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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2004年08月27日

「JAS制度のあり方検討会中間取りまとめ」 に意見を提出しました

農林水産省は、「JAS制度の見直し」のため、2003年10月から「JAS制度のあり方検討会」(座長:沖谷 明紘・日本獣医畜産大学教授)において、現行制度の課題の整理と制度の将来像を検討してきました。今回「JAS制度のあり方検討会中間取りまとめ」がまとめられました。これを受けて同省では、8月31日を期限とするパブリックコメントを募集し、本年秋までに最終報告書を取りまとめる際に反映させるとのことです。

日本生協連(本部:渋谷区、小倉修悟会長)は、「1.行政による公的規制は、その時々の重点に絞った効率的な内容が求められます。2.JAS規格の内容は、時々の消費者の選択に重要な項目に大胆に変更すべきです。3.表示制度は総合的な商品情報提供の視点で将来的方向性提示の第一歩に」の3点を柱にした意見を提出しましたのでご案内します。

また、この委員会には、全国消団連(千代田区、神田敏子事務局長)から高野ひろみ事務局員と日本生協連(本部:渋谷区、小倉修悟会長)からは丹 啓二・テストキッチン・表示企画室長が委員として参加しています。

<提出した意見>

2004年8月26日

農林水産省 消費・安全局
表示・規格課企画調整係御中

JAS制度のあり方検討会中間取りまとめについて
 

日本生活協同組合連合会

今回のJAS制度のあり方検討は、ここ数年の食品事故・事件による消費者の信頼失墜、そして動きの激しい国際的環境変化といった、食をとりまく情勢に対応しようとの意図で開始されたと捉えています。この点からいうと検討の視点は、(1)信頼回復に貢献できる制度、(2)食の品質・規格等に対する国際的動向を踏また制度、(3)行政の肥大化を生まない行政改革の流れを踏まえた制度、という3点が重要と考えます。この視点から中間取りまとめについての当会の意見を申し述べます。

1.行政による公的規制は、その時々の重点に絞った効率的な内容が求められます

一般的に行政関与は、無制限に拡大できるものではありません。JAS制度のような公的規制は、到達点の中で役割を終えた課題、その時々に必要な課題を十分に分析し、優先順位を設定して効率的に実施すべきと考えます。今回の見直しでも、規格の見直しではっきり重点を設定し、終了するものは終了することが重要です。

2.JAS規格の内容は、その時々の消費者の選択に重要な項目に大胆に変更すべきです

既存のJAS規格の機能は次の4つといわれています。(1)品質の改善、(2)生産の合理化、(3)取引の単純化・公正化、(4)使用・消費の合理化。このうち消費者に関係の深い点は(1)(4)と考えています。既存消費者の商品選択時の判断視点を考えてみると、既存のJAS規格の品質に関する基準(品位、成分、性能等)は、ほとんど指標とはなっていません。これはJAS規格の貢献もあり、全体として基本品質が向上したことが要因と考えます。つまり当時は品質が標準的に良好なことが、消費者に安心して購入を促すものでしたが、現在はこの目的はほぼ達成し、消費者は特に重要と受け止めていないということです。

それに対し、現在の消費者の関心は、産地、品種、製法といった差別化情報であり、農薬や食品添加物といった化学物質等の食の安全に関する情報などです。そしてここ数年の事件・事故は、まさにこれらの点に関してのものであったため、一層信頼を失墜させたものと考えています。

今回の見直しでは、消費者の信頼回復が最重要な課題と考えます。それに貢献するには、ここ数年の国際的な食品事故・事件の対応で一定の成果をあげているマネジメントシステムとしての取組みや第三者認証制度(例:ISO9000やHACCP)等を積極的に国内規格に取り入れたり、生産履歴や流通履歴の制度化など安心を向上させる取組みを導入することが必要です。そしてこうした新しい課題を強化するためには、ほぼ役割を達成した従来の品質に関する基準(品位、成分、性能等)は大胆に廃止することが必要と考えます。

この点で今回の中間まとめは、既存の標準規格を今後は特に必要なもののみに限定して、その他は見直すとしています。今後の具体的な個別分野での実施にあたって、趣旨をあいまいにせず個別の規格をしっかり見直しを実施していくことが重要と考えます。

3.表示制度は総合的な商品情報提供の視点で将来的方向性提示の第一歩に

表示制度もここ数年の事件・事故で信頼が大きく失墜している分野です。この点では表示共同会議で順次実施されている「表示用語の統一」や「原料原産地表示制度の拡大」といった個別課題の統一的検討はひとつの前進と考えています。こうした検討の充実や監視体制の充実に加えて、今後はより分かりやすい制度とすることが、消費者にとっても事業者にとっても重要なことです。この面では品質表示基準をより品目横断的なルールに統合すると同時に公正取引委員会(景品表示法)などとの連携も一層深めるべきと考えます。

また商品に対する消費者の関心は、非常に多様でかつ個人個人で異なってきています。つまり今後は提供すべき商品情報は一層拡大する傾向であり、提供手段を商品表示のみに頼ることは非常に難しくなってくると考えます。こうした中で消費者の要望に応えるためには、広告媒体やHPなどの情報提供媒体、そして問合せ窓口など含めて総合的に情報提供を実施することが必要になります。

こうした方向を踏まえて、今後はJAS制度においても総合的な商品情報提供について検討することが必要と考えます。しかしこの点においても公的な規制で設定するものと、事業者の自主規制を求めるものを時々の優先順位で検討すべきです。また公的な規制にあたっては、情報提供媒体のそれぞれの特性を踏まえた規制となることが必要と考えます。