2012年5月26日(土)、いわて生協は、岩手県陸前高田市立矢作(やはぎ)小学校の運動会で、前田建設工業(株)とともに炊き出し支援を行いました。
矢作小学校は、陸前高田市矢作町内にあった矢作、下矢作(しもやはぎ)、生出(おいで)の3つの小学校が統合され、2011年度に開校された児童数77名の小学校です。陸前高田市の山側に位置していたことで、3校とも津波の被害こそ受けませんでしたが、東日本大震災の影響で、2011年は運動会などの行事は中止や縮小が相次ぎ、統合されてから初めての運動会となりました。
今回の支援は、いわて生協も参加している「陸前高田市ネットワーク連絡会」に学校側から炊き出しの依頼があったものです。
「食材調達から炊き出しまで、『食』に関することは生協ならではの支援と考え、お手伝いすることにしました。震災以降、いわて生協では食の支援として、組合員さんの協力による炊き出しを4万食分、さらに宮古市の店舗マリンコープDORAとベルフ西町では、震災後3カ月間で9万食分の弁当支援も行ってきました。そういった経験を生かすことができると考え、ご協力することにしました」と、いわて生協組織本部・広報室室長の吉井いづみさんは話します。
炊き出しには、いわて生協の組合員9人、職員12人の計21人と、前田建設工業(株)から23人の皆さんが、ボランティアで参加しました。
矢作小学校の児童の中には、沿岸で仕事をしていた親が亡くなってしまった子や、自宅が被災したため仮設住宅から通っている子もおり、運動会のお弁当を用意するのが負担になる家庭も少なくありません。そういった家庭の負担を少しでも減らすための支援が、今回の炊き出し要請でした。また、統合されて最初の運動会ということで、みんなでおいしいものを一緒に食べたいという思いもありました。
用意したメニューは、おにぎり、野菜たっぷり焼きそば、豚汁の3品で、児童とその家族、そして教職員の分をあわせて400食。それにポップコーン、綿あめも加わりました。これは「1食分、全部を揃えてほしい」という学校側のリクエストと、おやつもつけて楽しい気持ちを盛り上げたいという、いわて生協からの思いが込められています。
組合員のボランティアリーダーを務めた、いわて生協監事・被災地支援担当の飯塚郁子さんは、今回の支援への気持ちをこう話してくれました。
「震災直後の炊き出しは、被災した人たちの今日の食を間に合わせるために、とにかく早く作ってあげないとと、殺気立っていました。でも今回はまったく気持ちが違います。『子どもたちの良い思い出に残るような運動会にしてあげよう。そのためには私たちも運動会を楽しみながら、炊き出しをしましょう』と、始まる前にみんなで話したんですよ」
調理をしながら、大きな声で応援をしたり、にぎやかな笑い声が起こったり、ボランティアの皆さんの表情も楽しそうでした。
現在の矢作小学校の校庭には、仮設住宅が建てられていて校庭は一切使えません。子どもたちの体育の授業は体育館で行われ、休み時間でも思いきり駆け回って遊ぶことができない日々が続いています。そこで、「廃校になった小学校の校庭を利用して運動会を開催することによって、思いきり走り回れる時間を作ってあげたかった」と、副校長の佐々木栄子先生は話します。
「万国旗も省略したし、午後の種目もないので、充分とはいえない開催ですが、震災でいろいろなものが奪われてしまったため、今できる範囲で、小規模の運動会を開催しました。少しずつ積み上げて日常を取り戻していくことが大切だと思っています。今回はその第一歩。炊き出しをしていただいたおかげで、みんなで同じものを食べて連帯感が強まったように思います。豚汁も焼きそばも野菜がたっぷりで本当においしく、楽しく有意義な運動会になったと思います」
校庭を全速力で走る子どもたちの表情は生き生きとし、とても楽しそうでした。
「楽しい運動会を応援できて本当によかったと思います。被災地にはまだまだたくさんの課題があり、皆さんの要望が変化しています。何が必要か、個々によって違ってきていますので、これからも被災した人たちに寄り添うことができるような活動を続けていきたいと思っています」
ボランティアをまとめた、いわて生協の飯塚郁子さんは炊き出し支援をこう振り返ってくれました。