2002年12月13日
農作物等に含まれるカドミウムについて
2002年12月13日
日本生活協同組合連合会
12月2日、農水省から「農作物等に含まれるカドミウムの実態調査結果の提出について」というプレスリリースが出されました。現在CODEX委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)に食品中のカドミウムに関して規格草案提案が提出されて検討中ですが、農水省の調査はCODEX委員会への報告のために行われたもので、規格案を上回る数値がいくつかの作物で出ています。
日本生協連では、この問題は消費者の健康を守る上で大変重要な問題と考えますが、生協独自でカドミウム対策を進めることは困難なので、より広範な実態調査、カドミウムの摂取及び毒性に関する調査研究、米及び農作物のカドミウム規格の見直し、汚染地域の対策、汚染拡大防止対策などを行政に要請していく考えです。
消費者の皆さんには、以下のような対応をお勧めします。
(1)食品中のカドミウムは安全とは言えません
私たち日本人が摂取しているカドミウムは食品由来を中心に一人一日平均30μg/日から50μg/日程度と推定されており、WHOが設定している暫定耐容摂取量(7μg/kg体重/週──体重50kgとして50μg/日になる)ぎりぎりの摂取量です。現時点ではただちに健康被害が出るとは言えませんが、安心できる状態とは言えません。
食品から摂取されるカドミウムの約半分は米からのもので、私たち消費者の努力では食品からのカドミウムの摂取を減らすことは難しく、国の対策が必要と考えます。
(2)豆類や野菜についての心配はいりません
新聞で「農水産物12品目が国際規格案超す」などと大豆をはじめとした農産物などが国際規格案を超えていたことが報じられましたが、豆類や野菜などから摂取されるカドミウムは相対的に少ないので、心配する必要はないと考えます。
米については検査が行なわれており、0.4μg/gを超える場合は食糧庁が買い上げて工業用等に使われますので、流通している米は基本的には0.4μg/g以下のものです。カドミウム対策は必要ですが、現時点でも米を他の主食に変えなければならない状況にはないと考えます。
(3)カルシウムや鉄などのミネラルを十分摂りましょう
カルシウムや鉄などのミネラルが不足していると、カドミウムの毒性が出やすくなります。バランスのよい食事を摂って、カルシウムや鉄などのミネラルが不足しないようにしましょう。(ただしカルシウムや鉄も摂りすぎると過剰症が出ます)
(4)魚介類は内臓を除いて食べましょう
魚介類では肝臓などの内臓に比較的多くカドミウムが蓄積しています。魚介類から摂取されるカドミウムは米と比較すると少ないですが、減らすに越したことはありませんから、魚類も貝類、イカなども、内臓を取り除いて召し上がることをお勧めします。
(5)煙草をやめましょう
喫煙をすると、食品から摂取するカドミウムと同じくらいのカドミウムを吸収すると推定されています。煙草に含まれる有害物質はカドミウム以外にも多数知られていますが、カドミウム摂取を減らすためにも、煙草をやめましょう。
(6)分別処理を徹底しましょう
ニカド電池を使った家電製品などを捨てる場合には、自治体の分別区分にしたがって「有害ごみ」等の収集に出しましょう。燃えるごみや埋立てごみに混じると環境を汚染するおそれがあります。
農作物等に含まれるカドミウムの実態調査結果
(超過率はCODEX規格草案提案を超過した試料数の割合、-は規格案なし)
試料数 | 規格草案提案(μg/g) | 超過率(%) | 最大値(μg/g) | 試料数 | 規格草案提案(μg/g) | 超過率(%) | 最大値(μg/g) | ||||
穀類 | 玄米 | 37250 | 0.2(精米) | 3.3※ | 1.2※ | その他の野菜 | さやいんげん | 21 | 0.05 | 0 | <0.01 |
小麦 | 381 | 0.2 | 3.1 | 0.47 | 未成熟空豆 | 19 | 0 | 0.01 | |||
その他穀類 | 65 | 0.1(既存) | 0 | 0.06 | グリーンピース | 14 | 0 | 0.05 | |||
豆類 | 大豆 | 462 | 0.2 | 16.7 | 0.66 | なす | 290 | 7.6 | 0.17 | ||
その他豆類 | 14 | 0.1(既存) | 0 | 0.03 | ピーマン、ししとう | 130 | 0 | 0.04 | |||
