トランス脂肪酸問題についてのQ&A

 日本生協連は2005年4月11日、トランス脂肪酸問題について見解を公表しましたが、その後も多くのお問い合わせをいただいていますので、情報を追加、整理しました。

2016年9月1日最終更新
2005年4月11日作成

●トランス脂肪酸の概略と日本生協連の考え

 脂肪酸とは、食品の成分の一つである脂肪を構成している成分です。トランス脂肪酸は脂肪酸の一種で、マーガリン、菓子やパンの一部、業務用の揚げ油などに含まれます。その他に牛肉や乳製品などにも含まれています。

 トランス脂肪酸は善玉(HDL)コレステロールを減らし、悪玉(LDL)コレステロールを増やすため、それ以外の脂肪酸とのバランスを欠いて多く摂取した場合は、心臓疾患などのリスクが高まると言われています。これが「トランス脂肪酸が体に悪い」と言われる理由です。トランス脂肪酸は体の中では他の脂肪酸と同じように吸収、代謝されるので、体に特別に蓄積しやすいということはありません。

 欧米諸国では食品への表示や含有量の規制が行われているケースがあります。一方、日本の食品安全委員会は、トランス脂肪酸の摂取量について、日本人のほとんどがWHOの目標である総エネルギー摂取量の1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さい。しかしながら、脂質に偏った食事をしている人は、留意する必要があるとの見解を出しています。

 日本生協連としても、現在、血中コレステロールの値が正常範囲内で、普通の食生活をおくっている方は、トランス脂肪酸について特に心配する必要がないと考えます。また、例えば、悪玉(LDL)コレステロール値が高めの方も、まずは喫煙や運動等も含めた生活習慣全体を見直すことが必要で、食生活の改善もその一部です。

 トランス脂肪酸は心臓疾患の危険性を増やすかもしれない一つの要因ではありますが、とにかくトランス脂肪酸さえ食生活から排除すればそれでよいということではありません。あまり報道されていないことですが、例えば米国の加工食品の栄養成分表示では、トランス脂肪酸の量だけではなく、総脂肪、飽和脂肪酸(商品により不飽和脂肪酸)も表示されており、米国FDA(食品医薬品局)は消費者に対して、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の量の合計が少ない商品を選択するよう勧めています。これは、トランス脂肪酸だけでなく、飽和脂肪酸の摂取量や脂肪酸の摂取バランスも大切なポイントであるためです。

 日本生協連は、食事からの脂肪のとり方について「トランス脂肪酸を減らすことだけにこだわるのではなく、脂肪を適切な量をとることと、農産物や魚介類も含めたいろいろな食べ物からバランスよく脂肪をとること」をおすすめします。

●トランス脂肪酸についてのQ&A

Q1
トランス脂肪酸とは何ですか?
A1
トランス脂肪酸とは、食品の成分の一つである脂肪を構成している成分です。不飽和脂肪酸の一種ですが、飽和脂肪酸に近い性質があります。

 脂肪酸には不飽和結合(二重結合)のない飽和脂肪酸と不飽和結合のある不飽和脂肪酸がありますが、トランス脂肪酸とは、不飽和脂肪酸のうち、不飽和結合の部分での結合の仕方が対角線方向になっているものをいいます。不飽和結合の部分での結合の仕方が同方向になっているものをシス脂肪酸といいます。

 一般に、飽和脂肪酸は融点(固体が液体になり始める温度)が高く、常温では固体、不飽和脂肪酸は融点が低く常温で液体ですが、トランス脂肪酸は常温で固体です。

◎トランス脂肪酸とシス脂肪酸の例

以上をまとめると、下図のようになります。

Q2
トランス脂肪酸はどういうものに含まれますか?
A2
主として硬化油を使った食品(マーガリン、ショートニングを使った菓子類、業務用揚げ油など)と、乳製品・食肉製品などに含まれます。

 トランス脂肪酸が生成する原因としては、主として以下の3つが知られています。

(1)植物油等の加工の際に行われる水素添加により生成します
 マーガリンやショートニング*1を製造する際には、液体の油に水素を添加して、脂肪酸の二重結合を減らし、油を硬くします。これを水素添加*2といいます。水素添加には油が酸化しにくくなるという効果もあります。この水素添加により、飽和脂肪酸のほかに、トランス脂肪酸も生成します。水素添加によって製造される油を硬化油または水添油といいます。業務用揚げ油には、サクサク感を出すためと、酸化防止のため、硬化油が使用されることがあります。

