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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2004年01月16日

公益通報者保護制度に関する パブリックコメントを提出しました

日本生協連(本部:渋谷区、小倉修悟会長)は、この間、消費者保護基本法改正や消費者政策関連の取組みを全国の生協、全国消費者団体連絡会(本部:千代田区、神田敏子事務局長)およびその参加団体とともに進めています。

現在、内閣府が募集中の「公益通報者保護法案(仮称)の骨子 (案)」に対する日本生協連としてのパブリックコメントを提出しましたのでご案内します。

2004年1月16日

内閣府 国民生活局
消費者調整課 御中

「公益通報者保護法案(仮称)の骨子(案)」に関する意見

日本生活協同組合連合会
常務理事 田中 哲男

昨年12月11日付の意見募集に基づき、実効性ある公益通報者保護法の制定を求める立場から、下記の意見を提出いたします。

〈 意 見 〉 

公益通報者保護制度については、「内部告発」「密告」を奨励することになるのではないかといった理由から、制度導入に対する反対論も根強く存在する。しかし、この間の企業や行政の不祥事のほとんどが関係者からの通報によって明らかにされているという事実が示すように、組織内部で行われる不正を糾す上で関係者からの通報が重要な意味を持っている。公正な行政運営や事業者のコンプライアンス経営を促進し、もって社会的利益を擁護する見地から、公益通報者を保護する制度の導入は必要不可欠である。

制度設計においては、通報の対象や保護の要件等に関して、通報者の保護を確保し、公益のために意義ある通報を萎縮させることのないような制度とする必要がある。現在、内部告発者に対する報復的解雇などの不利益取扱いについては、解雇権濫用等の一般法理により救済が図られているが、本制度の対象とならない内部告発については、引き続き同法理が適用される旨を明確にした上で、本制度を導入する必要がある。その上で、以下当職として特に重要と考える事項について個別に意見を述べることとする。

1.通報の対象について

骨子(案)では通報の対象について「犯罪行為等」とし、直接あるいは間接に刑罰で実効性が担保されている場合の法令違反に対象を限定している。しかし、この間の企業・行政の不祥事には、刑罰規定のない規制違反行為など、こうした限定ではカバーしきれないケースも見受けられる。また、検討過程においては「規制違反や刑法犯などの法令違反」という表現がなされていたのに対し、今回の骨子(案)では「犯罪行為等」と表現が改められているが、この表現は対象が狭い印象を与え、通報者に対して萎縮効果をもたらすことが懸念される。こうしたことから、公益通報者保護制度については、全ての法令違反行為等を対象とする包括的な制度とし、社会全体のモラルや遵法意識の向上を促すものとすべきである。

2.外部通報要件について

公正な行政運営や事業者のコンプライアンス経営を促進する観点からも、外部通報の要件を著しく厳格にすることによって、公益のために意義ある通報を萎縮させることのないような制度とする必要がある。骨子(案)ではイ~ホの要件が設定されているが、労務提供先との情報力格差がある中で、通報者にとっての立証は極めて困難である。国民にとってわかりやすい制度設計という観点からも、イ~ホの要件は削除し一般的規定のみとするか、立証責任の転換を図るなど、通報を萎縮させないような工夫を図るべきである。

3.各組織の自主的な取組みへの評価を反映できる措置

各事業者においては、既に自主行動基準の策定やヘルプラインの設置など、コンプライアンス経営の確立に向けた取組みも見られる。何らかの不正行為が行われた場合でも、組織としての真摯な取組みにも関わらず偶発的に起きてしまったのか、取組みがない中である意味では必然的に起きたのか、組織ぐるみで行われたのかなど、ケースによってその評価には違いがあって然るべきである。そうした意味では、アメリカにおける連邦量刑ガイドラインや現在公正取引委員会において検討されているリーニエンシー制度(措置減免制度)などを参考としつつ、各組織の自主的な取組みを評価に反映できるような制度設計を行うことが必要である。これによって、各組織の自主的な取組みへのインセンティブを高めることができるものと考えられる。