養殖施設、加工施設の復旧を進め、漁業関係者の誇りを取り戻したい(4)
2012年5月17日
◆「CO・OP岩手県産生わかめ」を生産しているJFおもえ重茂漁業協同組合の復興レポートです。今回は最終回、わかめの袋詰めには生協の組合員さんも支援、重茂漁協は重茂半島の漁業の砦として以前以上の漁業を復活させたいと取り組んでいます。
◆ワカメの袋詰めに生協の組合員が支援
施設の復旧や船の確保を急ぐ一方、唯一残ったクリーンパックセンターを活用する動きが早くから始まっていた。
ボイル、塩蔵を終えたワカメやコンブは、このクリーンパックセンターで小袋に分けて製品化する。センターは海抜10mほどのところにあり津波の被害を受けてもおかしくなかったが、複雑に入り組んだ地形が幸いしたのか無傷だった。施設に付随する冷蔵庫には80トンほどのワカメが残されていた。震災前に加工のために運び込んでいたものだ。すでに塩蔵まで行っており、後は袋に詰めるだけだったが、震災の混乱で人手はなかった。
そこへ駆けつけたのが、古くから重茂漁協と取引のあった生活クラブ生協の職員や組合員たちだ。
「袋詰めには、生活クラブ生協の組合員の方が、全国数十地域から来ていただき、約2ヶ月間にわたって作業に携わっていたただきました」(後川さん)
5月になると、天然ワカメの収穫が始まった。共同の船で獲り、ボイルと塩蔵も、組合員の各家庭に残された設備を集めて行った。
「1家族で必ず1人出てくれと言ったのですが、どの家からも家族全員が出て、浜でワカメをボイルして、塩に混ぜる共同作業を行いました」(後川さん)
漁協の組合員が共同でボイル、塩蔵を行った天然ワカメは、クリーンパックセンターに運ばれ、そこで生活クラブ生協の組合員さんたちが袋詰めに力を貸した。
ワカメやコンブの加工を行うグリーンパックセンター
グリーンパックセンターでのワカメの選別の様子
◆生産に携わってきた誇りが支え
「とにかく収穫さえすれば、あとは漁協に任せればボイルも塩蔵も行える。この1年は、組合員が生産に集中できる体制を意識して作って来ました。幸い、定置網で獲れた魚や養殖のワカメ、コンブは比較的高値で取引され、何とか収入の道も見えてきました」(後川さん)
沖合の養殖施設は従来の半分まで回復したが、2012年も引き続き設置を続け、30万mまでは回復させたいという。沿岸部の加工施設も最低限のものは揃った。共同の船で収穫し、共同の施設で加工するという漁協の原点に戻った体制ができあがったのだ。
重茂漁協で養殖に携わっていた組合員は181名いたが、本人が亡くなったり、家族をなくすなどして50名以上が仕事を諦めざるを得なかったという。だが、128名は残った。その人たちの気持ちをどれだけ回復させられるのか。将来の希望が見えるところまで、半島の漁業全体をもう一度、形作って行きたいというのが、後川さんをはじめ、重茂漁協関係者の今の願いだ。
「我が重茂漁協は三陸全体におけるわかめ、こんぶ養殖漁業の砦であると自負しております。私は漁協の職員になって30年余りになりますが、今ほどそう思ったことはありません。漁協の組合長をはじめ、組合員ひとりひとりがその思いでやっています」(後川さん)
水産業の第一線に携わってきた誇りが、今、重茂半島で漁業に携わるひとりひとりの支えになっている。いつの日か、いや近い将来、震災前以上の浜の賑わいを取り戻せるよう、復活させたいとの思いを強くしている。