アカネ色素についてのQ&A

2009年3月21日更新
2004年7月8日作成

●2004年に「アカネ色素」が既存添加物名簿から消除(しょうじょ)されたことについて

 2004年7月5日にアカネ色素を既存添加物名簿から「消除(しょうじょ)」するとの報道がされました。

 日本生協連では、この間の厚生労働省の措置と日本生協連が作成した「アカネ色素のQ&A」を紹介します。また、アカネ色素及びこれを含む食品の摂食について、ご注意ください。

 アカネ色素に関して、厚生労働省は、国立医薬品食品衛生研究所による「ラットを用いた発がん性試験」等の中間報告を受けた段階(2004年6月18日付)で、「食品安全委員会および薬事・食品衛生審議会の検討が終了するまで一時的に、営業者に『アカネ色素の製造・販売・輸入等の自粛、アカネ色素を使用した食品の製造・販売・輸入等の自粛を求める』、消費者に『アカネ色素を使用した食品の摂取を控えることを求める。』」旨の通知を出しました。その後、7月2日に開催された内閣府の食品安全委員会における食品健康影響評価、および7月5日に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会における審議を経て、アカネ色素は、「食品に使用してはならない」こととされ、既存添加物名簿から消除(しょうじょ)(Q3参照)されることになりました。また、同省は「一般消費者も、アカネ色素を含む食品を摂取しないようご注意下さい」と発表しました。

◎参考

厚生労働省:食品添加物「アカネ色素」を既存添加物名簿から消除することについて(Q&A含む)

●アカネ色素についてのQ&A

Q1
「アカネ色素」とは、どういうものですか? どんな食品に使われていたのですか?
A1
アカネ科の植物である「セイヨウアカネ(Rubia tinctorum L.)」の根から得られる色素です。畜肉加工品や清涼飲料水などに使用されていました。

 アカネ色素は、日本では「既存添加物名簿」に収載された(いわゆる天然の)添加物として、2004年に既存添加物名簿から消除されるまで、使用が認められていました。食品に赤色系の色を付けたり、色調を整えたりする目的で、一部のハム、ソーセージ類、かまぼこ、清涼飲料水などに使用されていたようですが、使用実態はさほど多くなかったようです。

Q2
既存添加物とは何ですか?
A2
食品添加物の指定制度実施後も「安全性上問題なかろう」として使用が認められた天然添加物です。

 わが国では、1995年の食品衛生法改正までは、天然の添加物に対しては特に規制がありませんでしたが、この改正以降、天然の添加物にも合成の添加物と同様な指定制度(各種の安全性データなどを添えて国に申請し、審議された上で指定を受けなければならない制度)が導入されました。しかし、それまで既に流通されてきた天然の添加については、厚生労働省は「安全性上問題なかろう」と判断して、それらを「既存添加物」と名付け、最終的に489品目が「既存添加物名簿」に収載されました。2009年3月現在、418品目が収載されています。

Q3
「消除」とはどういう意味ですか?
A3
Q2の「既存添加物名簿」から添加物の品目名が消えることを示しています。

 2003年に改正された食品衛生法において、既存添加物名簿にその名称が記載されている添加物であっても、「人の健康を損なうおそれがあると認められたもの」や「流通の実態が無いことが確認されたもの」については、所定の審議や手続きを経た上で、名簿からその名称が消される(したがって、その後使用できなくなる)ことになりました。この、「名簿から消す」ことを「消除」といいます。

Q4
天然系の色素は安全かと思っていました。日本生協連では「アカネ色素」の安全性について、どのように考えていましたか?
A4
天然だから安全とは考えていません。アカネ色素については注意が必要な食品添加物として考えていました。

 「天然=安全」というイメージを抱きがちかも知れませんが、日本生協連は、以前から「天然の添加物には安全性データが十分に揃っていないものが意外と多い」という認識を持っています。日本生協連では、1994年から主要な天然添加物の安全性評価を実施していますが、その評価に際しては「食経験」の有無や長さをひとつの指針(評価の目安)にしています。まずこの点でアカネ色素を抽出するセイヨウアカネは、昔から漢方として利用されてきた東洋アカネと異なり、「染料としての利用はあったが食経験は無かった」ことを確認し、要注意であると認識していました。

 「食経験」が無いならば、その点を補うだけの科学的な安全性データが示されていてほしいところですが、セイヨウアカネには強い変異原性や遺伝子毒性があるルペルトリン酸、アリザリン、ルシジンおよびこれらの配糖体が含まれることが知られています。こうした毒性が認められているにもかかわらず、発がん性試験がこれまで未実施で、JECFA (FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会)でも安全性が評価されておらず、アメリカやEUでは許可されていません。このような点をふまえて、日本生協連ではアカネ色素を「管理添加物の留意使用品目」(安全性上の問題があるので、「あえてその添加物を使用した方が消費者にとって明らかに利益となる」といった特別な理由がある場合を除き原則的に使用しないという区分)に位置付けてきました。当時の日本生協連コープ商品では、アカネ色素を使用したものはありません。

Q5
天然の添加物の安全性は、国ではどのように評価されているのですか?アカネ色素は、何故発がん性の試験が行われたのでしょうか?
A5
厚生労働省は既存添加物の安全性評価のために発がん性試験を実施しています。

 1995年当時、日本生協連は、「それまで流通されてきた天然の添加物(既存添加物)であっても一定の安全性試験が必要である」という認識に立ち、厚生労働省に対して安全性試験の実施を要求しました。そのような働きかけなどもあって、1996年以降、国内で既存添加物の安全性評価が進められてきたのですが、アカネ色素の発がん性試験は、その一環で実施されたものです。

 当時489品目あった既存添加物については、厚生労働省は、1996年時点で、以下のように分類しています。

(1) JECFA (FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会)で既に安全性が評価されているもの。
(2) アメリカやEUでも既に流通が認められているもの。
(3) 変異原性試験および少なくとも28日間以上の反復投与試験の資料が収集できているもの(内容については追って評価)。
(4) その由来(基原、製法、本質)や使い方などから考えて早急に安全性の検討を行う必要はないと考えられるもの。
(5) 上記以外の「早急に安全性評価が必要なもの」。

 この「早急に安全性評価が必要なもの」(1996年当時139品目)について、厚生労働省では、ひと通りの安全性試験(変異原性試験、少なくとも28日間以上の反復投与試験)を国立医薬品食品衛生研究所などに委託して、順次実施してきました。

 アカネ色素は、上記(3)に該当するものでしたが、収集された試験結果が評価された上で、それを踏まえて2001年にラットの90日間反復投与毒性試験、その後引き続き慢性毒性・発がん性試験が実施され、2004年の中間報告に至りました。

<この件のお問い合わせ先>

日本生協連安全政策推進室