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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2003年02月05日

日生協「環境配慮」に関して意見表明

日本生協連(本部:渋谷区、竹本成徳会長)の田中尚四副会長は、国民生活審議会委員をつとめていますが、2月3日に開催された内閣府・国民生活審議会消費者政策部会において、「消費者教育」と「消費者政策における環境配慮」のテーマが検討されましたので、日本生協連として「消費者政策における環境配慮」に関して以下の意見を提出しました。


2003年2月3日

消費者政策における環境対応の在り方に関する意見
 

日本生活協同組合連合会
副会長 田中尚四
 

1.消費者政策における環境対応の在り方に関する基本的考え方

環境問題の中心課題が、公害問題から都市・生活型の環境問題や地球環境問題へと移行していく中で、消費者の果たす役割が重要になっている。「持続可能な社会」の実現に向けて、消費者自らが省資源・省エネ、リサイクルの推進など、環境に配慮したライフスタイル=「持続可能な消費」(国連「持続可能な消費政策のガイドライン」1999年)を創りあげていくことが求められている。世界的にもグリーンコンシューマーの取り組みは、消費者運動の中で大きな柱となっており、環境保全の視点を市場における消費者の在り方の中に適切に位置づけて消費者政策にとりいれていくことが望まれる。

消費者政策には、環境政策との連携をはかりながら、消費者にとって持続可能な消費生活を営むことのできるようにするための条件整備をはかっていくことが求められる。具体的には、商品・サービス及び事業者の環境に関わる情報を消費者に適切に提供・公開していくことをはじめとして、消費者が環境に配慮した選択を現実に可能とするような市場を創っていく必要がある。

とくに、環境問題は典型的な市場の外部不経済としての特徴を有していることから、消費者が市場において環境に配慮した選択を可能とするためには、政府による環境保全のための経済的手法の導入が不可欠である。いくら環境によい商品であっても、価格が高ければ多くの消費者の支持を得ることはできない。日本生協連が、かつて経済企画庁より「平成10年度消費者意識調査」として委託を受けた「環境問題と消費生活に関する意識調査」においても、再生紙ティシュと純パルプティシュの価格と購買選択の関係から、環境問題に関する意識と行動のギャップを生む要因として「価格」の問題が大きいことが明らかになっている。

また、事業者の側でも、環境に負荷を与えても経済的不利益が生ぜず、逆に環境対策には高いコスト負担がかかる現実をそのまま放置すれば、環境に配慮した事業者ほど市場において不利な状況に追いこまれていく。この矛盾は、生協自らが、この間のリサイクル活動やレジ袋の有料化など、様々な取り組みの中で経験していることである。従って、消費者にとっても、事業者にとっても、外部不経済を克服するために、「汚染者負担の原則(PPP)」にそって、環境保全の視点を経済社会システムに組み込むための経済的手法の導入が不可欠といえる。

市場において環境に配慮した選択がなされるようにしていくためには、消費者自身への環境教育と適切な情報提供・情報公開とともに、消費者にとって現実の選択にあたって経済的インセンティブが働くようにすることが必要である。

2.具体的施策に関する検討事項

(1)消費者への適切な情報提供、情報公開

消費者が、環境配慮の視点を持って商品・サービスの選択をできるようにしていくためには、商品・サービスの環境に係る情報が適切に消費者に提供されなければならない。環境によりよい商品・サービスについては、そのことが正確にわかりやすく消費者に伝わるように、マークの活用などを含めて、適切な情報提供がなされるようにしていくことが求められる。逆に、商品が消費や廃棄の際に大きな環境負荷を与える可能性がある場合には、情報公開を義務づけて、そのことが消費者に伝わるようにしていく必要がある。また、家電製品の電力消費量比較のように、商品・サービス間の環境負荷に関する比較情報を第三者が提供することによって、消費者が選択する際に参考にできるようにしていくことも望まれる。

さらに、商品・サービスを提供している事業者自身の環境対応についても、適切な情報公開のあり方を検討していく必要がある。事業者の環境保全の取り組みについては誇大や誇張のないような正しい情報提供のあり方が求められるとともに、逆に環境負荷に関する情報についてもあわせて公開を義務づけていくことが望まれる。

(2)消費者教育としての環境教育の推進

環境教育を単なる理念教育や知識の注入に留めることなく、現実のくらしの中で活きたものとしていくためには、環境教育を消費者教育の視点を持って取り組むことが大切である。近年、環境教育が学校教育の中に積極的に採りいれられるようになったが、環境教育が環境に配慮したライフスタイルの形成や環境を意識した買い物行動に結びつくように消費者の視点を持って展開される必要があり、「総合学習」などで活用できるような実践事例やツールを豊富にし、普及していくことが望まれる。生協においても、牛乳パックや空き缶、トレイ、ペットボトルなどリサイクル活動や環境に配慮した商品の普及活動はもとより、環境保全型のライフスタイルへの転換をめざす「エコライフガイドブック」や「エコファミリー」の活動、地域の大気や河川の状況を自ら調べる環境測定活動や自然観察活動、さらに最近では「家庭におけるエネルギー消費に関するモニタリング調査」など、様々な活動を進めているが、消費者運動の中でも、広範な消費者が参加できる活動やくらしに根ざした科学的・実証的な取り組みをさらに広げていく必要がある。

(3)消費者の選択を可能とする市場の創造

消費者が環境保全に対する意識を高めても、実際の市場において選択可能な商品が存在しなかったり、選択できる条件がない場合には、持続可能な消費生活を営むことはできない。そうした意味では、何よりも市場において環境によりよい商品・サービスが一般に購入可能な価格で供給されなければならず、そのための技術革新とコストダウンが強く求められる。とくに、消費生活に係って環境負荷のもっとも大きなウエイトを占める乗用車については低公害車の開発・普及が急がれる。また、電気などの家庭用エネルギー消費の削減にあたっては、省エネ製品の普及とともに、より安価なソーラーシステムや燃料電池など新エネルギーの開発・普及が求められる。さらに先頃、経済産業省の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会において電力の自由化の方向性が打ち出されたが、家庭におけるエネルギー選択の可能性を広げていくためにも、条件整備をはかりつつ電力会社や発電源を消費者自身が自由に選択できるシステムへの転換をできるだけ早くはかっていくことが望まれる。