葉菜 | ほうれんそう | 329 | 0.2 | 3.0 | 0.49 | オクラ | 136 | 25 | 0.22 | ||
キャベツ | 101 | 0 | 0.011 | きゅうり | 81 | 0 | 0.02 | ||||
白菜 | 106 | 0 | 0.056 | かぼちゃ | 23 | 0 | 0.011 | ||||
チンゲンサイ | 23 | 0 | 0.04 | すいか | 34 | 0 | <0.01 | ||||
その他アブラナ科葉菜 | 49 | 0 | 0.09 | メロン | 23 | 0 | 0.02 | ||||
しゅんぎく | 39 | 0 | 0.12 | ブロッコリー | 32 | 0 | 0.04 | ||||
レタス | 88 | 0 | 0.08 | カリフラワー | 20 | 0 | 0.04 | ||||
みつば | 18 | 0 | 0.02 | スイートコーン | 29 | 0 | 0.03 | ||||
セルリー | 24 | 0 | 0.08 | いちご | 50 | 0 | 0.04 | ||||
ふき | 30 | 0 | 0.07 | トマト | 130 | - | - | 0.05 | |||
ねぎ | 112 | 0 | 0.16 | 果実 | なし、その他の果実 | 242 | 0.05 | 0 | <0.01 | ||
にら | 22 | 0 | 0.16 | ツリーナッツ類 | くり | 4 | - | - | 0.02 | ||
たまねぎ | 103 | 0 | 0.07 | 肉類 | 牛肉 | 116 | 0.05 | 0 | 0.05 | ||
ゆりね | 23 | 0 | 0.17 | 豚肉 | 121 | 1.7 | 0.07 | ||||
にんにく | 95 | 0 | 0.2 | 鶏肉 | 26 | 0 | 0.03 | ||||
根菜・茎菜 | 馬鈴薯 | 63 | 0.1 | 0 | 0.06 | 馬肉 | 7 | 0.2 | 0 | 0.03 | |
甘藷 | 71 | 0 | 0.012 | 軟体動物 | アワビ | 15 | 1.0 | 0 | 0.07 | ||
さといも | 217 | 11.1 | 0.33 | アカガイ | 349 | 0 | 0.68 | ||||
やまのいも | 68 | 1.5 | 0.18 | ホタテ(貝柱) | 57 | 0 | 0.51 | ||||
ごぼう | 123 | 5.7 | 0.23 | コウイカ | 15 | 0 | 0.01 | ||||
人参 | 165 | 1.5 | 0.16 | マガキ | 45 | 0 | 0.68 | ||||
大根 | 101 | 0 | 0.05 | サザエ | 15 | 0 | 0.1 | ||||
れんこん | 20 | 0 | 0.02 | シジミ | 64 | 0 | 0.77 | ||||
しょうが | 25 | 0 | 0.04 | ハマグリ | 48 | 0 | 0.14 | ||||
空芯菜 | 2 | 0 | 0.031 | アサリ | 51 | 0 | 0.17 | ||||
アスパラガス | 40 | 0 | 0.08 | イイダコ | 3 | 0 | 0.05 | ||||
その他の野菜 | えだまめ | 24 | 0.05 | 0 | 0.05 | マダコ | 24 | 0 | 0.07 | ||
さやえんどう | 22 | 0 | 0.02 | スルメイカ | 56 | 5.4 | 1.3 |
※米は出荷前の農家倉庫からサンプリングされ、食品衛生法規格基準(1μg/g)を超えるものが1点、食糧庁流通基準(0.4μg/g)を超えるものが94点(全体の0.25%)見つかったが、出荷しない措置が取られた。
食品群別のカドミウム摂取量(厚生科学研究 1981-2001の平均)
摂取量(μg/day) | 寄与率(%) | |
米 | 15 | 50 |
雑穀、いも | 2.6 | 8.7 |
砂糖、菓子 | 0.38 | 1.3 |
油脂 | 0.03 | 0.1 |
豆、豆加工品 | 1.1 | 3.7 |
果実 | 0.7 | 2.3 |
有色野菜 | 1.7 | 5.7 |
野菜、海藻 | 4.6 | 15 |
嗜好品 | 0.6 | 2.0 |
魚介類 | 3.3 | 11 |
肉、卵 | 0.33 | 1.1 |
乳、乳製品 | 0.13 | 0.43 |
加工食品 | 0.14 | 0.47 |
飲料水 | 0.02 | 0.07 |
※寄与率は食品からの摂取量に対する割合