(2)油を高温で加熱する過程において生成します
 たとえば、食用油を製造する際には脱臭(高温の水蒸気を吹き込む)という工程があり、このときに高温がかかりますので、トランス脂肪酸がごくわずかながら生成します。

(3)牛など(反芻動物)の胃の中で微生物により生成します
 たとえば、牛肉の脂肪や乳脂肪には、少量のトランス脂肪酸が含まれます。これは牛の胃の中に生息する微生物によって生成される天然のトランス脂肪酸です*3。このような天然由来のトランス脂肪酸をどのように考えるか(表示や規制の対象とするか)は、国により対応が異なっています。

*1: 焼き菓子やパン、フライなどに使われる植物、動物油脂を原料とした固形油脂。サクサク、ポロポロした食感を出すために使われます。
*2: 不飽和結合(二重結合)に水素を付加させて飽和結合にする化学反応。

*3: 天然のトランス脂肪酸は共役リノール酸(トランス結合の不飽和結合とシス結合の不飽和結合が入ったリノール酸の異性体)などで、人工のトランス脂肪酸とは成分は異なります。(共役とは不飽和結合が飽和結合ひとつを隔てて隣接している構造のこと)

Q3
なぜトランス脂肪酸が問題と言われるのですか?
A3
トランス脂肪酸の過剰摂取は、LDLコレステロール上昇作用などによる心臓疾患リスクの増加につながるとされています。

(1)動脈硬化や心臓疾患との関係
 トランス脂肪酸は悪玉コレステロールといわれているLDLコレステロールを増加させ、善玉コレステロールといわれているHDLコレステロールを減少させます。

 血中のLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少すると、動脈硬化や心臓疾患のリスクが高まります。したがって、トランス脂肪酸の摂取と動脈硬化や心臓疾患のリスクには相関関係があると考えられます。これは、飽和脂肪酸と似た作用といえます。

 LDLコレステロール、HDLコレステロールの変化は摂取脂肪酸のバランスと総量に影響されますが、トランス脂肪酸に関する実験を総括すると、総エネルギーのおおむね2%以上トランス脂肪酸を摂ると影響が現われるようです。

(2)その他の疾病との関係
 2012年の食品安全委員会の評価書では、トランス脂肪酸の摂取と糖尿病、がん、胆石、脳卒中、加齢黄斑変性症及び認知症については、その関連を結論できなかったとしています。

 一方、肥満及びアレルギー性疾患について関連が認められた、また、妊産婦、胎児等に対しては健康への影響が考えられたとしています。しかしながら、これらの影響はトランス脂肪酸摂取量の多い人々を対象とする調査結果であり、摂取量の少ない平均的な日本人では関連が明らかではないとしています。

 2004年のEFSA(欧州食品安全機関)*1の意見書では、がん、2型糖尿病、アレルギー等の疾病とトランス脂肪酸摂取との関連性は「弱い(weak)」または「一貫性がない(inconsistent)」としています。

*1:日本の食品安全委員会に相当するEUの食品のリスク評価機関。

Q4
トランス脂肪酸は体に蓄積しますか?
A4
他の脂肪酸と比べて蓄積しやすいということはありません。

 2004年のEFSA(欧州食品安全機関)の意見書では、トランス脂肪酸は消化、吸収に関しては他の脂肪酸と同様で、代謝経路についても他の脂肪酸と同じとしています。トランス脂肪酸が特に蓄積しやすいということはないようです。最終的に脂肪酸は酸化されてエネルギーになります。

Q5
トランス脂肪酸の有害作用はどんなときに問題になりますか?
A5
動脈硬化や心臓疾患のリスクは脂肪酸の摂取量と摂取バランスに関係するもので、日本人の平均的な食生活では問題にならないと考えられます。栄養バランスのよい食生活をお勧めします。

 トランス脂肪酸で問題とされる心筋梗塞や狭心症といった心臓疾患のリスクは、脂肪酸の摂取量と摂取バランスに関係するものです。WHOの専門機関はトランス脂肪酸の摂取を総エネルギーの1%以下にするよう勧告しています。

 2012年の食品安全委員会の評価書では、日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は、総エネルギー摂取量に対して男性で0.30%、女性で0.33%と欧米諸国と比べて低い摂取量でした。また95パーセンタイル値(摂取量の多い方から5%の位置に当たる人の摂取量)は男性で0.70%、女性で0.75%であり、大多数の日本人はWHOの勧告する1%に収まるとしています。

