生協の未来

1951年に、全国の生協が参加する連合会として設立された日本生協連。「平和とよりよい生活のために」という理想を掲げ、全国の生協とともに、くらしの向上を目指して活動してきました。今回は、設立以来「つながり」を大切に活動してきた生協が持つ未来の可能性と、そのために日本生協連として何ができるのかということについて、未来の組織の担い手である2人が、世代を超えて語り合います。

朝比奈 まゆ子さん

日本生活協同組合連合会
常務執行役員管理担当

1995年入協。システム、商品系を経験し、会員生協のコープデリ連合会へ出向後、2025年より現職。さまざまな経験を積む度に協同組合の可能性に対する確信を深めている。

浅井 安都怜さん

株式会社コープトレード・ジャパン
輸入事業管理担当

2024年に日本生活協同組合連合会へ入協すると同時に子会社へ出向。生協の持つ「つなげる役割」に可能性を感じている。今は、輸入業務などを通じて生協の事業の意義を実感している。

※プロフィールは取材当時

対談テーマ① 生協が秘める、未来の可能性

人と人をつなぎ、
分断を超えていく。

浅井さんとお会いするのは初めてではないですよね。今年の広島のイベントで私が道に迷っていたときに、誘導係だった浅井さんが救世主のように助けてくれて、とてもよく覚えています。あらためて今日はよろしくお願いします。まず最初のお題は「生協が秘める未来の可能性」について。若手の浅井さんがどのように感じているのか、まずはお聞きしてもよいですか?

朝比奈

ありがとうございます。朝比奈さんとはピースアクションという生協の平和活動に参加した際に初めてお会いしました。ピースアクションでは、広島大学生協の留学生委員会というグループが、ある企画をやっていたんです。各国から集まった留学生たちの、それぞれの国の歴史教科書の原爆の記述を比較しようというものだったのですが、それを見ていて「ああ、生協はこういう機会を提供できるのか」と思ったんです。

浅井

ピースアクションは、戦争や被爆体験の継承や、世界のさまざまな戦争や紛争の問題について考えることで、平和についての考えを深める生協が長きにわたって大切にしてきた取り組みですね。

朝比奈

今の社会って、自分とは違う背景や考えを持った人とつながる機会は失われがちなんじゃないかと感じることも多いんです。似た人ばかりの環境では想像力が失われ偏見が生まれたり、立場の違う人と敵対して分断が生じてしまう可能性があります。そこに生協の役割があるんじゃないかと思うんです。つまり、自分とは全く異なる人ともつながり直すきっかけをつくる。そういった人たちのコミュニティのハブに生協がなることで、世の中をポジティブな方向に変えていけるんじゃないか。理想論かもしれませんが、私は生協にそういった可能性を感じています。

浅井

多様な意見をある意味フラットに聞けるのは、生協ならではですよね。一人が何株も持って多数の票を得られる株式会社と違って、生協の場合は一人一票です。組合員一人ひとりの意見が反映されやすく、本当の意味で一人ひとりの声を大切にできる。そもそもが組合員の声からなる事業なので事業そのものが社会貢献になっていく。それが生協のおもしろいところですよね。

朝比奈

実は、私が入社を決めたのもそうした価値観が合うと思ったからなんです。ただ利益を追求するのではなく、その利益を還元して社会をより良くしていける。そこに魅力を感じました。だからこそ、自分もその中の一人として、事業と活動を盛り上げていきたいと思っています。

浅井

対談テーマ② 日本生協連の役割とは?

食、農、コミュニティを支える
地域のインフラ。

先日、2030年ビジョンに向けた中期経営計画を議論する機会がありましたが、そこで「食と農の持続可能性」に対して危機感を覚えている方が多くいました。その辺りに関して、浅井さんは生協の役割をどう考えますか?

朝比奈

実は私の両親も祖父母も生協を利用していたんですが、特に祖父母は徒歩圏内にスーパーもない地域で車もないくらしでしたので、本当に助かっていました。その様子を思い返すと、生協は単純に物を届けているのではなく、人と人のつながりをつくったり、コミュニティを継続させていくインフラのような役割を果たしているんじゃないかと思ったんです。その意味で、私たちは特定の誰かのためだけの生協になるのではなく、すべての生活者のための存在になりたいなと思います。朝比奈さんはどうお考えですか?

