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日本生活協同組合連合会オフィシャルサイト

2024年02月21日

共創のプラットフォームをめざして
「全国産直研究交流集会 2024」を開催
~次世代へつなぐ生協産直~

 日本生協連は、産直に関わる生協・生産者団体、流通事業者を対象とした「全国産直研究交流集会2024」を、2月16日(金)・17日(土)・20日(火)に開催し、産直に関わる全国の生協の役職員・組合員・生産者団体・関係企業など、140団体、約430人が参加しました。

 本交流会は「次世代へつなぐ生協産直」をテーマに開催しました。まず、ヤマガタデザイン株式会社 代表取締役 山中大介氏より講演をいただき、続いてパルシステム生活協同組合連合会/全国産直研究会 代表委員 那須豊氏より、全国産直研究会報告を行いました。また、「第11回全国生協産直調査報告書」を本交流会で公開しました。今回の調査から見えてきたことを、本調査の検討部会委員の1人で、農林水産省の食料・農業・農村政策審議会 基本法検証部会長を務めた中嶋康博氏から報告しました。食料安全保障問題や生産資材高騰、人手不足など生協産直を取り巻く環境が大きく変化するなか、生協産直はこれらの問題にどう向き合い行動していくのか、あらためて考える場となりました。

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講演 「地方の希望であれ~地方の課題を解決する事業の生み出し方~」
山中 大介氏(ヤマガタデザイン株式会社 代表取締役)

 山中氏が代表を務めるヤマガタデザインは、山形県庄内地方を拠点に地域課題の解決に取り組み、全国的な注目を集めています。講演では、人口減少、少子高齢化という地方が抱える課題に対して、「人口減少は不可避だが、そのなかでも地域に希望を持てることが重要である」とし、特に民間が自らの手で地域・社会課題に挑む必要性を強調しました。また、「これからの地方は域内循環に加え、外貨を獲得することが重要」 と述べ、農業・観光分野にはその高いポテンシャルがあると述べました。最後に、資本主義の行き詰まりを見据え、「協同組合は資本主義の未来であり、資本主義をハックできる仕組み。非常に大きな可能性がある」と期待を語りました。

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第11回全国生協産直調査報告
中嶋 康博氏(東京大学大学院農学生命科学研究科・研究科長)

 全国生協産直調査は、1983年以降ほぼ4年ごとに実施しているもので、生協産直の現状を評価し、今後の方向性と課題を提起することを目的としています。 今回の調査では、生鮮部門において産直品が重要な位置づけであることや産直加工品の拡大が確認されました。これについて中嶋氏は、「以前より産直品に付加価値を付けていくことが課題だったが、着実に進んでいる」と評価しました。さらに、生産資材や食品価格の高騰を踏まえ、「部会長を務めた基本法検証部会でも価格の問題は強い関心だった。今回の調査でも同じ傾向が確認できる」とし、生産者、組合員ともに価格についての厳しい実態があることを指摘しました。最後に、生協産直は時代を先導するシステムとして、その時どきの食にまつわる課題を解決してきたと指摘し、「これからも食を真ん中においた豊かな社会の構築に向けて、生協産直に期待する」と述べました。

 

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左から、モデレーター平野、中嶋康博氏、
杉田佳寿子氏、小林啓子氏、佐藤哲郎氏

トークセッション
 パネリスト:中嶋 康博氏、杉田 佳寿子氏(コープみらい組合員理事)、
  小林 啓子氏(野菜くらぶ取締役課長)佐藤 哲郎氏(パルシステム連合会野菜課課長)
 モデレーター:平野 路子(日本生協連政策企画室)


 最後に講演内容を踏まえながら、「次世代の生協産直のありたい姿とは」をテーマにしたトークセッションを行い、生協組合員、生産者、生協職員、中嶋教授が意見を交わしました。

 前半では「生協産直の魅力」がテーマとなり、「顔の見える関係からさらに一歩踏み込んだ、相対(あいたい)という関係が築けるのが良い」(小林)、「産地交流などを通して、生産者とつながり信頼が生まれる」(杉田)、「価格などの難しい課題についても率直に話してくれる」(佐藤)といった意見が出されました。中嶋氏は「生協産直の組合員、生産者、職員の関係性には心理的安全性がある。三者が個別の利益を超えて、トータルな利益を見据えて話ができる」とコメントしました。

 後半では「生協産直が持続可能であるために必要なこと」について意見が交わされました。「情報が溢れる社会のなかで本質の情報を伝えていくことが大切」(小林)、「生産者と膝を詰めて話してコミュニケーションを取っていくこと」(佐藤)、「生産者の熱意が分かるエピソードを知ると熱い想いになる。ファンを増やして生産者が安心して、持続的な農業ができるようにしないと」(杉田)といった声が出されたことについて、中嶋氏は「競争社会では隠されたり、独占されたりしがちな情報を出し合える関係性は生協産直だからこそ」と生協産直の持続性には情報が重要な役割を果たすとしました。

 最後に中嶋氏が、「組合員、生産者団体、生協の関係性は『仲間になっている』ということで、それこそが提言でも示した『プラットフォーム』。仲間と言える関係を続けていくことに期待したい」と述べて締めくくりました。

※発言は所属先を代表するものではなく、登壇者個人の意見であることをご了承ください。

 

 2日目の分散会では、「2030年の生協産直ビジョンを語ろう」をテーマに「生協産直と役職員の関係」について「生協産直と生産者団体について」などの個別報告を受けながら、参加者同士の交流と、生協産直を担っていく次世代メンバー一人ひとりが生協産直のありたい姿を考え、自分の組織でできることを考えるためのグループワークを実施しました。

 3日目の分科会では、「産地の担い手づくり」「農福連携」「耕畜連携、 自給・国産飼料」などのテーマ別にオンライン形式で各地の取り組み報告をおこない、参加者と地域課題や持続可能な生産について考えました。