<トランス脂肪酸の一人当たり摂取量(参考資料1〜3より作成)>
  1日当たり摂取量(g) 総摂取エネルギーに占める割合(%E)
日本
 男性
 女性

0.680
0.655

0.30
0.33
米国 5.8 2.6
EU(男性) 1.2〜6.7 0.5〜2.1
EU(女性) 1.7〜4.1 0.8〜1.9

 また、日本では欧米と比較して、魚類などからの多価不飽和脂肪酸の摂取が多く、逆に食肉等からの飽和脂肪酸摂取は少ないため、平均的な食生活をしていれば、トランス脂肪酸の影響は心配ないと考えられます。

 近年食生活の欧風化が進み、食肉等の摂取量が増えており、食生活によって飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量が多くなる場合は、その影響を否定はできません。ただし、その場合でも、トランス脂肪酸の量を減らすことだけではなく、食肉類、菓子類、乳製品類等の摂取が多くなりすぎないように努め、農産物、魚介類などを適度に組み合わせ、野菜や果物、海藻類などを多く摂る、栄養バランスのよい食生活を心掛けられることをお勧めします。

Q6
トランス脂肪酸はクローン病の原因と聞きましたが、本当ですか?
A6
クローン病の原因は現時点ではよくわかっていませんが、トランス脂肪酸が原因という明確な証拠はありません。

 クローン病は小腸や大腸などの消化器系に潰瘍、狭窄などができ、腹痛、下痢、発熱などを伴なう、慢性の病気です。免疫系疾患とされていますが、現時点では原因はよくわかっていません。欧米と比較すると日本では非常に少ない病気ですが、日本でも近年増加しています。

 いくつかの食品の摂取量とクローン病の症例対照研究*1によって、クローン病のリスクを増加または低下させる食品があることが報告されています。クローン病は免疫系疾患ですので、食生活が発症リスクに関係したり、あるいは病気の悪化・治癒に関係することは考えられます。しかし弊会で調べた限り、トランス脂肪酸がクローン病の原因であるという明確な証拠となる報告はありませんでした。

 病気の治療は、不確かな情報ではなく、専門医の指示に従っていただくことをお勧めします。栄養バランスのよい食生活は免疫機能にとっても重要です。

*1: 症例対照研究とは、患者(症例)と患者でない人(対照)の双方について、リスク要因(食生活、生活行動など)を調べて病気と因子の関係を調べる疫学研究の方法。
Q7
欧米でトランス脂肪酸が規制されているというのは本当ですか? 日本ではどうなっているのですか?
A7
欧米では栄養表示の項目にトランス脂肪酸が入れられる動きがあります。また一部の欧州諸国ではトランス脂肪酸含有率が規制されています。

 米国では2006年1月から栄養表示のラベルにトランス脂肪酸の表示が義務付けられています(右図)。韓国も2007年12月から改正表示制度が施行され、トランス脂肪酸が表示の対象となります。コーデックス委員会*1でも、トランス脂肪酸の表示・規制に関する議論が行なわれてきました。

 トランス脂肪酸を含有する食品の規制ということでは、デンマークが2004年から加工食品に使われる油脂中のトランス脂肪酸含有率を2%以下に制限しています。

 米国ニューヨーク市ではレストラン等で提供される食品について、天然由来以外のトランス脂肪酸を1食あたり0.5g未満とする規制を、揚げ物については2007年6月より開始し、2008年7月より全食品に対象を広げるとしています。

 またFAO/WHO食事・栄養及び慢性疾病予防に関する合同専門家会合(2002年開催)や米国のFDA(食品医薬品局)は、食事中のトランス脂肪酸をエネルギーの1%以下にするよう勧告しています。

 一方、米国保健科学協議会(ACSH)が2006年10月に発行した「トランス脂肪酸と心疾患」という小冊子では、トランス脂肪酸という一つの要因だけの影響を誇張しすぎると、他のリスク要因から目がそれるため、公衆衛生上かえってよくないと警告しています。他の要因も考慮した総合的な対応が必要です。

 日本では、現在までのところトランス脂肪酸の含有量規制や表示の義務はありません。

 厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準」(2010年版)では、トランス脂肪酸について「日本人のトランス脂肪酸摂取量(欧米に比較し少ない摂取量)の範囲で疾病罹患のリスクになるかどうかは明らかでない。」しかし、「日本人の中にも欧米人のトランス脂肪酸摂取量に近い人もいる。このため日本でも工業的に生産されるトランス脂肪酸は、全ての年齢層で、少なく摂取することが望まれる。」としています。

 しかし、他の脂肪酸のように摂取すべき範囲(または許容できる範囲)として表すことが困難な脂肪酸であるため、摂取基準は策定されていません。

 消費者庁は2011年に「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」を公表し、トランス脂肪酸を表示する場合のルールを定めました。指針では、トランス脂肪酸を表示する場合には、飽和脂肪酸及びコレステロールの含有量もあわせて表示することとしています。

