復興に取り組む生協からの声〜生協にできること〜 【第19回】みやぎ生協・食のみやぎ復興ネットワーク「村田の秘伝豆プロジェクト」 秘伝豆が育つ町に、農家の後継者が育つ

「村田の秘伝豆プロジェクト」、今年も活動開始

「村田の秘伝豆プロジェクト」は、食のみやぎ復興ネットワークが進めるプロジェクトのひとつで、「地域農業の活性化」「休耕圃場(ほじょう)の復活」「後継者が安心して農業に取り組めるための経済的支援」をめざして、2011年から取り組みが始まりました。現在、生産者の集まりである「村田出荷組合」の10軒の農家と食品メーカー、市場関係者、みやぎ生協が一緒になってプロジェクトを進めています。

食のみやぎ復興ネットワークとは

東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県内の農業・漁業関係者や食品関連産業者が、互いに励まし合いながら地域復興をめざすことを目的として、2011年7月2日に結成された団体。「宮城の新しい特産物」を育てるプロジェクトに取り組んでいます。参加団体は190団体(2012年6月25日現在)。

約10アールの畑に秘伝豆の種をまく

東北地方に伝わる青豆「秘伝豆」。赤い色は、鳥に食べられないように、コーティングしたもの。

2012年5月19日(土)、快晴の空のもと、柴田郡村田町菅生(すごう)の畑で「秘伝豆」の種まきが行われました。
秘伝豆は、東北地方に伝わる青豆です。香り、甘み、粒の大きさ、張り、どれをとっても素晴らしいことから「秘伝豆」と名付けられました。枝豆として食べたり、また味噌・しょうゆの原料として使われています。
午前10時半、村田出荷組合の皆さんが迎える中、食品メーカーや仙台市場の関係者、みやぎ生協村田地区こ〜ぷ委員会の組合員が続々と集まってきました。

カニのような横歩きがポイント。暑い中、皆さん笑顔で取り組みます。

丘の上の林に囲まれた畑に着くと、「広いなー」と歓声が上がりました。「種は2粒ずつまいてくださいね」「かがんだ姿勢のままカニのように横歩きする方が疲れないよ」などとアドバイスを受けながら、子どもも大人も一列になって種まきを開始。20℃を超える暑さにたちまち汗がふきだします。
村田地区こ〜ぷ委員会の組合員からは、「種まきは初めて。貴重な体験です」との声。約1時間で長さ約50メートルの畝(うね)10アール分の種まきを終えました。

昼は、生産者との昼食を兼ねた交流会が行われました。テーブルには、村田出荷組合の奥さんたちが朝から準備してくださったお惣菜や豚汁などが所狭しと並び、話がはずみました。
圃場を提供した高橋覚(さとる)さんは、秘伝豆をつくり始めてから20年になります。「収穫前は、畑に行くとバーッと香りがするんだ。それがたまらなくいい」と目を細めます。

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後継者が育つよう安定した収入をつくってあげたい。

自然豊かな村田町で「秘伝豆」は育ちます。

産地の宮城県柴田郡村田町は仙台から車で約1時間。菅生地区は寒暖の差が大きく、糖度のあるおいしい枝豆をつくることができ、古くからソラマメや枝豆の生産が盛んです。
3年前、村田町の菅生地区で生産されていた味の良い秘伝豆に着目し、生協での取り扱い検討が始まりました。それまでみやぎ生協が扱っていた秘伝豆は他県産。しかし村田町なら同じ宮城県内。流通のしくみを変えれば余分なコストがかからず、組合員にも手ごろな価格で提供することができます。
みやぎ生協の店舗商品部農産部門商務・堀籠一美(ほりごめかずみ)さんは、「仙台市場の近くにおいしい秘伝豆をつくってくれるところがあったんだとうれしくなりました」と話してくれました。

一方、豆の産地として有名な村田町とはいえ、農業の厳しい現実があることにも目を向けました。
「親や祖父母が一生懸命働いている姿を見ても、収入が不安定なら若い世代は育ちません」。堀籠さんは生産者に、作付を依頼した分は安定した価格で購入することを約束しました。「20代、30代の後継者が育つよう安定した収入をつくってあげたい」と思ったからです。

大人も子どもも、秋の収穫をめざして汗を流します。

「農業は天候に左右されるから大変だ」と言う農家の高橋静夫(しずお)さんですが、「生協が農家の収入が良くなるように事業を盛り立ててくれるから、自分たちも頑張ろうという考えに変わってきた」のだそうです。
また、種のまき方を指導してくれた高橋保(たもつ)さんは、「生協さんと、もっと早くこういう取り組みをできたら、農業に対する意識も変わっていたと思う。そういう意味で、今回の取り組みは農家として本当に感謝しているという声が、この間の会合で部会員から出たんだ」と顔をほころばせます。
その言葉に堀籠さんは「本当にうれしい…」。苦労が報われる思いがしたに違いありません。
仙台市場の松印松浦青果の大宮賢治さんも「最近、秘伝豆をつくる若い人が増えました。それが光です」と手応えを感じています。
秘伝豆プロジェクトで生産農家の状況は確実に変わりつつあります。

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枝豆で食べる。味噌・しょうゆの原料として使う。

林に囲まれた高橋覚さんの圃場で。広い畑の一画にはソラマメと仙台茶豆も植えられています。

プロジェクトには、村田の秘伝豆をよりおいしく食べ、また大豆を原料として活用するために複数の食品メーカーが参加しています。
「ビールのおつまみに秘伝豆」と話すのはキリンビールさん。「当社も東北の農業と水産業を応援するため“復興応援絆プロジェクト”を進めています。食のみやぎ復興ネットワークとともに宮城の農業を盛り立てていきたいですね」。
永田醸造さんは秘伝豆を原料にした味噌を製造し、生産者のラベルを貼った「秘伝豆味噌(仮称)」を製造する予定です。
そのほか、江崎グリコ、味の素、三菱食品の皆さんからも、秘伝豆のおいしさを生かしたメニュー提案などが準備されているそうです。
9月の収穫が待ち遠しいです。

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