養殖施設、加工施設の復旧を進め、漁業関係者の誇りを取り戻したい(1)
2012年4月25日
◆「CO・OP岩手県産生わかめ」を生産しているJFおもえ重茂漁業協同組合の復興レポートです。今回は四回にわたって生協と重茂漁協のつながりと復興の様子をレポートします。
◆はじめに
震災により組合員に犠牲者が出て、設備、施設にも甚大な被害を負ったのが、岩手県宮古市のJFおもえ重茂漁業協同組合だ。漁協の事業立て直しのため、重茂半島全体の漁業の復活のため、そして、漁業に携わる一人ひとりの組合員の誇りのため、今も懸命な復旧作業が続いている。
◆マイナスからの出発だった
岩手県の沿岸部、宮古市の重茂半島にあるのが、JFおもえ重茂漁業協同組合だ(以下、重茂漁協)。本州最東端の海に突き出た重茂半島の沖合は三陸でも有数の親潮と黒潮が交わる漁場で、ワカメ、コンブをはじめ、ウニ、アワビ、秋鮭など豊富な海産物が獲れることで有名である。特にワカメの取引では、同漁協と生活クラブ生協との付き合いは30年以上にわたり、日本生協連とも10年以上の実績を持つ。
だが、2011年3月に発生した震災と津波は、この半島で漁業に携わる人たちに計り知れない打撃をもたらした。 「半島の人口は1,700人ほどでしたが、そのうち50人が亡くなりました。そのほとんどが漁協の組合員と家族でした」
重茂漁協で定置加工販売課長と購買課長を兼任する後川良二(うしろかわ・りょうじ)さんは、その日はちょうどワカメの収穫を控えて沿岸部へ向かうところだった。だが、たまたま自宅へ立ち寄る用事があり、15分違いで難を免れたという。重茂半島には10ヶ所に分かれた集落に約460戸の世帯があったが、そのうちの約4分の1が流された。
重茂漁協が所有する施設の被害も大きかった。
お話を伺った後川良二さん
沖合に設置されていた養殖施設は津波で全滅したほか、沿岸部にあったアワビの種苗生産施設、中間育成場、サケ・マスの孵化場、コンブの採苗場なども壊滅。また、収穫したワカメやコンブの集荷場、それらを保存する2つの冷蔵施設と、2つあったワカメのボイル工場、塩蔵加工処理工場も全壊した。
だが、重茂漁協の組合員である漁業関係者にとって最も痛手だったのが、船を失ったことだろう。組合員が個人で所有する計800隻の船のうち、残ったのはわずか20隻足らずだった。また、組合員の家庭の多くは、獲ったワカメをボイルしたり、乾燥させる設備を自前で所持していたが、それらも家ごと流され失われた。
重茂漁協の損害は約230億、組合員である漁業関係者個人の損害は約150億と見込まれ、このほかの被害も含め、重茂半島全体での損害は総額で約460億円ほどと推定されている。
「ゼロ、いや、マイナスからの出発です」と後川さんは語っている。