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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2002年05月22日

「BSE問題調査検討委員会報告書」を 経ての日本生協連の見解 ~食品安全に係わる新しい行政組織設置と法律制定について~

「BSE委報告」を経て、食品の安全に係わる新しい行政組織設置と新しい法律制定に向けた議論が進んでいます。日本生協連は、「BSE委報告」を支持し、食品の安全性を確保するための内実の伴った社会システムを実現することを求め、以下の見解をまとめます。

1.新しい行政組織設置に当たって求めること

(1)独立性・透明性を確保し、他省庁への勧告権等を付与すること

 現在の食品安全行政は、産業振興との分離がなされておらず、政策決定の過程が不透明で情報公開が立ち後れています。新しく設置される行政組織においては、産業振興に係わる行政組織からの独立性と政策決定過程の透明性を確保し、他省庁への勧告権等を付与するとともに、消費者の参画、行政の説明責任を法に定めることを求めます。
  1. 新行政組織の独立性を確保し、内閣府のもとに位置づけるなどして、関係行政機関に対する勧告や調整の権限を付与すること
  2. 新行政組織の意思決定は、消費者の代表、科学者などの有識者、事業者の代表が対等に参加する合議制の場で行うこと
  3. 行政の説明責任を法定し、情報の公開・提供、利害関係者の参加による対話、リスクコミュニケーションを積極的に行うこと

(2)「リスク評価」機能を新行政組織に集中し強化すること

現在の日本の食品安全行政は、リスク評価とリスク管理の機能が分離されておらず、また、リスク評価の位置づけが弱く評価の過程や結果も不透明です。「リスク評価」機能を新行政組織に集中することを求めます。

  1. 新行政組織に動物用医薬品や飼料、環境影響物質、家畜伝染病なども含めた食品の安全性に関するリスク評価機能を一元化すること。このため、厚労省の薬事・食品衛生審議会や農水省の農業資材審議会等の食品添加物や農薬、動物用医薬品、飼料添加物、遺伝子組み換え食品等も含む食品の安全性に係わるリスク評価機能をこの組織に移管し、過去の評価データの引継ぎも含め新行政組織に統合・集中すること。あわせてダイオキシンや環境ホルモンなどの化学物質の安全性に係わる評価機能を新設・強化すること。国立医薬品食品衛生研究所などの研究機関に対して研究要請や資料請求ができるようにし、それらの研究機関の協力を義務づけること
  2. 新行政組織には客観的で高度な科学的知見に裏打ちされたリスク評価を行う科学者による専門家集団の機能を確立すること
  3. リスク分析の指針、及びリスク管理のあり方の基本を定めるとともに、リスク評価の中期的計画を策定し、食品安全に係わる問題の状況やリスク評価の結果等を記載した年次の食品安全白書の発行を行うこと
  4. 食品のリスクに関する各種情報を国の内外から収集する機能を新行政組織に置くこと。そのために、内外の研究機関、既存の関係行政機関が有する情報収集組織との連携関係を確立すること。また、日本のコーデックス委員会との連絡・手続き窓口(コンタクトポイント)を文部科学省から新行政組織に移すとともに、消費者参画を明確にした国内コーデックス委員会を設置すること

(3)関係行政機関が行うリスク管理への監視機能を付与すること

 リスク評価の結果に基づくリスク管理が関係行政機関において適切に行われているか否かについて、新行政組織に監視の機能を持たせることを求めます。
  1. 新行政組織には、地方行政も含めた関係行政機関が行うリスク管理が適切に行われているかを監視・モニタリングする機能を配置し、必要な勧告等を行える権限を付与すること
  2. 新行政組織には、消費者などからのリスク評価やリスク管理、及びリスクコミュニケーションに係わる事項の意見を受付けるなどの機能を持たせること

(4)リスクコミュニケーション機能を確立すること

 新行政機関にリスクコミュニケーション機能を配置・確立し、食品の安全性に関する情報の開示・提供を積極的に行うとともに、リスクコミュニケーションのセンターとして、リスク管理機関が行うリスクコミュニケーションについてもその確立・充実を支援・勧告できるようにすることを求めます。
  1. リスク評価の対象の決定の経過・検討資料や結果などの食品の安全性に係わる情報について、消費者などへの情報公開・提供を積極的に進めること。リスクコミュニケーションのより良いあり方の研究及び人材育成をすすめること
  2. 行政の説明責任を法に定め積極的な情報の開示・提供を担保すること
  3. リスク分析の全体の過程において、必要に応じて、中央・地方で公聴会やフォーラム等を開き積極的に消費者等の利害関係者と意見交換を行うことを定めること。利害関係者からの公聴会の請求や意見提出の権利を定め、あわせて提出意見の公開義務や公聴会開催・意見への回答等の行政の責務を定めること
  4. リスク管理機関が行うリスクコミュニケーションについて、アドバイスし連携してリスクコミュニケーションを強められるようにすること

