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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2002年05月15日

環境省に化学物質に関する意見提出

  1. このパブリックコメントは、環境省(総合環境政策局環境保健部)が、平成14年3月29日(金)~5月13日(月) の間に、「生態系保全のための化学物質の審査・規制導入について」報告書に対する意見を募集しました。これに、日本生協連として意見を提出したものです。
  2. 生態系保全等に係る化学物質審査規制検討会報告書「生態系保全のための化学物質の審査・規制導入について」の内容は同省同局企画課化学物質審査室にお問合せください。報道発表・本文は、以下からご覧ください。

http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3248

(パブリックコメント本文)

2002年5月13日
 

「生態系保全のための化学物質の審査・規制導入について」への意見
 

日本生活協同組合連合会
 

2002年3月29日公表の生態系保全等に係る化学物質審査規制検討会報告書「生態系保全のための化学物質の審査・規制について」(以下、「報告書」)に対するパブリックコメントの募集に対しまして、以下の意見を申し述べます。

1.「4.(1) 生態系保全のための審査・規制のあり方」について

(1)生態系保全のための化学物質規制に賛成です

多様な生物が織りなす生態系は自然環境の重要な一部をなすものであり、これを維持するためにできるだけの努力を払うべきと考えます。「報告書」にある通り、化学物質の排出に関して生態系への影響を考慮する考え方は、先進国各国にも取り入れられているものですので、是非取り入れてください。

(2)難分解性でない化学物質も審査・規制してください

現在環境省で行われている「化学物質環境安全性総点検調査」などの調査において、化審法では難分解性とされていない化学物質も水、底質、生物等から多数検出されています。したがって、「報告書」にありますように、難分解性でない物質の規制を検討すべきと考えます。差し当って、環境から検出しているもの及び生態毒性が強いと想定されるものを優先して評価していただきますよう要望します。(なお、現在の分解性試験で通った化学物質が環境に残留していることからも、"良分解性"と呼ぶのは必ずしも適切とは言えないと考えます)

2.「4.(2) 生態影響に関する試験と審査のあり方」について

(1)試験方法については引き続き検討してください

試験方法については、「報告書」でいうように当面、諸外国で採用されている方法によって行うのがよいと考えますが、研究途上にあるとは言え、微量で毒性を持つのではないかと考えられる内分泌撹乱物質のような化学物質の試験法について検討することを要望します。

(2)一律に10トン超の物質のみを試験の対象するのは適切でありません

「報告書」では一律に10トン超の物質のみを生態影響に関する試験の対象とすべきという考え方が記述されています、単純に重量からのみではなく、毒性やリスクの強弱の視点からも規制をかけることが大切だと考えます。

(3)高分子物質も評価対象としてください

高分子物質であっても生物に対する影響を持つような官能基を有するものもあったり、比較的容易に分解して低分子物質を生ずるものもあることから、「報告書」でいうような水溶性のものだけでなく、不溶性の高分子についても、化学的な性質、分解挙動などを考慮した対応を要望します。

(4)構造活性相関(QSAR)は優先順位づけに利用してください

「報告書」ではQSARの活用の可否、適用条件等について検討すべきとしています。QSARは、生化学的な毒性の機序が明確な場合はある程度有効と考えますが、どのくらいの範囲の毒性物質についての解析に有効かの評価が必要で、かなりの限界性を持ったものとの認識が必要と考えます。

多様な毒性がある化学物質の審査でQSARによるスクリーニングを行うことをもって以降の審査や規制を外してしまっては、十分なリスクの評価と管理ができなくなる恐れがあります。したがってQSARは、重点的に審査をすべき物質を絞り込んだり、審査の優先順位をつけるなどの目的で利用してください。