浅井

たとえば、昨今の米の問題にしても、流通過程に想いを馳せて調べ、学習して共有することで生産と消費をつなぐ部分の課題を解決できるのが生協だと思っています。そのためにも、生産者から消費者まで、フードチェーン全体がどのようになっているのか、一人ひとりが想像力と共感力を持って、視野に入れられる「生協人」であってほしいと思います。

食の課題解決の旗振り役として私たちは大きな役割を担っているんじゃないかと考えています。

朝比奈

食のインフラとして安全・安心を届けるために、地域の生協と支え合いながら最適な方法を考えて実行するのが私たちの役目ということですね。

浅井

そうですね。その際に、単純な最適解を出すのではなく、気持ちの面も含めて食の流通に関わることが大切だと思います。未来における持続可能性だけでなく、今現在の農家の人の気持ちも考えた上での最適を導き出すことが必要です。また、日本生協連として消費者の代表として食に関わる法令の改正要望を関係省庁に働きかけるなど、つながりの力や専門性を発揮していくことも可能です。それができるのが、多様なつながりや支え合いから成る私たちの強みじゃないかなと思っています。

朝比奈

対談テーマ③ 未来をつくるために必要なこと

想像力、共感力、
おもしろがる力、
そして、腹を割り合う力。

最後に、未来の可能性を現実に変えていくためには、今後どのような力を培っていけばいいのでしょうか。朝比奈さんはどう思いますか?

浅井

まずは、「想像力」と「共感力」が必要だと思いますね。仕事をしていく中で、経験のない分野の話になると現場からは「経験したことがないのに」と指摘されることがあるんですよね。すべての仕事を経験できればいいのですが、現実はそうはいきません。そこで必要になるのが、それぞれの現場に対する想像力です。現場というのは組合員と接することだけでなく、生産現場や製造現場、バイヤーや広報も同じく「現場」です。それぞれの現場に対して想像力を働かせて、共感力を持って会話をすることでお互いに通じあい、経験不足をカバーできる部分は多いと思います。

朝比奈

たしかに、生協の中にもさまざまな事業があって、すごく仕事の幅が広いですよね。それでも生協の理念に共感して集まっている職員が多いと思いますから、多様性の中にも共通点がありそうです。

浅井

まさにその多様性が生協らしさでもあり、それを「おもしろがる力」が次に必要なことだと思います。本来、自分と違う考えを持つ人と接することは面倒だと思うんです。でも、違う感性に触れることで自分だけでは思い浮かばなかったことや、考え方を知ることができます。これをおもしろがることが大切だと思います。

朝比奈

職員も組合員も多様な背景を持つからこそ、それをおもしろがって深堀していくことで理解を深め、よりつながっていけるということですね。

浅井

やはり、つないでいく、つながっていくということが私たちの大きな役割ですから。そのつながりを大切にするためにも重要なのが「腹を割り合う力」、つまり本音で相手と話し合える力だと思います。自分の意見を持つのはもちろんのこと、相手の話をよく聞いて共感し、腹を割って本音で向き合う。強制したり、ただ同調するのではなく、お互いの本心を認め合うことで本質的な話ができるのではないでしょうか。そうすることで、生協ならではの「つながりの力」が発揮されると思います。

朝比奈

さまざまな人とつながって、より生協らしい力を発揮していくことで、可能性を現実に変えていけるようになるんじゃないかなと思いました。

浅井

生協の良さ、そして協同組合の良さも、より多くの人に実感していただきたい。そのためにも、背骨となって支える私たち日本生協連がしっかりとつながりのプロとして意識を持って、これからも支え合うだけでなく、引っ張っていくことで生協を盛り上げていきたいですね。これから、がんばっていきましょう!

朝比奈

続いては「願いが紡ぐ生協史」です!
生協の資料室は、まるで歴史の保管庫。 そこで出会うのは、様々な時代を生きた人たちの「願い」でした。 くらしの中の声が紡ぐ新感覚の歴史ムービーです。 願いが紡ぐ生協史