(5)表示制度の抜本的・一元的見直しを行うこと

 現在の表示制度は、その目的によって所管する行政が多岐にわたり、消費者にとって分かりにくいものです。消費者が求める表示の視点から、制度の一本化も視野に各種表示制度を一元的に見直すこと、新行政組織において包括的な表示の原則を定めることを求めます。
  1. 表示に関する原則を新行政機関において定め、各表示制度においてこれを遵守するように定めること。
  2. 食品衛生法やJAS法等での、食品の安全性の確保や、使用原材料・遺伝子組換え食品・原産国・栄養表示等の選択の保障、公正な表示の確保等の、消費者にとって必要な表示について改めて総合的・一元的に見直し、新しい表示制度を検討すること。その際、任意の表示制度についても新行政組織が必要な勧告ができるようにすること
  3. 表示に係わる総合的な監視・チェックの機能を新行政機関に配置し、新行政組織が監視・モニタリングして、関係者に対して必要な勧告を行えるようにすること

(6)十分な体制を保障すること

 新行政機関には、(1)~(5)の機能を果たせる十分な事務局体制を保障することを求めます。

2.農水省・厚労省等の関係行政機関を含めて特に検討すべきこと

(1)リスクコミュニケーションを確立すること

リスク管理に係わる行政組織においても、リスクコミュニケーションを確立するとともに、情報開示や消費者の参加を位置づけることを求めます。

(2)トレーサビリティのあり方について検討を進めること

 牛についてだけでなく、食品全般でトレーサビリティを社会的仕組みとして早急に確立することとし、その検討を求めます。
  1. 牛については、全ての牛で耳標管理を通じて、EUの例のように小売段階までつながる仕組みとして義務化し、早急に実施すること
  2. 牛のみでなく、他の農産物・畜産物・水産物や加工食品についても、早期にそのあり方を包括的に検討すること。そのための消費者の参加を保障した検討の場を設けること
  3. 検討に当たっては、以下の視点に留意すること

i 、日本では十分に定着していない生産・集荷・加工・流通段階等の各段階における仕入れ・加工・出荷のロット単位の記録とその保管が重要な鍵となると考えられ、これらについて農水省や厚労省、地方行政などの役割分担のあり方も含め、早急に検討すること

ii 、生鮮品について、生産時の記録(使用した農薬や肥料、動物用医薬品、飼料、飼料添加物等)の記帳とその記録の定められた期間の保管を義務づけること。豚や食鳥についても飼育場単位でのロット管理のあり方等を検討すること

iii 、水産品の養殖物に関しては、生産時の記録(使用した飼料、飼料添加物、動物用医薬品等)の記帳とその記録の定められた期間の保管を義務づけること。

iv 、加工食品にあっては、製造加工者が原材料を仕入れ、製品にし出荷するまでの過程を記録(生産ロット毎の使用原材料とその仕入先及び製品の出荷先)し、その記録の定められた期間の保管を義務付けること。HACCPも有効な手段であり、その本来の有効性の確保のために認証のあり方も含めて改善し普及をはかること

 
3.食品の安全性確保のための新しい包括的な法律への見解

新しい食品の安全性確保のための包括的な法律について、特に以下の点を法に明示することを求めます。

(1)食品安全の基本原則を法目的に明示すること
  • 食品の安全性確保のための基本原則として、「消費者の健康保護を最優先」とし、食品の安全性を確保すること、「リスク分析」手法を採用し「農場から食卓まで」の一貫した高度の食品安全の確保をはかること、を法に定めること
  • 食品衛生法を始めとした食品関連法の目的規定等についても、関連法律の整備に関する法律として「食品の安全性確保のための基本原則」を明示するよう改正を行うことを定めること
(2)行政・事業者の責務を定めること
  • 食品安全に係わる行政の責務として、食品の安全確保のための基本原則及び「リスク分析」の基本指針に立った食品安全行政を推進する旨を定めること
  • 食品安全行政における「リスクコミュニケーション」の確立、そのための行政の説明責任、情報公開・消費者参加の確立、消費者も含めた利害関係者からの公聴会の請求や意見提出の制度化等を定めること
  • 地方自治体における食品安全行政の強化及びリスクコミュニケーションの推進を定める
  • 事業者の責務としての食品安全確保のための基本原則による食品の安全性確保及び正確な情報の提供を定めること。あわせて、食品の安全性に係わる法令の遵守及び内部通報者の保護に関する規定を定めること
(3)「リスク分析」に関する基本指針を定めること
  • 「BSE調査検討委員会報告」における基本指針の策定、及び関連行政における指針の運用を定めること
(4)独立性・透明性及び必要な権限をもった「リスク評価」行政組織を設置すること
  • 1の「新しい行政組織設置に当たって求めること(1)~(6)」にある基本的位置づけや機能が確保されるよう、具体的な手続きも含めて定めること
(5)法律の見直し規定を定めること
  • 施行後5年以内に必要な見直しを実施する旨を定めること

