2012年7月19日〜26日、コープふくしま住宅部除染チームが、福島県福島市にある大原綜合病院エンゼル保育所で除染作業を行いました。
この保育所では、すでに行政による土の入れ替えなどの除染が行われているのですが、「さらに線量を下げることで、保護者の皆さんが安心して子どもを預けられるようにしたい」と、保育所からコープふくしまへ除染の依頼がありました。
一度除染済みの場所の線量をさらに下げるのは、難しいといわれます。しかし、除染チームリーダー・ 菅原一志(すがわら かずし)さんは、「正しく、数多くの地点を測って、放射線量の高い場所を突き止めることが大切。そうすることによって、除染の方法は明確になり、確実に線量は下げられます」と話します。どこに原因があるかを推定するには、その手がかりがあればあるほど精度は高くなります。
除染にあたっては、2種類の機器を使って、「空間線量率」と「表面汚染」を測ります。ある地点の「空間線量率」が高い場合、次にその原因となる放射性物質はどこに多く付着しているのか見極めるため、「表面汚染」を測定します。
測定→原因の推定→除去→測定。除染は地道な作業の繰り返しです。しかし、その結果は、保育所に立てられたモニタリングポスト※の値にはっきり表れました。
どの場所を、どの値まで除染するか決めるには、「そこに暮らす人が、長く時間を過ごしているのはどこかを考えることが大切」と、コープふくしまの加藤周(かとう いたる)専務補佐は言います。家であれば、寝室、居間、勉強部屋などでしょうか。
被ばく線量は、空間線量率×滞在時間の積算です。また、放射線の影響は、放射性物質からの距離が離れるほど弱まります。つまりは、そこに暮らす人たちが、長く過ごす場所の線量をいかに低くするか、優先順位を決めて除染をし、空間線量率の高いところに、長時間いることのないようにするということです。
同じ家で暮らしていても、昼間は学校や仕事場など、それぞれ過ごす場所と滞在時間は異なります。
「本当は、一人ひとりが個人積算線量計を付けて、一定期間の積算線量を計測するのが一番。ポイントごとの空間線量率がいくらかよりも、自分の暮らし方や生活環境と被ばく線量の関係を実感し、正しく理解することが大切。伊達市や川俣町では、全員にガラスバッジ(線量計)を配布する予定と聞いており、こうした現実的な手法は、今後広がっていくのではないかと期待しています」
除染作業最終日の7月25日、園庭の犬走りのコンクリート表面を削る作業を行いました。コンクリートのようにざらざらした場所の表面には、放射性物質が付着しやすく、その表面を薄く削ることによって、放射線量を下げることができます。
「除染は美化運動にも似ている」と、菅原さんは言います。
「放射性物質は目に見えないけれど、ゴミと同じと思うと分かりやすい。水で流しても移動するだけ。また、ツルツルした面には残りにくいが、ざらざらした面には残りやすい。放射性物質を取り除き、適切な場所に移して管理するのが大切」
7月9日に行った川俣町での除染では、国際協同組合同盟(ICA)からの寄付で購入したアスファルトを削る機械(右写真・左側の緑色の機械)と、ならコープ寄贈の集塵機(同写真・右側の黄色の機械)が活躍しました。
こうした生活の場での除染に、コープふくしまが取り組むことになったきっかけを加藤周専務補佐に伺いました。
「原発事故の起こった福島県にある生協として、語り部になろうと最初に話したんです。正面から向き合い、何が起こって、今どんな状況で、何をしてきたのかを話せるようになろうと。放射線について学び、実際にいろんなことを実践してこそ、話もできるし、提案もできる。放射線について知る中で、除染をすれば線量を下げられることが分かり、数字で示すことで除染には効果があることを伝えたかった」
「コープふくしま 住宅部除染チームでは、2011年10月からの10カ月間で、約70カ所の除染を行ってきました。福島県内の除染は、まだ始まったばかり。原発の施設内以外での除染は、誰にとっても初めての経験です。行政も手探りだったと思います。しかし、正しい対策をひとつやれば、その分線量は下がる。その方法は、この間の経験の蓄積で分かってきました。
私たちの活動で直接除染できる範囲は限られていても、一つひとつ冷静に測定し、地域の皆さんと一緒に対策を考えることで、くらしの安心を取り戻していきたいと考えています」
決意を胸に、コープふくしま・住宅部除染チームの活動は続きます。