2003年05月20日
日生協「動物用医薬品残留基準設定」に意見を提出
日本生協連(本部:渋谷区、竹本成徳会長)は、厚生労働省が5月20日締め切りで募集中の「畜産食品に係る動物用医薬品の残留基準設定についての意見」に対して、以下の意見を提出いたしましたのでご案内します。今回の意見募集は「動物用医薬品3品目(サラフロキサシン、ジヒドロストレピトマイシン/ストレプトマイシン、ダノフラキサシン)についての残留基準値(MRLs)の設定と動物用医薬品カルバドックスの残留基準値の変更」を対象にしたものです。
2003年5月19日
厚生労働省医薬局食品保健部
畜産食品に係る動物用医薬品の残留基準設定についての意見
日本生活協同組合連合会
動物用医薬品3品目(サラフロキサシン、ジヒドロストレピトマイシン/ストレプトマイシン、ダノフラキサシン)についての残留基準値(MRLs)の設定及び動物用医薬品カルバドックスの残留基準値の変更が示されました件で、意見・質問を述べさせていただきます。 記 1. 動物用医薬品の残留基準値設定について (1) サラフロキサシン サラフロキサシンのMRLsには残留マーカーとして未変化体が用いられている。しかし、鶏、七面鳥等の家禽類の可食部には未変化体とともにその抱合体も多く、特に七面鳥の肝臓では残留物の約50%が抱合体という報告がある。抱合体は人の消化管内で切断され親化合物に復帰する可能性がある。したがって、サラフロキサシンの動物用医薬品としての使用は残留濃度測定法に抱合体の抱合鎖切断操作を含めることを絶対条件とすべきである。 (2) ジヒドロストレプトマイシン/ストレプトマイシン ジヒドロストレプトマイシン/ストレプトマイシンで問題となるのは聴覚毒性である。人に対して15mg/kg体重/日、7日間の投与において前庭機能障害が報告されている。食用動物に本剤を使用した場合、動物体内での残留はほとんどない。しかし、食用動物に微量残留し、その食品を毎日食べ続けた際、人の聴覚機能への影響が懸念される。特に腎障害がある人の場合、聴覚障害の原因となるため本剤の使用は推奨されていない。 毒性合同部会では、ジヒドロストレプトマイシン/ストレプトマイシンを含有するミルクを消費する乳児における潜在的リスクを合同部会ではどのように考慮されたか、特にミルク中のMRLs0.2ppm設定における新生児に対するリスクはどのように評価されたか明らかにされたい。 2. 動物用医薬品の残留基準改正について(カルバドックスの取扱い) 今回の改正は必要な措置である。カルバドックスは発がん物質であり、本来食用動物に使用すべきものではないと考える(EUやオーストラリアでは使用禁止)。 今回の改正案は最終代謝物キノキサリン-2-カルボン酸として豚肉、豚肝臓から『不検出』とされた。一方、平成9年3月(旧基準)で設定された残留基準値は豚筋肉5ppb、豚肝臓30ppbといったHPLC-UVを用いた分析法の検出限界が採用されていた。基準値の改正案は豚肉から『不検出』とするより『定量限界以下』もしくは『法律上履行すべき基準値(Minimums required performance limits)』等という適切な用語に修正すべきであると考える。 当該物質を使用した食肉等が販売・流通(輸入食肉を含む)しない様、規制当局の厳しい取り締まり、モニタリング等の強化及び分析法の開発を要望する。 カルバドックスは獣医師の処方・指示のもとで動物用医薬品として使用できる。この物質の使用は生産者及びこれを取り扱う業者(畜産関係者)がこの発癌物質に暴露されることは必至で(使用者が発がん物質を使用している認識はない)、遺伝毒性による発がんや催奇形性などの人的被害が問題となる。したがって厚生労働省から農林水産省に対して本剤が発がん物質であり食品中への残留問題の懸念があること、並びにカルバッドクスに直接暴露する生産者の安全性確保等の理由から、使用禁止措置を取るように勧告されたい。 3. 残留基準値設定と分析法について 個別の動物用医薬品のリスクアセンメントを行い、その結果MRLs設定する際には、確率した分析法(定量限界を含む)を添付することを必須条件とすることを要望する。 動物用医薬品を使用する限りは、その動物を素材とする食品に当該物質が全く含まれていないことはありえない。食品衛生法での抗菌性物質は「含まれない」、「ゼロである」という規制は分析方法にのみ依存した規制であり、ある検査方法で残留濃度の測定を試みた結果、「検出できなかった」ということに過ぎない。「検出できるか、できないか」というのは技術的な問題であり、測定方法が高度になれば、ついには当該物質の存在を証明できるようになるものである。したがって、動物用医薬品に残留基準値を設定する際には、最新の確立した分析方法を通知すべきである。なお、コーデックス残留動物用医薬品部会では分析法が確立するまでは、MRLsのステップが進まないことになっている。 |