自民党の食品衛生法改正案と日本生協連の見解
 

5月14日、自民党の厚労部会「食品衛生規制に関する検討小委員会」(委員長 長勢甚遠議員)において、「食品の安全に関する信頼確保のための改革提言」がまとめられました。この小委員会は、自民党特命委員会に対して、食品衛生法の改正や食品安全行政の強化の方向を提言するために設置された小委員会です。

基本的考え方

今回の自民党の「提言」では、法目的に「食品の安全性を確保する」「国民の健康保護を図る」旨やそのための行政の責務規定を定めること、消費者参画の推進を図ること、残留基準未設定の農薬等の食品への残留を原則禁止すること、既存添加物の安全性評価を進め安全性に問題のあることが判明したものについて即時使用禁止の措置をとることなど、生協が国会請願で求めてきた内容が組み込まれています。この「提言」の内容が、速やかに法改正に結びつくならば、食品の安全を確保する制度として前進につながると考えます。

現在、新行政組織の設置や食品安全のための包括的な新しい法律の制定等の検討が、政府の「食品安全行政に関する関係閣僚会議」や自民党「特命委」などにおいて進められています。これらの検討のなかで「BSE問題調査検討委員会報告」の主旨である縦割り行政の弊害を克服することが極めて重要です。あわせて、今回の食衛法改正・運用強化の「提言」については、新行政組織設置や新法制定に整合させてさらに検討を進め、食品の安全を確保するシステムとして確立することが大切です。

「提言」の個別項目について

法目的では、「食品の安全性を確保することをもって国民の健康保護を図る」旨を明確にするとともに、食品の安全性確保のための施策の国・地方自治体の責務を定めることが盛り込まれました(法改正)。

消費者の参画については、「リスクコミュニケーション強化」が明示され、関係審議会への消費者代表の参画の明確化など、地方自治体も含めた消費者の参画の推進が盛り込まれました(法改正)。

食品表示については、「国民が安心できるようなものにすることを明確にする」という表現が盛り込まれました(法改正)。

添加物については、既存添加物の安全性評価の推進と安全性に問題があることが判明した場合の使用禁止措置の規定整備が盛り込まれました(法改正)。

農薬・動物用医薬品については、新規の農薬・動物用医薬品・飼料添加物の登録の際は同時に食品残留基準を設定すること(農薬取締法を含む法改正)、残留基準設定を急ぐとともに国際基準の暫定導入等も行い残留基準未設定の農薬等の食品への残留を原則禁止すること(告示)などが盛り込まれました。

遺伝子組み換え食品やダイオキシン等化学物資など、新しい問題に対応した調査・研究、監視体制の強化が盛り込まれました。

その他、トレーサビリティの確立(法改正)や大規模食中毒事故への国が責任を持った危機管理体制の確立(法改正)、消費者等への大規模食中毒等の情報提供の強化、輸入食品に対する包括的輸入禁止規定の創設(法改正)や検査・検疫の強化、HACCPの管理強化(法改正)、各種表示制度の一元的見直し、なども盛り込まれています。

上記の提言項目は、生協が求めてきた要望に照らして前進が図られた点です。しかし、今回の「提言」においては、残留基準未設定の農薬等の食品への残留を禁止する時期や暫定的に運用する国際基準の見直し期限が明示されていないこと、既存添加物名簿の廃止の時期が明確でないこと、HACCP制度について欧米の例のように義務化して行く方向や民間認証も含めた実効性ある制度検討などに触れていないことなど、今後具体的に法改正案を検討するなかで明らかにすべき点も残っています。これらの事項について、消費者の意見も聞きながら、今後の具体的な検討のなかで実現して行くことを求めるものです。