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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2002年08月22日

日本ハムの牛肉偽装問題と農水行政への見解

日本ハムの牛肉偽装問題と農水行政への見解
 

2002年8月22日
日本生活協同組合連合会
 

日本ハム(株)の100%子会社である「日本フード」を舞台にして、BSE対策の一環である「牛肉在庫緊急保管対策事業」(牛肉買取事業)を悪用した牛肉偽装が明らかになった。8月14日には農水省の調査報告が発表され、20日には日本ハム自身による調査報告と役員の責任が公表された。しかしなお、業界全体に及ぶ事態の真相が明らかになったとは言えず、役員の処分も国民の納得を得られるものにはなっていない。

日本ハムはもとより、食肉業界全体が事実関係を国民から隠蔽し、企業利益の擁護のみに狂奔したと見られること、農水省がそれを許容する施策を運用し、今なおそれを根本的に改めようとしてはいないことに、強く憤りを感じるものである。業界と行政とをあげてこのことを深く反省し、国民の信頼回復にまい進するよう強く求めるものである。

(1)日本ハムが食肉業界において文字通りリーディングカンパニーの位置にあり、食肉の生産から末端流通に到る全過程で圧倒的な影響力を有していることは、自他ともに認めるところである。その日本ハムは雪印食品の偽装事件をきっかけに自主検査が行われた2月時点で、子会社において輸入牛肉を国産と偽って買い取り事業を悪用していた事実を把握していた。にもかかわらず自社を防衛するために事実の隠蔽に腐心し、業界組織である日本ハム・ソーセージ工業協同組合とその会員を巻き込んでそれを行なおうとした。このように日本ハムが牛肉買取事業の悪用に手を染め、その点でも業界をリードしたという事実が社会に与えた衝撃は大きい。日本ハムが役員の責任を厳しく問い、自らのグループをコンプライアンスの立場で点検することから始めて、必要な改革を行なわなくてはならないのは当然である。同時に、日本ハムには業界全体の改革について免れることのできない責任がある。私たちは、日本ハムが自社と業界全体の改革について国民が納得する方向を示すとともに、それを厳格に執行していくことを強く求めるものである。

(2)雪印食品による偽装問題をきっかけに実施された2月の自主検査は、類似事案の有無を調査し、問題があれば国民に対し事実を明らかにした上で是正することを目的にしていたはずである。しかし、その結果は一切国民に公表されることなく、いわば企業防衛を目的にした業界の「一斉行動」と化していたことが、一連の報道から明らかになった。自主検査結果によって判明した事実を企業名を伴って公表することへの抵抗や、少なくない企業が日付切れや規格外の肉を買い取り申請していた事実がここにきて明らかになっており、免罪されるものではない。日本ハム・ソーセージ工業協同組合は食肉業界全体の責任として国民の信頼回復に努力すべきであり、その具体的対策に着手すべきである。農水省にはそのリードを徹底して行うことが求められている。

(3)今回の不正の対象になった「牛肉買取事業」は、その開始当初から政・官・業の癒着による業界救済の制度として疑念を抱かせるものであった。ここにきて農水相が「制度上の不備があった」などと発言しているが、行政の責任はこの発言で済むものではない。この制度の悪用が引き起こした国民生活への影響は深刻なものがある。制度上の不備が不正を誘発するようなものであったとすれば、そうした制度を採用した責任を負わなければならない。

雪印食品の不正をきっかけに問題が顕在化し、行政は自主検査を業界に提起することになるが、この結果についても国民に開示することなく経過し、今もそのあり方を根本的に変えようとしていない。そもそもBSE問題での行政の失政の根本の一つが国民に事実を知らせず、政・官・業ぐるみの目先の利益を優先させる行政姿勢にあったことが明らかになっている。牛肉買取事業における一連の不正も、同根の性格をもっているといわざるを得ない。農水省はこの期に及んでなお事実の公表について、制限を設けようとしており、これでは過去への反省の欠落であり、国民に背を向けた立場である。牛肉買取事業に関連する不正を、事の大小にかかわらず公表することを求める。その不正の程度等をどう評価するかは、行政やましてや企業などでなく国民の行なうことである。

また日本ハム問題についての農水省の報告では、組織的犯行とは断定できないとするにとどまっており、この判断が十分な調査に基づいたものかという点にも疑念を持たざるを得ない。今後、司法当局の判断を含めて、更に厳正な措置を求めるものである。

私たちは農水省が今回の日本ハムの牛肉偽装に対して厳正な措置をとること、事実関係を全て国民に明らかにすること、そしてこうした事態をもたらした行政の責任を明らかにすることが、国民の信頼の回復への第一歩と考える。農水省が「「食」と「農」の再生プラン」で言うように、「消費者に軸足を移した農林水産行政」を謳うなら、先ずこれらを徹底することをもってスタートとすべきである。

以上