(5)内分泌撹乱物質の規制を行なってください

内分泌撹乱物質については今後の検討課題としていますが、これについては予防的措置の観点から規制を進めてください。例えば内分泌撹乱作用の疑いが認められた物質は現在の枠組みで言えば指定化学物質に指定するなど、製造・輸入・使用の実態を把握できる状態に置くべきと考えます。内分泌撹乱物質の影響や内分泌撹乱作用の確認方法等についても、環境省が中心となって、関係省庁との連携を高めて、研究を一層促進していただくよう要望します。

3.「4.(3)生態系保全のための審査・規制に関連して留意すべき事項」について

(1)既存化学物質の審査は速やかに進めてください

環境中に残留していることが報告されている物質、製造・輸入・使用量の多い物質等を優先して、既存化学物質の審査を速やかに進めるよう要望します。またQSARによるスクリーニングで優先順位づけを行ない、速やかな審査と規制を行なっていただくよう要望します。既存化学物質の審査に当たっては、作業は国が行ない、費用は当該物質の製造・輸入量に応じた分担を製造・輸入者に求めることが適切と考えます。

(2)用途に応じた規制は現実的ではありません

「報告書」では、量や用途に応じた柔軟な試験評価スキームの導入の検討についての意見が紹介されていますが、化学物質の用途によって試験や規制を緩和することは、審査をする時点で特定の用途に用いられている場合も、後に他の用途に使われることも考えられるので、安全の確保を損なうおそれがあると考えます。

(3)分解生成物は引き続き審査をしてください

「報告書」では、試験の実施や評価方法の見直しの一つとして、分解生成物の取扱いがあげられていますが、化学物質が環境中で分解して生成され毒性を発揮する分解生成物については、引き続き審査を要望します。ただし審査に当たっては、分解前の物質の製造・輸入・使用量を勘案するとともに、逆に微量の生成物についてもQSARによるスクリーニング審査を行なうなど、規制の漏れがないよう配慮を要望します。

(4)リスクアナリシスの考え方で化学物質対策を進めてください

すでに欧米では常識となっている「リスクアナリシス」の考え方を、化学物質対策の面でも取り入れて、機構や業務内容の見直しを要望します。化学物質のリスクアセスメントを客観的に行い、リスクマネジメント(化学物質の規制指導)を実施する組織に対してチェック機能を有する独立した専門組織を確立してください。リスク評価や規制検討の過程での情報公開及び利害関係者の意見交換、対話を柱とする「リスクコミュニケーション」を制度として明確に取り入れていただくよう要望します。

(5)化学物質の審査内容と審査過程はすべて公開してください

化学物質の環境汚染によって最も影響を受けるのは消費者ですから、審査内容、審査過程等の情報について、全てを公開するよう要望します。過去審査された物質を含め、全ての情報を消費者や事業者が利用しやすいよう、データベース化を図って公開してください。

(6)横断的な化学物質の表示を法制化してください

現在「家庭用品品質表示法」によって一部製品についてのみ使用物質の表示が行われていますが、例えば抗菌剤のように使用者に影響を及ぼすおそれも考えられる加工剤等に関しては、表示が義務付けられていません。早急に横断的な化学物質の表示制度を検討してください。

(7)化学物質の横断的・総合的な安全管理を進めてください

現在、消費者が曝露されている有害な化学物質を対象とした法律は、食品に関連したものを除いても、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」「建築基準法」「JAS法」「薬事法」など多岐にわたっています。その各々に不十分さが残っているとともに、それらによって規制されない分野も多数存在します。そのため、化審法を化学物質の横断的・総合的な安全管理ができる法律に改編していくことが望ましいと考えます。化学物質の表示規制も視野に入れた「化学物質安全管理法」のような法律の制定を進めてください。

(8)途上国での規制に援助してください

現在は先進国で禁止されている農薬その他の化学物質が、発展途上国ではなお製造、使用されています。技術的、経済的、あるいは特許等に関して、途上国でも先進国と同様の化学物質対策が取れるように、必要な援助を行なうよう、要望します。

以上

連絡先:日本生活協同組合連合会
安全政策推進室 電話 03-5778-8109