 食品安全委員会のトランス脂肪酸の食品健康影響評価(2012年)では、日本人の大多数のトランス脂肪酸摂取量は、WHOの勧告するエネルギー比1%を下回り、健康への影響は小さいとしました。ただし、脂質に偏った食事をしている人は、トランス脂肪酸摂取量のエネルギー比が1%を超えていることがあると考えられるため、留意する必要があるとしています。

*1: FAOとWHOが共同で設置している国際機関で、国際食品規格(コーデックス規格) の作成を行います。

◎参考
 消費者庁:トランス脂肪酸に関する情報
 食品安全委員会:食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価の状況について

Q8
生協のマーガリン類にもトランス脂肪酸は含まれますか?
A8
生協のマーガリン類も水添油(Q2参照)を使用しているので、トランス脂肪酸が含まれます。

 生協のマーガリン類(マーガリン、ファットスプレッド)も水添油を使用しているため、トランス脂肪酸が含まれます。
 以下の表に、マーガリン類、コーヒー用ポーションの1食分に含まれるトランス脂肪酸等の含有量をお示しします。

<CO・OPマーガリン類のトランス脂肪酸、
飽和脂肪酸およびコレステロールの含有量(1食 10 g当たり)>
分類 商品名 トランス
脂肪酸
(g/10 g)
飽和
脂肪酸
(g/10 g)
コレステ
ロール
(mg/10 g)
測定年月
マーガリン
*1
コーンマーガリン 0.02 2.6 0.2 2016年6月
コーンマーガリン
(遺伝子組換え原料不使用)
0.02 2.6 0.2 2016年6月
ケーキ用マーガリン 0.1 3.5 検出せず*2 2015年11月
べに花マーガリン 0.02 1.9 検出せず*2 2015年11月
バター入マーガリン 0.08 2.7 3 2013年7月
ファット
スプレッド
*1
NEWソフト 0.04 1.9 0.1 2012年5月
コーンソフト バターの風味 0.07 2.5 2009年2月
コーンソフト バター入り 0.04 2.0 0.8 2014年7月
*1: JAS規格では油脂含有率80%以上をマーガリン、80%未満をファットスプレッドとしています。
*2: 検出限界 1 mg/100 g
−: 未測定(測定年月が2009年2月以前のものは、コレステロールを測定していません)
<CO・OPコーヒー用ポーションのトランス脂肪酸、
飽和脂肪酸およびコレステロールの含有量(1食 5 mL当たり)>
分類 商品名 トランス
脂肪酸
(g/5 mL)
飽和
脂肪酸
(g/5 mL)
コレステ
ロール
(mg/5 mL)
測定年月
コーヒー用
ポーション
コーヒーフレッシュ 検出せず*1 0.5 2009年2月
コーヒーフレッシュ 低カロリー 検出せず*2 0.5 0.1 2015年2月
*1: 検出限界 0.1 g/100 g
*2: 検出限界 0.05 g/100 g
−: 未測定(測定年月が2009年2月以前のものは、コレステロールを測定していません)
Q9
トランス脂肪酸問題について、どのような課題がありますか?
A9
日本人のトランス脂肪酸を含む脂質摂取量について、継続的で、より正確な調査が望まれます。

 食品安全委員会の食品健康影響評価(2012年)により、大多数の日本人にとって、トランス脂肪酸の健康影響は小さいことが示されました。また、消費者庁の情報開示の指針(2011年)により、日本における表示等をする場合のルールが示されました。これらの取り組みによって、日本におけるトランス脂肪酸の問題については、一定の整理がなされました。

 ただし、食品安全委員会の評価では、トランス脂肪酸の摂取量について、脂質に偏った食事をしている人では留意すべきであること、また、摂取量の推定に用いる食品中のトランス脂肪酸含有量のデータ等には制約があったことも付記されています。

 摂取量については、トランス脂肪酸だけでなく飽和脂肪酸等他の脂質を含めて、継続的かつより正確な調査が望まれます。

◎参考資料

  1. 食品安全委員会. 新開発食品評価書 食品に含まれるトランス脂肪酸. (2012)
  2. EFSA. Opinion of the Scientific Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies on a request from the Commission related to the presence of trans fatty acids in foods and the effect on human health of the consumption of trans fatty acids. The EFSA Journal 81: 1-49. (2004)
  3. 農林水産省. トランス脂肪酸に関する情報

<この件のお問い合わせ先>

 日本生協連安全政策推進室 

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