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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2003年02月27日

日本生協連「食品安全基本法案」と 「食品衛生法改正法案」への見解まとめる

日本生協連(本部:渋谷区、竹本成徳会長)では、「食品安全基本法案」と「食品衛生法改正法案」が、今国会へ上程されたのを受けて、日本生協連として基本的な見解をまとめましたので、ご案内します。

また、それぞれの法案のポイントを参考につけましたのでご参照ください。

注:食品衛生法改正案は「食品衛生法等の一部を改正する法律・案」の略です。

文中で厚生労働省を厚労省、農業水産省を農水省と略記しています。
 

 

食品安全基本法案・食品衛生法改正法案等への基本見解
 

2003年2月
日本生活協同組合連合会
 

私たちは足かけ5年間にわたり、今日的な食品安全の社会システムを求めて食品生衛法の抜本改正の運動を展開し、大きな世論をつくり上げてきました。その後のBSEの国内発生や、偽装表示、無認可添加物等の問題が表面化するなかで、食品安全のための包括的な法律である食品安全基本法の制定や食品安全委員会設置等も含む運動として前進してきました。

こうした運動を背景に、今通常国会に上程された食品安全基本法案、食品衛生法改正案では、「国民の健康保護」や「食品の安全性確保」が明記されるとともに、そのための国・都道府県等の行政の責務やリスク分析手法の導入が明記され、縦割り行政を是正することをめざして食品安全委員会が設置されるなど、日本の食品安全に係る法制度の大きな転換につながるものとなりました。

今後は、政省令や各種行政措置等を通じて、運用のなかでどこまで実効性を確保できるものとなるかが課題になります。

(1)食品安全基本法案について

基本理念として、「食品の安全性の確保」が「国民の健康が保護されることが最も重要であるという基本認識」の下に行われなければならないこと、食品の安全性の確保のための措置が生産から販売までの一連の食品供給行程の各段階で適切に講じられて行われなければならないこと、食品の安全性の確保に必要な措置が国民の意見に十分配慮し科学的知見にもとづいて国民の健康への悪影響の未然防止を旨として行わなければならないこと、が定められることとなりました。また、基本理念に基づく国・地方公共団体の施策の総合的な策定・実施責務が規定されるとともに、「施策の策定に係る基本的な方針」において、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションの個別の実施規定が明示されました。

食品安全委員会が設置され、厚労省や農水省などのリスク管理機関から独立してリスク評価を行うとともに、政府が食品安全施策に係る基本的事項を決定する際には内閣総理大臣が委員会に意見を聴かなければならないという義務や、関係省庁が規格・基準を定める際等には委員会に意見を聴かなければならないという義務が規定されました。また、委員会のリスク評価結果等に基づく関係省庁への勧告・監視、及びその公表と勧告を受けた関係各大臣の委員会への報告義務を定めたこと等、リスク管理への監視・諮問・調整機能が規定されたことも含め、当初想定した以上に委員会の機能・権限が幅広く規定されました。

これらは、この間の生協の主張にも沿い、日本の食品安全行政の大きな前進につながり得るものであり、今国会で実現をはかることが必要です。

一方、私たち消費者が求めてきた消費者参加の具体的な手立ては法文には明示されていません。消費者の参加は、食品安全委員会だけでなく、リスク管理機関における消費者参加の問題にも係ります。また、この間、食品安全委員会準備室が意見交換会の場等で表明してきた、企画・リスクコミュニヶーション等の安全委員会の下の専門調査会への消費者参加や委員会の公開をどう実現するのかなど、今後の運用のなかで明らかにすることが必要です。

「消費者の権利」の規定については、現在、国民生活審議会で、「21世紀型の消費者政策のあり方」が議論されている途上にあり、継続して追求して行く必要があります。

食品表示に係る原則事項の規定やコーデックス委員会のコンタクトポイントの移管、公聴会の制度等も今後の運用のなかで整備して行くことが大切です。

これらについて、食品安全基本法がより実効性あるものとなるように、今後定められる政省令や運用の具体的考え方も含め、今国会の審議で明らかにされることが必要です。

(2)食品衛生法改正法案について

目的規定が抜本的に改正されて「食品の安全性の確保のために」「国民の健康保護をはかることを目的とする」となる他、これまでの行政の裁量権のみを規定した法律から転換し、国・都道府県等・事業者の責務が規定されました。残留農薬・動物用医薬品・飼料添加物をポジティブリスト制に転換すること、既存添加物のリスク評価を進め安全性に問題のあるもの等を既存添加物名簿から削除することが規定されました。

新たに「国民等の意見の聴取」の規定を独立して設け、規格・基準の設定等の際には「必要な事項を公表し広く国民の意見を求めるものとする」ことが規定されました。また、国は監視指導指針と年次での輸入監視指導計画を、都道府県等は国の指針に基づく年次での監視指導計画を、各々策定し実施の状況も含めて公表するとともに、それらの策定・変更の際には広く国民・住民の意見を求めなければならない旨も規定されました。

これらは、この間の生協の主張を大幅に採り入れたものであり、今国会で法案を成立させることが必要です。

なお、審議会への消費者の参画や公聴会制度、表示規定のあり方等については、食品安全基本法での論議ともあわせ、今後の国会審議のなかでさらに論議が必要です。また、リスクコミュニケーションの仕組みや農薬等のポジティブリスト化に向けた残留基準設定の手順、既存添加物の安全性評価の手順やスケジュール、国の監視指導指針や年次計画の策定・見直し等について、その内容や消費者の参加・意見反映の仕組みも含め、さらに具体的に明らかにされることが必要です。国・地方での監視等に係る体制整備や予算の確保をどうして行くのかも今後の課題です。

これらについて、国会論議の場で明らかにし運用を充実させて行くことが必要です。

(3)その他の法改正について

農薬取締法や飼料安全法、と畜場法等のその他の食品安全に係る法律も改正されることとなりました。厚労省が管轄すると畜場法や食鳥処理法の改正では、法目的を「国民の健康保護を図る」旨に改正するとともに国・都道府県等の責務を規定することとなりました。農水省が管轄する農薬取締法や肥料取締法、飼料安全法等の生産資材に係る法改正では、安全性の確保や使用現場での使用の適正化、厚労省との連携強化などが盛込まれて改正されることとなりました。

生産資材に係る法改正では、特に残留農薬等のポジティブリスト制への転換に伴う登録基準や登録と同時に残留基準設定が行われるようにするための厚労・農水省の連携や法規定の明確化が必要です。あわせて、登録失効農薬や非農耕地用農薬等でのこの間の生協の主張を実現して行くこと、農業生産の現場での生産資材の使用基準の遵守などの管理強化も必要になります。新たに規定される「特定農薬」制度については、安全性が確保されるとともに、有機農法などの生産者の努力が評価されるものとして行くことも必要です。

以上の点を踏まえ、これらの法改正についても、より実効性が確保できるようにして行くために国会での審議が必要です。

以上