの「非発生国」であっても、過去英国や欧州、米国から肉骨粉を輸入し、SRM除去、サーベイランス検査や肉骨粉規制も行なわれていない国に関しては、BSEのリスクが懸念されるため、BSEリスクの評価を行なってください。

3.調査研究の促進について

 BSEの研究を進めてください

BSEに関しては科学的な知見の不足が、安全対策を遅らせ、消費者の不安にも繋がっていると考えられます。研究体制を拡充し、できるだけ早く必要な知見が得られるよう、関係各省に要請してください。これまでの感染実験の多くは投与動物の発症の組織検査を観察しているようですが、日本の優れた検査技術を活かし、投与動物におけるプリオンの蓄積を詳細に調べて、安全対策に寄与させるようにしてください。

  • 感染初期から中期の牛のプリオン蓄積分布の確認
  • OIEで特定危険部位に加えられた回腸についての感染性の確認
  • 鹿類のCWDのリスク評価(実態、原因、ヒトや他の動物への感染性など)
  • その他専門的見地から必要と思われる事項

4.リスクコミュニケーションの改善について

 施策に関するリスクコミュニケーションを進め、透明性の高い運用に努めてください

BSEをはじめとしたプリオン病については科学的に未解明のことが多く、リスク評価も困難性があると考えられますが、感染した場合の影響の重篤性や消費者の関心に鑑みて、できる限りの対策を行なうべきと考えます。特に施策の見直しにあたっては、このような状況を考慮しながらリスクコミュニケーションを丁寧に行うことをお願いいたします。

意見交換会等にあっては、説明や説得に終始することなく、消費者の声を聞く姿勢を持ち、また消費者の声がどのように反映されたかわかるような、透明性の高いリスクコミュニケーションに努めるようお願いいたします。

この間マスコミ報道の一部には、貴委員会の検討に関して全頭検査だけに突出し、検討内容全体が正確に報道されていない状況が認められます。この問題について、全ての関係者が冷静に判断できるようにするために、一部分の強調ではなく総合的な報道がなされるよう、さらにご努力をお願いいたします。