2004年08月05日
家畜の薬剤耐性菌の健康影響評価指針(案)へ意見を提出
内閣府食品安全委員会(本部:中央区、寺田雅昭委員長)は、2004年6月23日の食品安全委員会動物用医薬品(第13回)・肥料・飼料等(第9回)合同専門調査会(薬剤耐性菌に関するWG)において作成された「家畜への抗菌性物質の使用により選択される薬剤耐性菌の食品健康影響に関する評価指針(案)」への意見を広く募集しました。
これに対して、日本生協連(本部:渋谷区、小倉修悟会長)では、「なぜ本指針が必要であるかの点を強調すべきである。また、耐性菌は動物、人、ペット動物、食品、栽培漁業、農業、水、環境など非常に広い分野からのアプローチが必要であるにもかかわらず、今回の指針は家畜への抗菌剤使用に限定的な内容となっている。したがって、あらゆる分野にわたる耐性菌問題の取り組みの計画案を策定し、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省、環境省等横断的かつ緊急的テーマとして取り組みが必要と考える。」という主旨の意見を提出いたしましたので、ご案内します。
なお、8月2日に開催された「食品に関するリスクコミュニケーション(東京)~薬剤耐性菌の食品健康影響評価指針案に関する意見交換会~」において、日本生協連も出席し、今回の主旨の意見陳述を行いましたので、あわせて報告します。
<以下提出した意見>
2004年8月4日 内閣府食品安全委員会 家畜への抗菌性物質の使用により選択される薬剤耐性菌の食品健康影響に関する 日本生活協同組合連合会 平成16年6月23日に開催された食品安全委員会動物用医薬品(第13回)・肥料・飼料等(第9回)合同専門調査会(薬剤耐性菌に関するWG)において、「家畜への抗菌性物質の使用により選択される薬剤耐性菌の食品健康影響に関する評価指針(案)」が作成された件で、意見・質問を述べさせていただきます。 記 1.抗菌剤耐性菌問題は多くの専門分野にわたる(multidisciplinary)動きが必要となる。 耐性菌は動物、人、ペット動物、食品、栽培漁業、農業、水、環境など非常に広い分野からのアプローチが必要である。国際的にはFAO、OIE、WHOが共同でワークションプを開催し、今後の活動分野や課題について議論している点は容易に理解できることである。一方、今回の指針は家畜への抗菌剤使用といった極めて限定的な領域である。したがって、日本政府としてあらゆる分野にわたる耐性菌問題の取り組みの計画案を策定し、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省、環境省等横断的かつ緊急的テーマとして取り組みが必要と考える。
今回の指針は家畜等への抗菌性飼料添加物が公衆影響に与えるリスクアセスメントの領域である。しかし、耐性菌問題はリスクアセスメントだけで完結するものではない。OIE抗菌剤耐性ガイドラインの中にも、リスクアナリシスの方法論の他に、獣医療における抗菌剤の責任ある慎重なる使用、畜産に使用する抗菌剤量のモニタリング、抗菌剤耐性の検出と定量化のための検査法の基準化と調和、動物及び動物由来食品の各国の抗菌剤耐性のモニタリング/サーベイランスプログラムの調和が記述されている。したがって、本指針とリスクマネジメント機関である厚生労働省及び農水省の役割を明確にすることや包括的な取り組み、あわせてリスクコミュニケーションを実施されること要望する。 3.総則に本指針の目的を明確に記述すべきである。 総則には耐性菌問題に対する国際機関や海外の状況について記述されている。しかし、本指針の目的、特に耐性菌出現問題の重要性や日本国内の現状について分析されていない。なぜ本指針が必要であるかの点を強調すべきであると考える。 4.OIEのガイドラインを採用することを決定した経緯・プロセスはどのようなものであったのか。 薬剤耐性菌に関するWGはOIEガイドラインの他に、VICH,emeA、オーストラリア、カナダ、アメリカなどのガイドラインを参照している。その中で特に米国の指針(Guidance for Industry #152)を採用した理由及び評価はどのようなものであったのかを知りたい。 あわせて、米国のガイダンス152は基本的に申請者(メーカー等のスポンサー)がリスクアセスメントを行うことであるのに対して、今回の指針案では食品安全委員会がアセスメントを行うことになっている。この点についても違いを教えて頂きたい。
抗菌剤耐性は、ヒトと動物に対する抗菌剤使用およびその結果生じる抗菌剤耐性の発生と拡散によって影響を受ける世界規模の公衆衛生問題である。国際的な学際的協力が極めて重要であり、それゆえ1997年以降WHO、FAOおよびOIEは、フードチェーンの様々な段階における抗菌剤使用に関係する問題、耐性病原体の出現および関係するヒトの公衆衛生問題を取り扱うために数多くの会議を開催した。これらの取り組みを受けて2003年12月にはFAO/OIE/WHO抗菌剤のヒト以外への使用および抗菌剤耐性:科学的アセスメントに関するFAO/OIE/WHO合同専門家ワークショプを開催した。これらの結果・勧告を参照した項目はどこであるのか。また、本指針に具体化したのかをお尋ねしたい。 また、ジュネーブで2003年12月に開催されたリスクアセスメントに関するFAO/OIE/WHOワークショップの勧告を遵守することを要望する。 6. 国内におけるモニタリング・サーベイランスの必要性 4の項目で記載したワークションプの勧告に強調されているように、各国政府は抗菌剤のヒト以外への使用に関する国内サーベイランスプログラムを確立すべきであるとされている。既にスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、カナダ、米国等ではヒトおよび動物両方の領域における抗菌性物質の使用量と耐性菌の出現に関するモニタリング・サーベイランス等を実施している。日本国内でも共同プロジェクトとして早急にモニタリング・サーベイランスの実施に移す必要がある。 7.指針の見直しはフレキシブルに対応していただきたい。 米国では、公示してから1年以上かけて案に対してコメントを求めて指針を作成し、今後もコメントを求め更に充実しようとしている。また、現在コーデックス委員会やOIEで耐性菌問題のタスクフォース等の開催を含め、日々発展・進化している。したがって、本指針の改訂見直しは常に必要であり、国際的議論に遅れることなく、機敏に対応すべきであると考える。 |